2008年09月08日

ちーちゃんと絵本


僕は絵本

今日ちーちゃんの家にやってきたピカピカの絵本

ちーちゃんはお父さんから僕を受け取るとまん丸の目を輝かせて一生懸命僕を読んでくれた

僕はとても嬉しかったし、ちーちゃんも喜んでくれた

そんなちーちゃんの笑顔を見るのが僕は大好きで

ちーちゃんに読んでもらえる度にワクワクした

ちーちゃんは大切に僕を抱えていろんな場所に僕を連れて行ってくれた

青い空の下で読んでもらったり

大きな木の下で読んでもらったり

いつでもどこでも僕はちーちゃんと一緒だった




でも、ちーちゃんはだんだんと僕を読まなくなってしまった

いつした僕は暗い押入れに入れられたままになった

ちーちゃんの笑顔は毎日毎日見れなかった

いつも見ていた僕の大好きなちーちゃんの笑顔

僕は悲しくなった

たまに押入れが開いて、暗い場所に光が差し込む

でも決して僕はそこから出れない

暗い時間がいつまでもいつまでも続いた

もう何年経っただろうか?

僕は本当に長い間置かれていた押入れから出してもらえた

ちーちゃんだ

もうすっかり大人の女の人になってしまったけど間違えるわけがない

僕が大好きなちーちゃんだ

ちーちゃんはゆっくりと僕のページを捲って

小さい頃と同じようにゆっくりゆっくり一生懸命に僕を見てくれた

僕は嬉しかった

もうちーちゃんに読んでもらえないと思っていたから

ちーちゃんは僕を読み終えると僕を胸に抱きかかえて泣き崩れてしまった

なんでだろう?

ちーちゃんは僕を読んでくれた時はいつもニコニコ嬉しそうに笑ってくれたのに

僕は悲しかった

押入れの中に居る時よりも悲しかった

僕は絵本

ちーちゃんを慰めたり、笑わせたり出来ないんだ

ちーちゃんはまだ泣いている

そうだ

ちーちゃんのお父さんになんとかしてもらおう

僕をお店から買ってくれたちーちゃんのお父さん

ちーちゃんはちーちゃんのお父さんと一緒の時はいつも笑ってた

ちーちゃんはお父さんが大好きなんだ

でもいくら周りを探してもちーちゃんのお父さんの姿が見当たらない

部屋の入り口にはちーちゃんのお母さんが泣きそうな顔をして立っていた

ちーちゃんはまだ泣いている

僕は悲しい

僕はちーちゃんを笑顔に出来ない

僕は絵本続きを読む
posted by 姫野 at 23:46| 群馬 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | へっぽこノベル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年08月03日

妹×兄 最終話 

今年の1月からスタートしたこの小説だけど。
今日で終止符が打たれます。

やっとです。
長かった………

本当は3話で終わらせる予定だったのにね。
寒さに手が悴んで執筆していたのが暑さと戦いながらの執筆に変わり……

とりあえず読んでくれ。
俺が今書けるラブコメを書いたハズだ。



あらすじ

身体と精神がお互いが入れ代わってしまう体質のある双子の兄妹。
その妹は兄の横暴に悩まされながらも日常を過ごしていくが、現れた才女、秋野可憐との出会いによってそれは大きく変わって行った……

最後に彼女の選んだ道とは?



とか適当に書いておけば良いの?


バックナンバーが見たい方は用意しておいたのでどうぞ。

1話 「この野郎」

2話 「あ゛う・・・・」
 
3話 「ぬおぉーっ!!」

4話 「この阿呆〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!」

5話 「ほんっとにそれだけ?」

6話 「………仕方ない」

7話 「う、うん……」

8話 「ばっかみたい」




それでは夜月姫野が送る痛快ラブコメディー(誰がなんと言おうとラブコメ)最終章。

誤字と脱字の指摘など。
感想とか貰えると気力が上がります。


妹×兄 最終話をどうぞ………



チクチク タクタク

部屋の時計が回り、時間が回り、世界が廻る。
耳に聴こえるのは部屋の時計の秒針が時を刻む音。
さながらそれは、時間が一つの生き物として小さく小さく、心臓を脈動させる鼓動のようなものに感じられる。

手の平をそっと左の胸に当ててみる。
優しく、そして包むように…………

トクトク チクタク

鼓動が二つ。ここに響いている。
時の鼓動と命の鼓動。
二つの音がリズミカルに、ただひたすらに。

「おい、小夜……」

コンコン トントン

私の部屋の扉を叩く音。
その音は2つの音に混ざる3つ目の音なのか、それとも2つの音を壊す3つ目の音なのか。
どうでもいいな、そんなこと。おもむろに部屋の出口の方へ視線を向けた。

「小夜……」

お兄ちゃんの声が扉の向こう側から響く。だけと扉は開かない。
扉にはカギがかかってるんだもん。
この家の扉をカギ付きにしたお父さんとお母さんにちょっと感謝しながら、私は扉をただ見つめる。

あの扉の向こうに全部があるんだ………


妹×兄 

9×「絶対なんだからねーーーーーーっ!!」


「ヤッバイ……ちょっとこれ間に合うかなぁっ……」

朝運行の電車から慌ててホームに降り立ち、改札を一息に抜けて学校までの道のりを小走り駆け出した。
遅刻ギリギリの電車に揺られてジリジリと焦り始めた思考で、駅前の人の波をどうにか避けて進む。
灰色のスーツを着込んだ商社マンとか、そのタイトはどうなのよ?って感じのOLとか。
そんなワーカー達の波の中に埋もれないよう、足を前に出していく。
しかしその波のお中に学生服姿は一つも見かけられない。これは本当にヤバイようだ……
今まで無遅刻無欠席を誇っていたこの私が、遅刻するなど自分ルール的にはあってはならない。
あってはならないのだっ!!
ギラギラと目を殺気立たせ、学校に向かってひた走る。

「あれから」というもの、私の生活はメッキリと変わってしまった。
誰とも喋らず、誰とも関わらず、誰ともふれあわない。
一人ぼっちのロンリーウルフ。元々友達は多い方じゃなかったけどね。
女の友情関係ってのは色々と複雑で、正直に言えばドッと疲れる。
だから私は、本当に必要な友達しか作っていなかったわけだけど、
今はその本当に必要な友達すら……

「あーヤメヤメ」

しんみりするのは止めよう。
いくらここで私がブルーになったとしても、何かがそれで変わるわけじゃ無いんだから。


朝は部屋に尋ねてくるお兄ちゃんを無視して、お兄ちゃんを先に行かせる。
同じ電車になんか乗れるわけないから、私は必然的にお兄ちゃんが乗る電車より遅い電車に乗ることになる。
学校でも一人になれる場所に逃げて、隠れて。家に帰れば部屋に閉じこもる。
すっかりそれが、私の今の生活だ。

あの日……秋野さんがお兄ちゃんに告白したあの日。私は彼女にとても酷いことをした。
お兄ちゃんと身体が変わったのをチャンスにして、彼女の気持ちを踏みにじったんだ。
別に踏みにじりたくて踏みにじったわけじゃない。秋野さんが嫌いなわけでもない。

ただ、大好きだったんだ………
お兄ちゃんが、城戸朝樹が。

『朝樹君が好き……大好きなんです……』

彼女のその告白の言葉で、私の中のスイッチはカチリと押された。
ずっと心の中でモヤモヤしていた気持ちが、
業務用の大型掃除機にでも吸引されたかのように一気にモヤモヤは消えて無くなった。
モヤモヤに隠れて見えなかった気持ちが………
お兄ちゃんが好きって言う禁断の感情が……ね。

嫌だった。このまま秋野さんにお兄ちゃんを取られてしまうのが。
でも、今更気付いたってどうにかなるわけじゃなくて、私は彼女の気持ちを壊した。
私のやってることは間違っていると思う。だけどそんな理屈で止まる訳にはいかなかった。

…………………………



「ごめん、俺は君と付き合えない……」
「っ………」

胸の中にあった彼女の身体が離れ、少し後ろに後ずさる。
口から出た言葉の重みを感じずにはいられなかった。
しかし、彼女は潤んだ瞳をこちらに向かってシッカリと向ける。
視線で私の目を捕まえる。そこから視線を逸らすことは出来ず、数秒……
間隔を置いて秋野さんは言葉をその口から紐解いた。

「上京……するからですか?」
「え………」
「小夜さんから聞いたんです。朝樹君は卒業したら東京に行くって。
だから私とお付き合い出来ないですか!?だったら……だったら私……」

そう、彼女もそう簡単には引き下がるわけないか……
自分の気持ちを押し通す糸口を必死に攻め立てる。
瞳から湧き出てきそうな涙を堪え、溜め……しかし瞳は真っ直ぐとこちらを射抜いて。
だけど、この身体の中身が私である以上、秋野さんの発言の全ては意味が無い。

「私も付いてきますから……だから……」
「ごめん」
「ぅ………」

私はお兄ちゃんを彼女に取られたくない。ううん、誰にだって取られたくないんだ。
だからゴメンナサイ、秋野さん。
あなたの気持ちは物凄く解かるけど、解かるからこそ私は………

ダッ

彼女は最後に私の方を微かに見た後に、逃げるようにその場を去って行く。
私は物凄い罪悪感を感じた。そうだ、他人の恋愛を一方的に踏みにじったのだから。
だけどホッとした気持ちでもいる。そしてそんな自分にまた、嫌気が差した。

「小夜っ」

そこへ息を切らした声で、私の声が聴こえてきた。お兄ちゃんだ。
ぜはぜはと肩で息をしながら、それでもゆっくり確実にこちらに向かってくる。

「小夜っ……秋野は?」
「帰ったよ………」
「帰ったって、何で?」
「………………」

ガシリとお兄ちゃんが私の肩を両手で掴んでくる。
身体はお兄ちゃんの方が大きいからすこし背伸びをしながらではあるけれど、
十分威圧的に感じられた。肩に乗った両手が何故か痛い。
力もそれほど加えられているわけじゃないのに……

「小夜、お前いったい何を言っ………」
「うるさいっ!!」

大きい身体を十分に使い私の身体のお兄ちゃんを引き剥がす。
今のお兄ちゃんが秋野さんのことしか考えてないんじゃないかと思うと、後は身体が勝手に動いてしまった。

「小夜……」
「っ………」



…………………………

結局私もその場から逃げだして、それから誰とも話していない。
人の恋を蹴り飛ばしておいて、私はそのまま逃げてばかり。
どうやったら全部元に戻るんだろうか?いや、元に戻ることが許されるわけがない。
人の恋路を邪魔するやつは………か。
私は一人ぼっちで、遠くに行くお兄ちゃんをただ想うだけしかできない……のかな?

キーンコーンカーンコーン

「ヤッバ〜っ!うお〜〜〜〜〜〜〜っ!!」

いつの間にか学校の方角からチャイムの音色がっ!だけど先生が点呼を取るまでに教室に入れば問題ないっ。
利き足である右足で行きよい良く地面を蹴り放ち全速力。
私のクラスの担任は教室が来るのが少しばかり遅いので気合でなんとかしてみせる。
否、なんとかする!この攻防に私の尊厳がかかってるんだっ!! 



「あぁ…………」

遅刻しちゃいました。どうしようもなく遅刻しちゃいました………

猛ダッシュの終焉に教室の前で担任と鉢合わせしてしまって、いっそのことここでぶちのめしてやろうかとも思ったけど、
そんなことしたら後が大変なので先生よりも早く教室に入って私の勝ちっ!
っと思いたかったんだけど………

「城戸……お前遅刻だぞ……」
「やっぱりダメですか?」
「ダメです」
「うっ………」

ゴシゴシ キュッキュ

「ふぁ〜………」

それが今朝の奮闘の結末。
我が学び舎であるこの学校は、遅刻した生徒は放課後に校内清掃というペナルティが課せられている。
別に全部掃除しろってわけじゃなくて、その時その時の教育者の指導による。
もちろん日々の放課後清掃もあるわけで、私のような遅刻者のする清掃はもうちょっと突っ込んだ内容になる。

今回先生に通達されたクリーニングミッションの舞台は科学室。
色々な教材に溢れたこの教室が私の戦場。
今はこうして雑巾を塗らしては、普段は汚れを取らない窓を磨き上げている真っ最中であります。
鼻に匂うのは普通の教室とは違うもので、嫌なものじゃないけどどことなく落ち着かない。
夕の日に焼ける黄昏の教室。日没はもうすぐだ。

「あれ?城戸………何やってるんだお前?」

ガチャリとドアを開け放ち、科学準備室の中から若い女の先生が出てきた。
すこし気だるそうな感じでふらふらとこっちにやってくる彼女は科学担当の女教師。
通称「いっち〜」と言う原生生物。
このニックネームは自分で付けたと豪語し、「ー」ではなく「〜」なのがポイントなのよ!と力説されたこともある。
少し頼りない感じだけど、男女問わずに生徒に愛される愛嬌のある先生だ。

「どしたの?」

ふぁ……と大きく特大の欠伸。絶対にこの人準備室で寝てたな………
まぶたをゴシゴシと手の甲で擦りながら進む頼りない足つきは、今にも倒れてしまいそうだ。

「今朝遅刻しちゃって………それでこの教室の清掃をペナルティにされたんです」
「ほーぉ………城戸が遅刻ね〜………むにゃむにゃ。コーヒーでも飲む?」
「は?」
「いや、コーヒー。だって城戸がこの教室掃除してくれてんだろ〜。
ここは私の庭みたいなもんだから、お茶くらいご馳走してやらんとね〜」

こっちの返答も聞かずにいっち〜は、「せんせ〜用」と赤マジックでデカデカと書かれたコーヒーメーカーを取り出す。
続けて馴れた手つきで、コーヒー豆とミルを取り出しテーブルに置いていく。

「んじゃ作ってるから掃除よろしくね〜。あ、埃とかこっちに飛ばすんじゃねーぞ」

ゴリゴリと上機嫌で豆を磨り潰しているいっち〜を眺めながら、教室の掃除を開始。
と言っても、もうさっきの窓拭きで殆ど終わっているから簡単なゴミ拾いくらいなもんだ。

「挽きたて挽きたておっ豆さ〜ん♪ミルクはあるけど砂糖はね〜ぞコノヤロ〜♪」

いっち〜の独創的な歌のリズムに合わせて、コーヒー豆の良い香りが嗅覚をドカドカ刺激してくる。
先ほどまで匂っていた薬品類の匂いをも打ち消し、気持ちが少しだけスッキリとクリアになっていく。
珍妙な歌詞をオールタイムで聴かされながらも、そそくさと掃除を完了して私は大きく身体を伸ばした。

「城戸〜、お前砂糖いくつだ〜?」
「砂糖あるのかよっ?!」

ぬははと笑いながら3個、4個とシュガーをビーカーに投入していく。
きっとあれが私の分じゃないことだけは信じたい。

「先生、ビーカーで飲むんですか?」
「おう、因みにこのビーカーはコーヒー専用だから安心してくれ」
「それ……実験器具を買うためのお金で買ったビーカーじゃ……」
「1個や2個くらい私物にしたってバチは当たらないっさ〜っと、ホレ」

ズズイと黒い液体で一杯になったビーカーを手渡される。さっきドカドカと大量に砂糖が入れられたヤツだ………
これで太ってくれたらどうしてくれるんだ!というこっちの心境は少しも察してない様子。
そして今、目の前ではやっち〜が自分の分のコーヒーをビーカーに並々と注いでる。
その隣りにスタンバイされた砂糖が7個であるのは見なかったことにしよう。

その後、色々と喋りだした先生は準備室から茶菓子まで持ってきてしまって、
私は唖然としながらも、いっち〜との放課後を過ごす事になった。
舐めただけでも甘いコーヒーをチビチビとすすりながら豆乳クッキーをご馳走に。
今では、喋り相手の居ない私にとって楽しい時間になってくれた。


「しっかし………」

帰宅の電車から下車する駅に到着、既に暗転した空を見上げながら一人溜め息。
元来お喋りが好きな自分にとっては、こういうことは割りとあるんだけどさ。
反省、反省っと自分に言い聞かせながら我が家に向かう。
家にはお兄ちゃんが居るけど、それを上手く避けて自分の部屋まで辿りつくのはもう馴れた。
さっさと我が家に帰りましょう。これでも受験生なのだから。やることは山ほどあるんだ。

そう思って元気良く駆け出した。走って走って、嫌な事も忘れよう。
寂しく私を照らす月の光も、不安げに私を照らす街灯も、力いっぱい振り切って。
嫌なことは忘れよう。

ビリっ!!

「あぁぁぁっ!!」

は?何だ?身体全身を巡る痛みを感じ、崩れるように力が抜けていく。
閉じる意識の中に見た綺麗な月が、涙を零すように切なそうで綺麗だった。

………

「………ぅ……ん」
「おい、この子起きたみたいだよ」
「そうか………」

なんだ?私……意識がふらふらする。
ココはどこだろう?建設途中で廃棄された建物か何かだろうか?むき出しのコンクリートの床や壁が目立つ。
ハッキリとしない頭の中に、コツコツと革靴が硬いコンクリートの床を叩きながら歩く音が響いてくる。
霞む目を凝らして人が近づいてくるのを確認。自分より長身の体格の良い……

「久しぶりだな。お嬢さん」
「へ?………」
「俺のこと覚えてないかな?」

誰だろうこの人?
全く見覚えが無いただのオジサンだ。名前のただのオッサンAに違いない。もしくは太郎。
私はオジサンに知り合いなんかいないつもりだし、一体誰なんだろうか?
そもそも………

「寂しいな、君がこの前蹴り倒しちゃった人だよ」
「なっ……っ!!」

あの時の痴漢っ?!
慌てて私は距離を取るために立ち上がろうと全身に力を入れる。

「きゃっ」

しかし、ギチリと腕に巻かれたロープが柔肌に食い込む。私の行動は拒まれた。
ちょっ………えーっ。なんなのこの状況?!
全身が強張り、身体が震えるのが分かった。

「……ちぃっ」

せめて心だけはと、瞳にありったけの強気を含めて目の前の痴漢を睨みつけた。

「おぅ………相変わらず怖いお嬢さんだ」
「アンタ、いったい何のつもりでこんなっ……」
「ちょっと、落ち着いて落ち着いて」

長身の男とは別の、小柄でキャップを被った男が近寄ってきた。
少しくたくたになったパーカーのポケットから、スルっと突っ込んだままだった手を出してくる。
その動作に身構えるが、男の取り出して来た手のひらには……

「………何のつもり?」
「あ……えーっと、飴とか嫌いだった?」
「食べないでしょうっ、普通っ。こんな状況でっ!」

キャップの男はしぶしぶと飴玉をポケットにしまう。
ちょっとしょげているようで、ブツブツと何か漏らしながら後ろに下がっていった。
軟弱過ぎる……

「あー……なんだ、あいつメンタル弱いからちょっと優しくしてくれな」
「知るかっ!それより縄っ!解けっ!!」
「そいつは出来ない相談だ。お嬢さんには、息を吸う権利と喋る権利、それとあいつから飴を貰って舐める権利しか無い」
「だから飴なんか要らないってばっ!」

長身の男は難しそうな顔をする。やれやれといった感じの大げさなジェスチャーを交えながら後退。
キャップの男の肩にポンと手を置き慰めているようだ。
本当に何なんだこいつら?

「さて、冗談はこれくらいにしますか」
「……っ」
「この前はやられたが今回は………」
「ちょっと………アンタ何する気よっ」
「だって……ねー?もう分かるでしょ、そのくらい」

ニヤリと男の表情が歪む。後ろの男はしょげたままだ。
とにかく私がピンチなのは変わりない……。ジリジリと男がこちらに戻ってくる。
ヤバイ……嫌だ……

「ほーら、助けてください、ごめんなさいって言ってごらんよ。もしかしたら許しちゃうかもよ?」
「う………ぅ……」
「ほらほら」
「っ!!嫌ぁっ!!」

右手を男に掴まれた。
気持ち悪い。嫌だ。鬱陶しい。嫌だ。寄るなっ!!さわるなっ!!
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だっ!

「……すけて」
「おぉ?」
「助けてよぉ………助けてよお兄ちゃーーーーーーーーーーーんっ!」





「了解だっぜーーーーーーーーーーっ!」

「え……?」

ゴッ!

「あがぁぁぁっ!!」

目の前の長身の男が横に吹き飛ぶ。
消えた男の向こう側に………本当はずっと一緒に居たい人が立っていた。
走って来たのだろう、ぜぇぜぇと息を切らしながらも、私を見つめる瞳は優しかった。

「お兄ちゃんっ?!どうして………」
「どうしても何も………俺がお前のピンチに来ない訳がない」
「あ………あ………」

クイっと下を向いて泣きそうなのを必死に堪える。そんな顔を見られるなんて恥かし過ぎるもん。
お兄ちゃんが私を助けに来てくれた………

「いたたたたた、この前もやられたのは頭だったんだから勘弁してほしいもんだな」

長身がすっくと立ち上がる。どうやら今日は頑丈なようです。
首をゴキゴキと鳴らし、ゆらりと距離を積める。

「うるせーぞオッサン。俺の妹に手ぇ出しやがって」
「あんまり目上の人間を困らせるんじゃないよっ」
「ざけんなっ!」

男がドスドスと迫る。握られた右の拳を突き出し、お兄ちゃんに襲い掛かる。

「あぁっ!!」

ズシッ

「何っ?!」

体重を乗せたストレートを、お兄ちゃんは右手の平で受け止めた。
男は信じれないといった様子で顔を引きつらせている。

「鍛え方が違うっ!!おらぁっ!!」
「ごほっ!!」

掴んだ拳を引っ張り、男の身体を引き付けて腹部へ膝蹴りを放つ。
ゴロンと堪らずに男は膝を曲げ床に転がる。

「おいオッサン、まさかこれで終りだと思ってんじゃないだろうな?」
「はぁ……はぁ………ははは、もちろんだ……クソガキ」

ニヤニヤと笑い男はゆっくりと立ち上がった。
ポンポンと服に着いた汚れを払い落とし前を向く。

「おー、パーティー会場はここですよね〜?これは前座か何か?」

今まで聞いたことの無い声が響いた。
キャップの男はまだ後ろの方でしょげているし、先ほどのちゃらけたような声とは違ったはず。
声のした方を見ると10人の男がぞろぞろと気だるそうにこちらに歩いてくる。

「あれ?太郎さんもしかしてやられてる?そろそろ歳なんだから身体は大事にした方が良いよ?」
「ふん、俺はまだまだ大丈夫だよ」

長身の男と先ほど現れた男が会話している。こいつら仲間なんだ…………
むしろオッサンの名前が本当に太郎だったことに2割くらい驚いた。
それにしても…………

「多勢に無勢………形成は逆転だぞクソガキ」
「てめぇ………」
「こっちの世界にはこっちの世界のネットワークと言うものがあるんだよ」
「お、お兄ちゃん………」

ダメだ………こっちはお兄ちゃん一人に対してあっちは10人以上。仮に私が動けたとしても囲んで押さえ込まれるだけ。
こんなことにお兄ちゃんまで巻き込んでしまった。畜生がっ!。

「小夜」
「え………何?お兄ちゃん」
「帰ったらいっぱい喋ろうな。ずっと今まで話せなかった分、
朝までかかったって喋りつくせないかも知れない」

背中が大きかった……
お兄ちゃんの顔は後ろからじゃ見えないけれど、その表情は笑ってるんだって私にはちゃんと分かった。
だから私は……

「うんっ」

嬉しくてどうしようもなかった………

ザザッ!

取り囲むように、3人の男が近寄る。
お兄ちゃんは構え隙を見せないように、そして相手の動きを凝視する。

「へ〜、兄妹なのか。妹を守る兄ですか。泣かせるね」
「……………」
「だけどこの人数じゃね〜?お兄ちゃんが12人居れば良かったね、妹ちゃん」
「ば〜か、お前それ逆だよ」
「そっかそっか、うはは……あぁぁぁぁうっ」

ヒュオッ

さっきまで下品な笑い声を上げていた男が膝を曲げて突然に沈んだ。
一陣の風と共に………

「12人分は無理だが、5人分くらいにはなるぞ。私は………」

目の前に立っていたのは良く見知った友達だった。
また私を助けてくれた、助けてくれるんだ………
彼女………鯉口歌乃は、私に向かってサムズアップをしてから男達の方を向いた。

「歌乃ちゃん強かったんだね。小夜から少しは聞いてたけど実際に見てビックリ」
「あんまり披露したいもんでもないからさ。それよりどうして朝樹君がここに?」
「双子のお兄ちゃんは妹のピンチが分かるのです」
「だったら中学の時、トイレで小夜が殴られた時はどうして来なかったかな?」
「女子トイレには入れないでしょーが、流石に」
「そりゃそうだね。こんなこと言うのもなんだけど。あの事件があったから小夜と知り合えた訳だし」
「歌乃ちゃんこそどうしてここに?」
「その話しは後……ほらっ!」

小夜は殴りかかって来た男をステップで素早く避け、後ろに廻りこみ……

「はぁっ!」
「がっはぁっ!」

腰を深く落とし右の肘を脊椎のあたりに無慈悲に叩きつける。
それに続けとお兄ちゃんも近寄ってきた男の最期の1人を蹴り倒す。
残りの男は9人だ。内1人は今だにしょげている。

「あ、私も戦う〜っ。縄解いてよ〜」
「無理、小夜は分からないと思うけど、その縛り方すっごく複雑だから解いてる時間無い」
「う゛………」

何故兄上はそのような事を一目見ただけで分かるのですか……
流石にそういう知識は行き過ぎじゃないかと不安にもなる。

「小娘、さっき手前は5人分だとか言ったが、こっちは9人でそっちは6人分だ。
残り3人の差はどう埋めるっ!?」

バリィっ!!

「スタンガンっ!?妙なもん持ち出してっ」

小夜はスタンガンを振りかざして来た長身の男をひらりと避ける。
あれに当たったら小夜でもヤバイと思う。私が捕まった時に味わった激痛もあのスタンガンのものだろう。

「さぁ答えてもらおうかっ!!」

逃がすまいと男達は一斉に押しかかってくる。こうゾロゾロとこられては必然的に逃げ場が無くなるのだ。
チカチカとスタンガンが光り、歌乃に迫った。

「待ちなさいっ!!」

ズザザザーっ!!

建物の中にあまりにも不釣合いな黒塗りの高級車が数台滑り込んできた。
バタンバタンと連続した音と共に黒服の体つきの良い男達が出てくる。

「小夜ち〜〜〜〜んっ!大丈夫だったぁぁぁぁ?!」
「八重………それに……」

少し老けた叔父さんが開いたドアからは、綺麗な銀色の髪をなびかせて、私が泣かせてしまったお嬢様が出てきた。

「………そうです、周りの下賎な族を取り押さえてくださいませ。
縛られてる方は私の親友です。最優先で守りなさい」

いつもの天然な感じの彼女とは違い、切れ味の鋭い刃物のようで黒服の人達に指示を出す。
その黒服の人達がこちらの方へと向かっていく。
その様子を見てから、彼女は私の瞳を射抜いて、いつもの柔らかい表情でニッコリと微笑んだ。

「秋野………さん」

もう堪え切れなかった。自然と瞳から涙が零れてくる。
お兄ちゃんが助けに来てくれた。歌乃が助けに来てくれた。
そして私が傷つけしまった秋野さんが来てくれて………

親友だって、確かにそう言ってくれた。
あの時お兄ちゃんの中にいたのが私だったなんて、秋野さんはもちろん知らないだろうけど。
親友だって言ってくれたことがとても嬉しかった。
まだ出会ってから数ヶ月なのに………過大評価だよ、秋野さん……

ぽろぽろと零れる涙は止まらない。
視界は歪み、目の前が見えないくらいだ。

「オジサン、さっきの答えっ!残りの差はこの黒服の人達だよっ!」
「ぐぬぬぬ、3人ってレベルじゃねーぞっ!!」
「知ったことかっ!せぁっ!!」
「うっ……」

カランと蹴り弾かれた手首からスタンガンが床に転がる。
動揺した男の隙を、歌乃は見逃さなかった。

「これで終りだよっ!」

ザッ!

天に向けて突き上げられた右足のつま先が頂点に達した時、半弧描いて男の頭に向かって叩きつけられた。
ねりちゃぎ。かかと落としが綺麗に入ったのだ。

「ぐえっ………また頭か………よ」

今度こそ男はバタリと仰向けに倒れ沈黙。
他の男達も鍛え抜かれた黒服さん達に取り押さえられていた。

「うお〜〜〜〜〜〜〜〜っ、小夜ちん平気だったぁ?大丈夫だったぁ?」
「きゃぁっ」

ガシっとこっちに向かって飛び込んできた八重が、私の身体を抱きしめる。
ちょっと苦しいけど、久しぶりに感じる彼女の温かみが嬉しい。
それにしても何で皆がここに居るんだろう?助けられておいてなんだけど、とにかく不思議だった。
私は今まで極力皆を避けていたのだからそう思わない方がおかしいでしょ?

「八重………どうしてここに?」
「あーのねー、最近小夜ちんが話してくれないからアタシが我慢の限界きちゃったんだよね……」
「うん………それはその………ごめん」
「んでね、今日小夜ちん帰るの遅かったっしょ?こっそり後着けてお話しようと思ったら……」

あー、私が捕まったとこを見られてたわけだ……

「流石に私一人じゃどうにも出来ないから尾行だけ。
歌乃ちんと秋野ちんに連絡してから、あっしは何も出来無そうなので秋野ちんを向かえに行ってましたです。
薄情なアタシを許せーーっ!あうあうっ!!いひゃいっ!!」
「ほーらほーらっ、今日も伸びるなこのほっぺは〜。とりあえず落ち着けよお前ぇ」

歌乃が私から八重を引き剥がして、いつものようにぷにぷにと頬で遊び始めた。
それが懐かしくて、八重には悪いかもしれないけどまた嬉しくなる。

「ほどほどにしといてよ歌乃」
「あー、そうだな。八重のおかげで小夜を助けられたわけだし」
「あれ?もしかしてアタシがMVP?」
「それはあっちの人」

歌乃が指差した方向には、黒服さん達に指示を出す秋野さんの姿があった。
確かに彼女の家の黒服の人達が最終的には全てを解決してくれたわけだ。

「皆さん大丈夫ですか?どこか怪我とかあれば言ってくださいね。直ぐに医者を呼びますから」

一仕事終えたご令嬢がこちらの方へやって来た。
そして彼女は真っ直ぐに私を見つめると、おもむろに抱き付いて泣いて………いる。

「良かったぁ、無事でいてくれて………八重さんからご連絡を頂いた時は私……本当に心配したんですから」
「あ、秋野さん………ありがとう……ホント、ごめん」
「小夜さんが誤る事なんて無いんですよ?」
「うん……でもごめん」
「変な小夜さん。ふふっ」
「あっ、うぅ……」

一層ぎゅっと強く抱きしめられる。痛くは無いけどちょっとは苦しいかも……
でも、今は彼女の気持ちを受け入れたい。いや、私のそっちの気は無いんですけど………親友なんだから。
彼女は……秋野可憐は………

「おーい、いつまで妹を縛られたままにしておくつもりなんだ君達は……」
「朝樹君………」
「サンキューな、秋野。助かったわ、俺も俺の妹も」
「ええ」
「う〜ん、アタシではこの縄解けないよ〜。難解なパズルみたいだ〜……
はっ!?まさかこれが千年パズ……」
「お前は黙れ」

そういうコントは後にしてくれ〜。
私もさっさとフリーダムになりたくて、さっきからウズウズしてるんじゃ〜。

「ほら、小夜。解いてやるから大人しくしとけ」
「うん……おっ、うえぇっ!!」

ちょっ、痛ぇっ!
もう少し丁寧に扱えよっ!

「やっぱりこれ複雑だよな〜。俺だってこんなに綺麗には………」
「ちょっと、お兄ちゃん何ブツブツ気持ち悪いこと言ってんのよ」
「敵ながら関心せざるをえないな」
「いいから早くほどいてよっ」
「あいあい、これをこーして……こっちをこうやって………よしっ!ほどけないっ!」
「よしじゃないっ!!」
「あぶばぁぁぁっ!!」

自由になっている足で思いっきり蹴り飛ばしやった。
あはは、なんかこうやってお兄ちゃんをぶっ飛ばすのも久しいや。

「家のものからナイフを頂いてきました。これ使ってください」
「おぉ、ナイス秋野。それじゃあ、危ないからマジで動くなよ小夜」
「ううう………」
「しかし切るのも惜しいくらいの出来だ………」
「ぐぁぁぁぁっ!!早くしろぉぉぉ!!」
「小夜ちんっ、ドードーっ」

ブチリッと音を立てて縄切れる。
ようやく開放された両腕は赤みがかっていて、少しだけヒリヒリと痛んだ。まったく酷い目にあったわ。
私に復習しようとした長身の男は、身動きが取れないように完全拘束されていた。
秋野さんの家の力ってスゴイんだなーとか、改めて感じる。
それにしても周囲を改めて見回して一つ気になったんだけど……

「ところで誰も警察とかに連絡してないの?」
「そんなものに妹を任せられん」
「あ〜、そう言えばそっちにも連絡するべきだったかな〜」
「私の方が強いし速い」
「家の人間を使った方が確実なので……うっかり」

なんちゅー連中だ。
これだけの人数が揃って誰一人国家権力に頼らないとは………
我が身が無事だったのに感謝感謝。

「この方々の身柄は、私の家の方で責任を持って警察の方へと渡しますわ。
もう夜ですので、私が車で皆さんを送ります」
「そうだな……私も久しぶりに暴れたからちょっと疲れたよ」

少しの間を置いて、皆の視線が私へと向けられた。
う………何を喋れば良いのだろう?

「おかえり」
「…………」
「はぁ、おーかーえーり」
「おかえりぃっ」
「おかえりなさい」

はは、あはは。まったく、まったく…………

「うん………ただいま」

帰宅してからシャワーを浴びて、食事を作り……なつかしい私の生活だ。
久しぶりに食べた私の料理を、お兄ちゃんも喜んでくれた。

そして今は、二人っきりでお兄ちゃんの部屋に居る。
話す事と言えば………あの日のことだろう。
ちょっと落ち着いた兄の表情が、それを匂わせている。

きっとお兄ちゃんは秋野さんが好きなんだと思う。
あの時の間違いを正し、やり直したいんだと……
やっぱりそれは悔しいけれど、認めなくちゃいけないよね。
私も彼女のように強く……ならなきゃ。
笑って二人を祝福出来るような強い女にならなきゃダメだ……

「あ……」
「う……」

唐突に四肢が強張り、鼓動が加速度的に跳ね上がる。
そして次には視界がおぼろげに、ゆっくりと目の前の兄は「私」に変わっていく。

「目の前で入れ代わったのは初めてだな……」
「そう……だね」

それでもこの異常な入れ代わりのギミックは理解出来ない。
きっとこれから何百、何千回と目の前で身体が交換されたとしても、その謎はずっと解けないだろう。
そもそも、来年の春になったらお兄ちゃんは東京に行ってしまって、私のそばには居ないわけで……
だからこの入れ代わりがとても貴重なものに感じた。

「おいっ……小夜?!」

そう思ったら自然に身体が前に出ていた。
『私』の身体の中に入っているお兄ちゃんの肩を両手でぐっと掴む。
少し力を入れ過ぎたのか、『私』の表情が僅かに歪んだ気がした。

「何……してんだお前っ」

顔を突き出し『私』の瞳を覗き込む。その瞳の奥に居るお兄ちゃんを見つめて……
もうこれでわがままは言わない。お兄ちゃんを諦める。だから、だから最後に……

『私』のファーストキスを『城戸朝樹』で奪う。

身体が違ったって構わない。私は朝樹の唇が欲しい。
秋野さんの朝樹になる前に、一瞬だけでもいいから私の朝樹にする。

「バカっ………やめっ……」

こんな目の前に大好きな人がいる。ドキドキがさっきから止まらない。

「ん………」

強引に唇を………頭の中は真っ白だ。

そっと瞼を開くと、目の前にいたはずの『私』がいなくてお兄ちゃんがいた。
まさかと思って自分の唇に指を運んで触れてみる。
唇は……濡れてはいなくて。ペトリとリップクリームが指先に付いただけだった……
その全てを理解した瞬間、こんな事をした自分に後悔した。

そんな馬鹿な………今まで一度だって、1分も経たずに入れ代わりが元に戻ることなんか無かった。あまりにも早すぎる……
なんだよ………なんだよ………
願いは叶わず、結局私は何一つ得られないまま、お兄ちゃんを無くすのか……
きっとお兄ちゃんは私のことを気持ち悪いと思っているだろう。私は兄妹を愛してしまったんだから。
それを知って引くのが普通だと思う。
『私』が掴んだ私の肩は、やっぱりちょっと痛かった……

「あのね……えっと、今のは………」
「………」

せめて、せめて少しでもフォローしないと……
あーっもう、焦って思考が上手く回ってくれない。とにかく口から何かを吐き出すように息をつく。

「ほらっ、もし私の身体に居るときに野郎に迫られたと場合の対処の方ほ……んぐっ!」

は、はぁっ?! 何……何それ……っ?!
いきなり口の中が熱くなった。知らない感触で舌を舐め回されて、歯茎の裏側を擦り付けられる。
それは……誰のでもないお兄ちゃんの舌だと理解するのに、私は手間取ってしまった。

「ぷはぁっ!!」

いきなりの展開で思わず結び付いた唇を離す。その後、ちょっと勿体無いことをしたかもと思う。

「はぁ……はぁ……お兄ちゃん?」

いつも私の前ではへらへらとしている兄が、物凄く真剣な眼差しで私を見つめていた。

「俺の中に好きって気持ちを置いていくなよな……」
「え………え……?」
「うーそっ。本当はずっと前から小夜のこと好きだった。
こんな気持ちはお前には迷惑だと思ってたんだけど………」
「う、うん……」
「だから遠くに離れて、お前を想わないようにしたかった」
「………」
「小夜が俺のことを好きでいてくれるなら……俺の気持ちもぶつけても良いかなって……」
「あ………あ………ぅ」

ちょっと前にあれだけ泣いたのに、またたくさんの雫が溢れてくる。
今までずっと叶わないと思っていた想いが、お兄ちゃんの中にもあっただなんて……
信じられないくらい嬉しくて……
あーあ、こんな顔をお兄ちゃんに見られたくないのにな。
溢れる涙で良く判らないけど、きっと私を見つめてるだろうな。
お兄ちゃんは最初から私を選んでくれていたんだ……

「お兄ちゃんはそれで良いの?」
「あぁ」
「きっと辛いよ?」
「全然平気」
「結婚だって出来ないよ?きっとまともに子供だって作れないよ?」
「小夜以外何も要らないよ。ずっとそばに居てくれればそれで十分。って言うか俺には勿体無いくらい」
「バカ……バカだよお兄ちゃん………」
「おぅ、バカだよ………お前もだけどな」
「うん………私もバカだ……」

二人で一緒にバカみたいに笑った。だってバカなんだからバカっぽく笑わなきゃ。
校内トップの優等生は、実はどうしようもないバカで、その妹もバカだった。
それだけのこと――――
それでも楽しくって……嬉しくって……気持ちが良かった。
こんな気分になれるんだったら、もっと早くバカになれば良かったのに。

「ねぇお兄ちゃん……」
「何だ?」
「私のこと好き?」
「あぁ、大好きだよ」
「あはは、私もね……大好きだよ」

さっきと変わって、ゆっくりとお兄ちゃんの唇が近づいてくる。
私はそっとまぶたを閉じて、いけないキスを受け入れる。

「ねぇ、もっとして」
「我がままなヤツだな……」
「えへへ……っ」

それからたくさんの口付けを交わして、お兄ちゃんの大好きをいっぱい貰った。
代わりに私は、私の大好きをいっぱいいっぱいお兄ちゃんにあげた。
ちょっと……いやいや、すっごく恥ずかしかったけど……
私がして欲しい事も、お兄ちゃんはちゃんと最後までしてくれた……



「小夜ちん卵焼きちょうだ〜いっ」
「はい、どーぞ」
「あんまり食い過ぎると太るぞ、八重」
「あぐあぐ……だって久しぶりの小夜ちんのおかずなんだもーーー、んぐんぐ」

久しぶりとかなんとか言いながらあの日から1週間ぶっ続けで食ってるくせに……
八重の言う久しぶりはどこまで続くんだろうか?

「それにしても、もう少しゆっくりと味わって差し上げませんと。はい、八重さんお茶ですよ」

令嬢の気の利いた一杯が八重に渡される。そのカップからはいつものながら美味しそに香る紅茶の匂い。
これでスーパーの特売品だというのが今だに信じられない。しかもメチャクチャ美味いし……

しっかし、本当にもう少し味わって食べてくれても良いんじゃないか?
まぁ、別に美味しそうに食べてもらえる分には構わないんだけどさ。

「小夜ちんお代わりっ!!」
「ねーよ、カリモフしてろよっ」
「また虐待ですよ………ぷんぷんっ、叱るだけじゃ子供は伸びないんだぞっ」

人から施しを受けておいて、何だこの態度は……
私だってこんな手のかかりそうな子供は欲しくないぞ。可愛いとは思うけど。

結局、私が皆を避けていた事の理由は、とても言えるものじゃなかったので口を濁し続けた。
最終的には生理でピリピリしていたところに、幸せそうな秋野さんが来て思わず八つ当たり。
その後収集が付かなくなってしまったお馬鹿な小夜ちん。……という事にされた。
そんな理由を考えたのはもちろん眼前でプリプリしてる八重だ。

おかげで生理でも無いタイミングで、フリをしなければならないんじゃないかと
若干困ったけれども、本当の事を知られるのに比べたら随分とマシだと思う。
いや、この3人なら本当の事を教えても「あー、そうなんだー」とか言って今まで通りに
何も変わらない気もした。3人の笑い声や笑顔を見ていると、そう思えてしまう。

「ところで小夜さん……あの……」

秋野さんが、こっちを捨てられた子犬のような瞳で私を見ている。

「あー、唐揚げね。はい」

おかずの入ったお弁当箱を差し出すと、その顔を嬉しそうに輝かせて中の唐揚げをちょいっと摘み出す。
この人も最近割りとがめつくなってしまったもんだ。中でもお気に入りは鳥の唐揚げのようです……
いっそ秋野さんの分もお弁当を作ってしまおうかとしたんだけど、お兄ちゃんに止められた。
私のお弁当は俺専用だとかわがまま言ってやがんの。
何言ってやがると思ったけど、そういうとこが子供みたいで少し可愛いんだけどね。

因みにお兄ちゃんと秋野さんの関係は今まで通り。
上手くお兄ちゃんが私の失言をフォローしたらしく、秋野さんも元来の強さで立ち直るのが早かったようだ。
彼女は今の関係でも十分だと……。
まぁ、内心まだお兄ちゃんを狙ってるんじゃないかと冷や冷やしてたりもするんだけどね………あはは。

「うぅ……」

来た。
私と3人の関係が変わっていないように、私とお兄ちゃんの異常体質もやっぱり変わっていない。
見えているビジョンが一気にお兄ちゃんのものへと変わっていく。こうなった場合取る行動は一つ。
やっぱり慣れない身体を酷使して、全力で『私』を目指す。
後の疲労感は、いつもお世話になっているお兄様へとプレゼントだ。

「可憐、ちょっと胸を触らせてもらいましょーか……」
「はい?……いきなりどうしたんですの、小夜さん?」

開いている教室の扉に飛び込むと、秋野さんに向かって両の手をワキワキと蠢かす『私』IN 兄が居た。
あの野郎………

「あ、朝樹君だぁ」
「いいっ……!」

八重が1番にこっちに気付いて手を振り出す。
そして隣りにいる「私」もギチギチという擬音が似合いそうな感じで私に振り向く。

「は、ハローお兄ちゃんっ。今日は一体全体何用でゴザルか…」
「妹を借りていきますっ……」
「うぐぇっ!!」

制服の襟を引っ掴んでズリズリとお兄ちゃんを引きずる。

「朝樹くーん、あんまり変なこと小夜にしないでよー」
「頑張れ小夜ち〜〜〜〜んっ」
「なるべく早く戻って来てくださいね、小夜ーーーっ」

え?…………
今私秋野さんに呼び捨てにされた?

彼女の隣りにいる八重も歌乃もきょとんとしている。
だけどお兄ちゃんだけはニコニコしながら両腕をブンブン振って、
それに答えるように秋野さんも小さく手の平を躍らせた。
………

お兄ちゃんが秋野さんを可憐と呼び方を間違えるから……
いや、あるいは確信犯だったのかも知れない。
どうやらそのおかげで、私はこれから小夜と呼ばれ、秋野さんを可憐と呼ぶ必要があるようだ。
それを考えただけで慣れずに照れてしまいそうだけど、心のどこかでそれを望んでいたかのような嬉しさも込み上げて来た。
まったくとんだ兄を持ったもんだ。

ズリズリ ズリズリ

「おーいっ、小夜。自分で歩くから離してくれよー」
「そんなこと言って絶対逃げるからダーメ」

この男は1秒たりとも油断が出来ん。厳重な警戒態勢を取る必要があるのだ。
そうこうしている内に、いつもの場所(校舎裏)に到着しスーパーお説教タイムである。
ジトっと視線を向けると慌てていい訳を始める我が兄。

「頭が真っ白に………」
「それは入れ代わる時だけだっ!!いい加減に私の品格を疑われるようなことしないでよ〜っ」
「だって俺も、八重ちゃんとか歌乃ちゃんとか秋野と仲良くしたいじゃん?」
「方法が何とかならねーのかって言ってんのっ」
「頭が真っ白に………」

くぁ〜〜〜〜〜〜っ!!
なんだコイツらちが明かないっ!!

「そんなに胸に触りたいなら、わ……私ので我慢しなさいよっ」

ぐっとお兄ちゃんの手を『私』の胸に押し付ける。

「………う〜む」
「ふんっ、ゴメンネっ!!秋野さんより小さくってさっ!」
「いや、俺はこの胸がすごく好きだし。小さいと思うなら揉んで大きくすればいいよ」

目の前でふよふよと柔らかいものが、次々と形を変えていく。
あっ、コラ!!それいくらなんでも揉み過ぎだーーーーっ!

「ちょっ、ちょっ!タンマタンマっ!やっぱり触るのダメぇ!!」
「何で?良いじゃん。俺も気持ち良いし、小夜の胸も大きくなるなんて、正に一石二鳥!」
「う、うるさいバカバカ!!いいからこれ以上触るなーーーーーーーっ!!」

逃げる兄を必死に追いかける(その間も痴態実行中)。
咄嗟の瞬発力なら私の体の方が高いから、こういう時は不便だ。

あ……

とか何とか言ってる内に、また二人の身体が入れ代わる。
くっ……胸に違和感が……、身体も変に火照ってるんですけどー……
ほんっとに乳の無駄遣いしやがって。

「ちょっとお兄ちゃんっ!!待ちなさーーいっ!」
「無理ッスっ!!」

んっとにもうっ!!ややこしい身体だっ!!
なんでこんな身体になっちゃたんだもーうっ!!

「ちっくしょーーーーうっ!!待ちやがれーーーーーーっ!!」

私のお兄ちゃんは、頭も良くて、友達も多くて、スポーツも万能だけど。
とても変態で、私の言うことなんかちっとも聞いてくれない、どうしようもない大バカヤロウなんだけれども……

「お兄ちゃーーーーーんっ!」
「何だよーーっ?」
「絶対私を幸せにしてよーーーーっ!」
「おーぅ、任せろーーーーっ!」
「絶対………絶対なんだからねーーーーーーっ!!」




世界でたった一人の 私の愛しい 恋人だった。




fin









お疲れ様です。
予想通りの展開だったよね?
一応色々と最後は変えようかと迷ったんだけどハッピーエンドが好きなんだよ。俺。

自分で書くとどうしてもその傾向が強くってさ。


城戸兄妹.JPG


夏服での登校中の様子かしら?
いつものように適当なとこは適当過ぎて泣ける。

とにかく読んでくれてありがとう。
書きたいことあるけど、あとで後記にして書くわ。

とりあえず休憩っ!
お疲れ俺っ!!

夜月姫野先生の次回作にご期待ください。



posted by 姫野 at 21:05| 群馬 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | へっぽこノベル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年06月02日

妹×兄 8話

土曜日、日曜日と長距離外出をして、あんよが痛いよ。

どうも今日は、全国的に有名な人の血の流れを汲んでる姫野です。



土曜日と日曜日のことについては、明日の日記のネタにでもさせてもらおうかな。
とにかく当日の皆様には、大変お世話になりました。
ありがとうございます。



つーわけで今日は告知していた通り自作ノベル「妹×兄」の8話をお届け。前のお話を見たいと言う気のいい方がいらっしゃったらコチラをちょっとさかのぼってくれれば。

今回は「文章のプロ」というコミュをチラ見して「句読点」をちょっといつもより意識して書いてみました。

俺の日記見てると分かるが、酷いくらい句読点を使わないので、今回はかなり注意しましたよ。

その分、いつもより読みやすくはなっていると思います。




んじゃ、しばしお目々を拝借↓








「ね、ねぇ小夜ち……」
「ごめんね八重。私ちょっと用事があるから」
「あ……」

いつ見ても、曇る事の無かった彼女の表情が今は違う……
八重から笑顔を奪っているのは私だろう、それは間違いない。
向日葵のように暖かいあの笑顔は影を落とし、ぎこちない印象を感じ取れる。

私はあの日から、どうしたものか3人と接するのを避けてしまっていた。
八重も歌乃も、そして秋野さんも私に対する態度を特別に変えた訳ではないけれど。
どこか居心地の悪さを感じてしまい避けてしまう。

特に秋野さん。
あれだけのことを私は言ったのに、それを気にしてないように話しかけてくる。
自分の言いたいことは全部あの時に言った。とでも言うのだろうか?
やっぱり彼女は強いや……


こうして逃げている自分とは全然違う。


妹×兄 

8×「ばっかみたい」


八重に申し訳ないという気持ちもあるけれど、今の私じゃ旨く皆と話せる自信が無い。
気持ちがぐらついているのだ。
どうしてこんなアンバランスな感情になっているのか、正直なところ私にも全く解からない。
知らない内に噛みあわなくなってしまった私の歯車。
ばらばらになってしまった心が、私の不安を煽る。

昼休みになったばかりの校舎は、どこも人の流れが慌しい。
友達のクラスに移動する人や、食堂に急ぐ人、購買部に走る人達。
私はふら付いた足取りで、その中の食堂に向かう流れの1つに混ざった。

私は、あの日からお弁当は作ってない。
お兄ちゃんは残念そうな顔をしていたけど、仕方ないから適当に何か食べるって笑ってた。
本当は私も作りたい……と言うか作ったんだけど、味見をしてみたらそれは酷いものだった。
あまりに濃い味付けに朝の眠気を完全に吹き飛ばされたものだ。
もちろん同時に作っていた朝食も似たようなもので、食べられたものじゃなかった。

だから最近朝は、登校途中のコンビニのお弁当とかおにぎりで、昼は食堂や購買。
夜は外食かスーパーの惣菜で済ませる。
料理を忘れたわけじゃないのに美味しく作れない。
集中出来ない………のだろうか。
昨日ちょっと弾いてみたオルガンも、出したい音を全然出せなかった。

お兄ちゃんが大好きだって言ってくれた、私のオルガン。
何もかも上手くいかなくなってしまったようで、すごく落ち込む。
自分で解からない自分に独考を廻らせていると、食券購入のために並んでいた
販売機の前までの列が動き、販売機前までたどり着く。
私はそれに、用意しておいた500円玉を入れてから、ランプが点等して購入可能な食券のボタンを無気力に押した。
しばらくしない内に、カレーライスと書かれた食券と100円のお釣りが出てくる。

私はそれを握り締めて、おもむろに注文カウンターへ。
カレーライスを受け取ると食堂を見渡し座るポイントを探す。
食堂の隅が丁度空いているからそこが良いや。
食欲を誘うカレーの良い匂いを嗅覚に突き付けられながら、トレイを両手でしっかりと持ち歩き出す。
気分は浮かないものだが生理現象と言うのはこんな時でも立派に働くもので、
空になっているお腹が今か今かとカレーライスを急いている。

「あれ?小夜じゃん。食堂に居るなんて珍しいねぇ」
「え?」

突然声をかけられてその方向に振り向くと、3つ隣りのクラスの友達が天そばを食べていた。

「いつもクラスの方でお弁当なのに珍しいね」
「う、うん。たまには食堂ってもの良いかな〜って、アハハ……」
「ほ〜う、たまに次いでで私と一緒に食べない?つーか食べよう、ね?」
「うん……」

流石にここまで言われると断り辛い。
本当は一人で食べたかったんだけど、たまにはいつもの八重や歌乃と違う友達と食べるってのも
付き合いとして大事だと思ったから素直に誘われよう。

「小夜はカレーですか」
「お弁当じゃカレーライスはキツイからね」

そばは、ズルズルと食べるのが流儀らしいけど、それに沿った気持ちの良い食べ方を彼女はする。
その内に私は、彼女の前の空いている席に腰を落ちつかせた。
ズルリと麺が小さい口の中に吸い込まれて良く。彼女は満悦の表情だ。

「やっぱり天そば美味し♪でもここの食堂のカレーも美味しいんだよ。知ってる?」
「そうなんだ、それはちょっと楽しみかも」

いよいよもって、私のお腹は食欲を満たせとフーリガンの如く暴れている。
待て待て、今胃の中に落としてやるから少し落ち着けってのマイストマック。
使い込まれて光沢が鈍い銀色のスプーンを手に取り、それをカレーライスに向かって走らせる。

「ちょっ……福神漬けってカレーに混ぜて食べるのっ!?」
「はい?」
「普通カレーライスを食べる合間につまむものじゃない?」

どうやら彼女は、私が福神漬けをカレーの中に混ぜていることが大変不思議らしい。
少しびっくりした様子で私のカレーを見ている。

「あー……私はこうやって食べるのが普通なんだけど」
「美味しいの?」
「まぁ割りと……福神漬けを混ぜる混ぜないっていう2種類の人種が居るのは知ってるけど、私はこっち」
「そうなんだ、私は全然知らなかったよ」
「食べてみる?」
「お、マジ?サンキュ♪」

ズズとカレーライスをトレイを差し出す。
彼女はまだ手のつけてないスプーンを最初に使うことに少し遠慮を見せたが、
気にしないでと一言かけると、悪いねと、はにかみながらカレーライスをすくって口に運ぶ。
お腹の中のガ○ベスが、今にも審判に殴りかかろうとする勢いなのは根性で黙らせる。

「割りとイケるね……意外」

そういえばガ○ベスどこに行ったんだろうなぁ、
とか一人で女の子らしくないこと(?)を考えてたらカレーの感想が飛んできた。

「そうでしょそうでしょ」
「ありがとっ」

満足した表情でトレイを戻す。
そうやって、私のそばで笑ってくれるのはいつも八重であった。
目の前の彼女が悪いわけではもちろんないけれど、その笑顔にどこか寂しさを感じてしまう。

戻ってきたカレーライスを私も一口。
うん、彼女の言う通りこのカレーライスは辛過ぎずに丁度良い味を出していた。
食堂を通り胃に落ちたカレーライスは、急ピッチで消化されることだろう。

「お兄ちゃんは福神漬け混ぜないんだけどね。そう言えば小学生の頃は混ぜる混ぜないでちょっと喧嘩になったなぁ」
「へー、朝樹君は私側ね。でも小夜の食べ方も好きだな」
「気分で変えれば良いと思うよ」
「そうだね。それにしても小夜と朝樹君でも喧嘩なんかするんだ」
「しょっちゅうだよ」

ええ、ホントに。
これホントなんですよ?

「私のそばも食べる?あっ、いっそカレーそばにしちゃうとかさ」
「カレー……そばぁ?」

あるようで聞いたことの無い料理名が飛び出してくる。

「あれ?カレーそば知らない?」
「初耳、カレーうどんの亜種ですか、そうですね」
「うん、うどんじゃなくてカレー。確かにうどんに比べたら一般的じゃないけど美味しいよ」
「ふーん、今度作ってみようかな……あ、でもさ、うどんよりそばの方がカロリー高いんだよね」
「げっ!!それマジっすかっ!?私そば好物なのに〜……」

彼女はガクリとうな垂れた。
私はアハハと乾いた笑いをしながら、何気なく彼女の後ろに視線を移した。
次の瞬間に何かに心が鷲掴みされた、見なければ良かったな……
ため息が出た。何でなんだろうか?


そこに………視線の先に楽しそうに会話をしながら昼食を食べている秋野可憐と……



お兄ちゃんが居た。





いつもなら楽しいはずのゴールデンウィークも、憂鬱な気分のまま最終日となった。
私はあれからも八重や歌乃とは喋れてない。もちろん秋野さんともだ。
せっかくの休日だと言うのに、誰とも遊ばないで外にも出ないで、
部屋に籠もってただ勉強だけをしている毎日だった。

勉強に集中してれば、私の中のモヤモヤした気持ちは忘れられると思ったが、
なかなかどうしてモヤモヤは晴れない。
逆に勉強に力を入れようとすればするほどナーバスになって問題もケアレスミスの連続だ。

「はぁ………」

大きな、それは大きな溜め息だった。
溜め息をすればするほど幸せが逃げて行く、なんてどっかの誰かが言っていたけれど、
そんなものはお構いなしだ。吐きたい時に溜め息をしないでいつすれば良いのよ?
なんだかムキになって10回連続で溜め息を吐いてみる。これで私の幸せは遥か彼方ね、フハハ。

「ばっかみたい」

溜め息っていうのも、こうも連続で意図してやればそれなりに疲れる。
肺を縮めて膨らませる行動というのも、そこそこに疲れるものだ。
手に持ったシャーペンを数式の並んだ数学のノートの上に転がして、
椅子の背もたれにドッカリと身体を倒し込んだ。
ギシという小さい音の後には、部屋を包む静寂だけしか残らない。


『私、朝樹君に告白しようと思います』


いつもの事だ、お兄ちゃんがモテるのは昔からだもん。
そんな言葉は、もっと前から割と有り触れていたじゃない。だけど……

だけど、今回だけはそのフレーズを素直に受け取れない自分がいる。
お兄ちゃんが誰と付き合おうと、私が何か意見を出せる立場じゃない。
本当にお兄ちゃん彼女と付き合うようになったとしたら……

私はどの場所に居れるのかな?
お兄ちゃんのお弁当を頑張って作るのは、きっと私じゃなくなる。
お兄ちゃんの隣りを歩いて登校するのは、きっと私じゃなくなる。
お兄ちゃんと笑って、怒って過ごすのは、きっと私じゃなくなる。 

「何か嫌だな……」

そうなってしまった世界………と、そう考えてしまう自分が。


『ゴールデンウィークにデートにお誘いしてみようかと思ってるんです』


今日はもう休日最終日だ。
もう秋野さんは、お兄ちゃんに告白を済ませたのだろうか?
いや、お兄ちゃんとも最近はろくに会話もしてないけれど浮ついた様子は無い。
もし秋野さんと付き合っていたとしたら態度に出るはず。
お兄ちゃんもけっこう分かりやすい人間だから。
どっちにしても………

「休み明けの学校でそれはハッキリする……か」

時刻はもう夕方である。部屋の時計の短い針は4の数字を回ったところだ。
少し迷ったけど、私は外に出ることにした。
このまま勉強しても身にならないのは休日中に嫌と言うほど感じたし、それに……

いや、別に私には関係の無い事じゃない。
だいたい二人がどこに居るかなんて私が分かるはずないし、
そもそも今日がその告白の日って可能性だって、あるかどうか怪しいものだ。

自分ではそう言い聞かせながらも、いざ街に出てみると小走りになってる自分が居た。
は?何してるんだろう私?ほんと、ばっかみたい。


『あそこの公園って、夕焼けに赤く染まるととっても綺麗なんです。今度一緒に見てくれませんか?』


そうだ。あの時……食堂で偶然秋野さんとお兄ちゃんを見つけた時。
彼女は確かそんな事を言っていた。聞き耳立ててる自分が少し後ろめたかったけど……
思い立った途端に自然に身体が動いていた。
そこに行って何をしようと言うのか?私に何が出来るって言うの?
歯止めをかけようとする理性を押し込んで、感情が身体を支配していた。
私には関係無いって………言ってるのに……

目的の公園はそれほど遠い場所じゃない。
ここから歩いても数十分といったところか。

「はっ……はっ……」

なのにそこに向かって、身体はいつのまにか駆け出していた。
ねぇ?なんでそんなに頑張ってるの【私】?

「はっ……ふぅ……はっ……」

疑問をぶつけてみても【私】からは回答を得られない。
そうしてる内に身体は風を切り、みるみる内に速度を上げていく。


ドクン……


うそ………
左胸が熱を持ち始める。
屋上での一件以来入れ変わることの無かった身体が、今入れ変わろうとしている。
こうなってしまった以上は、私にそれを止める術は無い。





………………………………
………………………………
………………………………―――





「あの、朝樹君……」

驚いた………
目の前に秋野さんが居たからだ。
妙に切なそうな表情をしているのが分かる。
朱に染まった頬は、けして夕焼けだけのものでは無いだろう……

と言うことはっ…


ふわ…


次の瞬間軟らかいものが飛び込んできた。目の前に居た秋野さんである。
お兄ちゃんの身体との身長差で、彼女は頭を私の胸に預けるようにしている。
これは……恋人の距離ってやつじゃないの?!

「好きです………私、朝樹君のことが好きですっ」

なんでこんな時に身体が入れ代わるんだろうか?どうしたら良いか全く解からない。
それに私の身体はこの場所を目指してたんだ。
もうすぐお兄ちゃんがここに来るだろう。待ってた方が良いのだろうか?
それとも………

それとも私がここでOKって言えば、秋野さんはお兄ちゃんと付き合えるのかな?
秋野さんがどれだけお兄ちゃんのことを見てきて、どれだけ好きになっているかってことだって、
私は痛いくらい知っている。本当に痛いくらいだ……
その気持ちが叶うかも知れないなら、ここで良い返事をしてきっかけでも作るべきかも知れない。

「朝樹君は私のこと、どう思ってますか?私は、私はあなたとお付き合いしたいです…」

強いと思っていた彼女が、小さく震えながら胸に頭を預けている。
秋野さんもやっぱり怖いんだよね、お兄ちゃんに振られるって可能性が……
震えているの身体だけじゃない。声、そして心。
だた「付き合いたい」と言うだけなのに、その行為には物凄く勇気が必要で……
それでも後悔なんかしたくないから頑張って、頑張って人は想いを伝えるんだ。

「朝樹君が好き……大好きなんです……」



その言葉を、想いを聞いて………私は返事を決めた。










「ごめん、俺は君と付き合えない……」











あざっす。
今回は随分と切り方がえげつないなと自分で思った。
予定では(あくまで予定ですよ)9話を最終話にさせる予定なのです。

キャラクターが暴走したら10話まで出来ちゃうんだけどねw
今回も食堂での友達との一件は完全に暴走です。

あんなの予定してませんです。
普通に小夜が一人でカレー食べて、独考で乙。
だったのですけど、これがまた勝手に手が動いてしまった。

3つ隣りの小夜の友達と言う彼女ですけど。
名前はもちろんありません。

いや、アイツが生まれた時点で考えそうになったがそれを考えてしまうと、また無駄話しがズレたち愛着が沸いたりsてしまって物語に絡ませたくなる。結果話し伸びる歪むでさぁ大変。


そんなわけで今回は自重しました。


因みの僕はカレーに福神漬けは混ぜないです。





今日はその彼女の絵を描こうか迷いましたが上でも書いたようにそういうことするとNGなので可憐お嬢様と迷ったけどいい加減兄貴のバージョン2を書かないとアレだよなってことで朝樹お兄ちゃんです。


城戸朝樹2.JPG


やっぱり男ってなんか描く時のテンションが低くてダメだわ。
小さい頃は女の子を書くのが恥ずかしくて男しか描けなかったけど(当時はガキのラクガキですが)、今は女の子描いてる方が楽しいよ。


耳とか目とか口とか特にダメだったね。
随分と丸くなったもんだ。

朝っぱらにジャズ聴きながらと随分と優雅に描いたが描くのが男じゃなww








とりあえず次回のお話の土台はあるのでさっさと書き終えたいところ。
だが遊びに走りたい俺ガイル。


気長に待っててくださいね。
早くしろって言うなら早くしますw
posted by 姫野 at 11:15| 群馬 ☁| Comment(4) | TrackBack(0) | へっぽこノベル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年05月21日

妹×兄 7話

学園コメディー「妹×兄」7話アップ。
ようやくです。

前の話しはわからなかったらココでどうぞ。





「私、朝樹君に告白しようと思います」
「う゛ぇっ!?」
「おーっ」
「いやっほーぅ!秋野ちん最高ー!!!!」

だぁーっ、八重うるせー!
周りに居る人がこっち見てるじゃないかよーっ。
あ、黙らせた。歌乃が八重を暴力的に黙らせた………


秋野さんと仲良くなり始めてから数週間。
桜の花もとっくに散り、暦は5月に入ろうかというところである。
あれからと言うもの私達のランチライムに秋野さんが加わることが多くなった。
才色兼備な生徒会委員長と言うこともあり忙しいようで毎日と言うわけでは無かったけれど、
それでも十分に彼女と話している時間が多い。

そして今日、そんな彼女が唐突に言い出した発言がコレ……

ゴールデンウィークを間近に控え緩みきった頭を鉄鎚で殴られたかのような衝撃を襲う。
いや、実際に鉄槌で殴られた記憶も無いし殴られてたら確実に死んでるんだけど……
ともかくそれくらい私にとっては衝撃的な発言だった。


妹×兄 

7×「う、うん……」


さて、まずは今日のおかずの中で1番自信たっぷりな鳥の唐揚げを食べて落ち着こうか……
もぐもぐ。そうだ、このレモンだれのキュっとくる酸味……
これだっ!!私の求めて居たのはこの味なんだっ!!
って、イカンイカン。落ち着けてないぞ私。

「えっと、唐揚げ食べます?」
「あ、良いんですか?頂きますぅ」

なんか咄嗟におかずを秋野さんにあげてみたけど口に合うかちょっと心配。
上品に口の中で私の唐揚げが丁寧に咀嚼されていく。
その僅かな時間で私は自分の心を落ち着かせようと試みた。

お兄ちゃんが秋野さんに告白……
うん、お兄ちゃんが好きって秋野さんは最初に言ってたじゃん。
こうなることは遅かれ早かれ分かってたじゃん。
歌乃そろそろ八重のほっぺを摘むのやめた方が良いじゃん。

あ、あれ?私もしかしてまだパニクってる?
いち、にい、さん……「じゃん」って3回言ったよね私。
うん、大丈夫。ちゃんと数えられてるから私は正常、正常。

「あ、美味しいですねこれ。好みの味です」
「え?そうですか?それは良かった良かった」
「小夜、話しを変えると秋野さんはコロっと先の会話を忘れちゃうだろぉ」
「ゴメンゴメンっ」

そうなのだ。
秋野さんは自分の会話の内容よりも他人の会話に一生懸命になるので、
自分の切り出した会話内容を忘れるという天然っぷりを発揮してくれる。
さっき私が唐揚げをあげたばっかりに秋野さんはお兄ちゃんへの告白のことはスッポリ抜けてるのだ。

「酷いです鯉口さんっ、ちゃんと覚えてますよ私っ。さっきまで忘れてましたけど……」
「それダメじゃん秋野ちん……」
「でも今は覚えてますっ」
「それは残念ながら覚えてるって言わない、思い出すって言うんだ秋野さん」
「う……二人がイジメますっ。小夜さんがもう一つ、もう一つだけ唐揚げくださったら
立ち直れる気がします」
「あー、あげますあげます。どうぞどうぞ。ほら、八重も歌乃も食べて良いよ」

結局気に入ったんだな、私の唐揚げ……
張り切って多めに作っておいて良かったよ。
作った料理を美味しいと思ってもらえるのは悪くないしね。

「あの秋野さん…」
「朝樹君のことですよねっ?大丈夫ですっ。忘れてませんっ」
「う、うん。それなら良いんですけど」
「やぱり小夜ちんの料理美味しいぃ」
「まぁイケるな………母さんの唐揚げには適わないけどな」
「歌乃はお母さんが好きなんですよね、わかります」

秋野さんが忘れてないなら良いんだけどさっきから全く会話が進展してないのよね。
とりあえず3人が唐揚げを食べきるまで私が出来るアクションは待つことだけなんだけどさ。

「小夜ちんご馳走様ぁ」
「うん、お粗末様でした」
「さて、そんで秋野さんの告白についてのことだが……」
「あ、はいはい。そうなんですよ。しようと思ってるんですけど……」

そこまで喋って秋野さんがちょっと顔を赤らめる。
俯いた顔を上げ恥ずかしそうに口を開いた。

「わ、私今までそういう経験って無くて……な、なんか女性の方から告白っていうのは
男性に引かれちゃうんじゃないかなぁ……とかそういう考えとかありましてぇ……」
「そっか、でもそれ考え過ぎじゃない?私は普通に男は女からの告白喜ぶと思うけどねぇ」
「お、何々?もしかして歌乃ちんの体験談からの抜粋ですか?」
「ちげーよ、私の憶測。個人的なイ・ケ・ンっ!」

私は誰かを好きになったことが無いから自分から告白とかそういうことすら考えたことも無かったな。
女の子の方から告白………か。
それってすっごく勇気がいることなんだと思う。
別に女の子からって枠組みが無くても告白自体が勇気のいることだと思うけど。
それをしようって言う秋野さんはすごいなって関心しちゃうな。
問題は相手がうちの変態お兄ちゃんってとこなんだけど……

「あ、秋野さん。今更だけどお兄ちゃんで良いの?あぁ見えて実はデンジャラスだったりするよ?」
「えーと……デンジャラスな部分が具体的にどんな感じなのかは解かりかねますが私の想いは変わらないと思います」
「眩しい、眩しいよっ秋野ちんっ!」

八重が目の前に腕を持ってきて必死に視界を遮っている。
お兄ちゃんを好きだって秋野さんの気持ちの強さがスゴイなと思ってしまう……
私も人も好きな人が出来たらそれくらいの気持ちを持ててしまうものなんだろうか?

「それでいつ告白するとか決めてあるのか?今からって言うと……」
「ゴールデンウィークにデートにお誘いしてみようかと思ってるんです」
「ほほぅ、そこで勝負なんだね♪」

私も待望の大型連休。
そこでお兄ちゃんに………告白……
うわっ、なんか私が緊張してきたっ。

「あの………」
「?何ですか小夜さん?」

言おう。
あの事は言っておかないと。
彼女を傷つけてしまうかも知れないけど言っておかないと………

「お兄ちゃんね……行くらしいの……」
「行くって……、どこに?」
「大学、卒業したら東京の………」
「なっ、なんだって〜〜〜〜っ!」

顔を手のひらで隠して大げさにうな垂れる八重。
相変わらずリアクションが激しい。
ここに来てネガティブ要素を出してしまったため歌乃も落胆の様子。
ただ………

「そうですか……」
「その……秋野さん……」
「大丈夫です。私………元々東京の大学に進学するってことも視野に入れてますから」

え………

あ、そうか。
彼女もまたお兄ちゃんと同じ秀才。
どこの大学だろうが基本的には力の通じる人間なんだった……

「朝樹君がどこに行こうと私はついて行けます……勿論私の想いが伝わればのお話ですけど」

そう言うと彼女はくすりと苦笑をした……
真っ直ぐだ。彼女の想いは悲観的にはならない。
羨ましいとその時私は素直に思った。
誰かを好きになるという事、誰かを想うという事。それらが今の彼女を強くさせている。
それとこんなに想われてるお兄ちゃんも……





「良くそこまでの気持ちになるね……」
「え?………」





あ、嫌だ。何か私嫌なこと言おうとしてる。
ダメなのに。そんなことダメなのに。

「お兄ちゃんがマーカー拾ってくれたってだけで良くそこまで好きになれるね……」
「おい、小夜……」

何でっ?!何で止まらないんだろうっ?!
何でこんな気持ちになってるんだろうっ?!

「秋野さんはそんなに簡単に人を好きになるんだね?たったのそれだけの事で……」
「私はっ!」
「秋野ちん?」

しっかりと私の瞳を覗き込んで迷いも戸惑いも無い視線を入れ込んでくる。
止めて欲しい。気持ちが崩れそうだ。それ以上言わないでよ……
ズルイよ秋野さんは……なんでそんなに強いの?

「私は私なりに短い時間ですけど朝樹君を見てきました。彼の良いとこも沢山見てきたつもりです。
きっかけは些細なことですが、そこから彼と一緒に居た時間と私の気持ちは消して軽いものでは無いですっ!」

普段の彼女に似合わない強い口調。
その様子に気付いた教室の視線がこちらに集まってくる。
何でこんなことになったんだろう。私のこの気持ちはなんなんだろう。
彼女の想いへの………嫉妬?
そんな………私らしくない。いや、私らしいってなんだろう?

「………ごめんっ!」
「ちょっとっ小夜ぉ!」

その場に居れる気分じゃない。私は一言、そう言うと教室から……逃げた。
どこでも良い。誰も居ない場所に行きたい。



……………



さっきまでの足取りなんか全然頭の中に入ってなかった。
私はいつの間にか屋上への扉を開けていた。
少し錆び付いて動きが鈍い。ガガと嫌な音を鳴らしながら思い扉をなんとか開け放つ。

私の方へすごい勢いで風が吹き込んでくる。
春とはいえこの季節の風は十分に寒い。私はあわてて扉を閉めてため息を一つついた。

「………あ」

なんとなく空を見上げてみた。
私の学校は屋上への出入りが自由なので昼休みとなるとここも何人かの人間が
集まってきたりするのだが今日は誰も居ない。
風の吹く音と学校の周りの車道を走る車のエンジン音……
消して静かではないけど静かな世界の中から澄み切った静かな空の世界を仰ぐ。

もっと、もっとあの空に近づきたい……
そう思った私は扉の隣にあるやはり少し錆び付いたハシゴに手と足をかけた。
屋上の入り口の上、学校で使う水とかのタンクが置いてあるあそこなら誰の目にも
止まらずにゆっくりと、本当に一人だけの時間を過ごせる。

カツカツと確実に空へと近づいていく。
小さい頃に空に浮かぶ雲の上に転がって寝るのが夢だった。
ふかふかしてお日様が暖かくて……
もちろん小さい子供の勝手な想像で現実は知った時はかなりショックだったものだ……

ハシゴを上り切ったところで手を遠くに浮かぶ雲へと伸ばしてみる。
こんなことをしても雲が掴めるわけでもないのに……

ドクン……

あ………
左胸が熱を持ち始める。
これはお兄ちゃんとの身体が入れ替わるサインだ。
せっかく誰も居ない場所に着たのに。お兄ちゃんのバカ……
遠くなる意識の中で悪態を付いた。


パチ

お兄ちゃんと身体が入れ変わる時には視界は真っ暗になる。
そもそも視界と言う表現はおかしいのかもしれないけど言葉で説明するならそういうのがわかりやすい。
身体が入れ変わった直後、視界が一気に開け眩しさを感じてしまう。私はこれに今でも馴れない。

「っ!」

光の刺激が瞳のレンズに容赦無く進入してくる。
それを我慢した後はいつものように現状チェック……ここは……。

見上げればさっきと変わらない住んだ空があった。
身体は何かを背にして床に座っている。

「小夜だったのか……」
「いっ……っ!!」
「おいおい、何変な声出してるんだよ、俺だよバカ」

背にしているものを確認。貯水タンクみたいだ。
ということはここは屋上でタンクの向こう側から声をかけてくる
男口調の女はもちろん私の身体のお兄ちゃんだな。

「バ、バカとか言うほうがバカなんだよお兄ちゃんっ」
「俺お前よりバカじゃねーもん」
「ぐっ……」

事実なので反論出来ないのが悔しい。
それにしてもお兄ちゃんはなんでこんなところで一人だったんだろうか?

「なんでこんなとこに居るのよ?」

ここは素直に聞いてみよう。

「そーだなぁ、特に理由も無いんだが………空を見たかったから……かな」
「何それ?」

ほんと……何それ?私と一緒じゃないの……

「たまには1人でランチってのも必要なの」
「あ……」

座っているお兄ちゃんの身体の隣りには
私の作ったお弁当の箱とグレープフルーツジュースが並んでいる。

「まだ唐揚げが1個残ってるんだよなぁ」

確かに弁当箱の中にはちょこんと1つだけ唐揚げが残されている。
お兄ちゃんは好物を最後に残す典型的なタイプなのだ。

トコトコと私の身体のお兄ちゃんがタンクのこちら側に歩いてくる。
そして箸で器用に唐揚げを摘むと……

「ほら、お口開けてあーん」
「なっ?!はぁ?!」

ちょっとちょっと?!何これ?なんのプレイですか?!

「早く口開けろよな」
「ちょっ、何で私が食べるのよっ?」
「だってそれ俺の身体、栄養取るのは俺の身体じゃないと意味ないだろ。だからあーん」
「え?あ、うん……」

ちょっとっ!何納得してんだ私っ!!
バカみたいに口開けて………

「どうだ、美味しいか?」
「う、うん……」
「そうかそうか」

私の身体のお兄ちゃんがお兄ちゃんの身体の私に唐揚げを食べさせてる。
端から見たらこれはどう映るんだろうか?

仲の良い兄妹?それとも……

「うっ……」
「ん?どうした?その唐揚げは毒入りだったのか?」

ち、違うわよっ!ちょっと変な想像したらなんだか顔が熱くなってきた。
何考えてんの私っ!?そんなのありえないでしょ?
だって、だって私は妹で、お兄ちゃんはお兄ちゃんなんだから……

「小さい頃……」

お兄ちゃんがテキパキとお弁当の箱を片付け始めた。

「お前が空の雲を掴もうとして家のベランダから落ちそうになった事があったよな」
「な、何をいきなりっ」
「いや、こうやって一緒に空見てるとなんだか思い出しちまっただけ」

あー、そうだベランダから落ちそうになった私の足を
思いっきり引っ張ってお兄ちゃんが助けてくれたんだ。
その後わんわんずっと泣いてた私をずっと抱きしめてくれた……

「ねぇ、お兄ちゃん」
「何だ?」
「お兄ちゃんはどうして彼女とか作らないの?」
「はぁ?なんでそんなこといきなり……?」
「良いから答えてよ」
「まー、東京行くから?遠距離恋愛なんて無理だろ?
いや、やったことなんか無いけど現実ってのはいつも想像よりも厳しいものさ」
「どんなに好みのタイプでも?」
「まぁある程度は無理」
「例えば秋野さんとかでも?」

私ってば何聞いてるんだろ?
本人が知りたい気持ちを妹ってだけで勝手に聞いたりして……

「何で俺のタイプが秋野って決まってんだよ?」
「だって私お兄ちゃんのタイプなんて知らないもの、だから一般的に……」
「ふーん、どっちにしても遠距離は無理だって、きっと」
「じゃあ一緒に東京に行ってくれるって言ったら?」
「付き合うかもな」


あ……



私の身体が固まる。
何でなんだろうか?
秋野さんがお兄ちゃんと付き合うってことは二人の問題で私は無関係。
なのになんでこんなにも心はざわつくのかな?

ドクン……

私も気持ちは落ち着かないままに元の身体に戻される。

「おー、もう昼休み終わるぞ。ほら教室に帰ろうぜ」
「あ、うん」

教室か……そこから逃げてきたばかりだと言うのにまたその場所に戻らないと行けないのか。
それを考えてだけで気分は憂鬱になる。
さて、どうしたものかな?

「小夜」
「何?お兄ちゃん」
「今日もお前の作ってくれたお弁当美味かったよ。サンキューな」
「う、うん……」

何気ない感謝の言葉だけど今の私はその言葉にとても救われたんだ。










はい、お疲れ様。

今回のお話からラストシーンに向かって動いていきますよ?
たぶん後2話。多くても3話でお終い。なんだかそう思うと寂しいですな。

この作品もぽっとした思いつきでショートストーリーとして書き上げていこうとしたのですが気が付いたらもう7話。
ちょっと前にもいったけど3話くらいで終わると思ってたんだよね。
4月には終わると思っていたのにもう5月も後半……

書いているうちに愛着が沸いたりするんですよね。
そうするとキャラクターの暴走とかと相成って長く長くキャラを可愛がろうとする親心と言うかなんと言うか……

今まで自分の作った話の中でもズバ抜けてまとまってるので書いてる俺自信がこの作品と登場キャラクターが好き。

ま、自分の好き放題書いてるわけですしな。
熱心に読んでくれてる方、書き上げるペースが遅いかもしれませんがラストまでしばしお付き合いお願いします。







で、今回の絵。

片岡屋絵2s.JPG

ちょっとブログで表示できるサイズまで圧縮すると崩れるので今回はサムネイル表示です。

前に書いた八重に比べると随分と雰囲気違うわな。
と言うか2枚目以降のキャラは全部瞳の中を描いてるので雰囲気も変わるわ。

ポーズに意味は無い。
多分八重と恋人になったら「ほらあっちの店に行ってみよ〜よ」って感じでこんな風になるんじゃね?みたいな。

指先の何かは遊び心意外の何でも無い。

しかしこの学校の制服って結局なんなんだろうな?
俺自信最初はブレザーで描いてたつもりなんだがセーラーの時もあるような……というかもうセーラーにしか見えないよな、うん。

じゃあセーラーで(超適当ww)。

最近絵を描いてると充実しいた気分になるので話が終わったあともこの作品の絵は描いていこうと思う。

今度は色鉛筆だがちゃんとカラーにしてやろうかなとか……
後はイチ子とかチヨ子とかも描いて置きたいぜ。


posted by 姫野 at 10:01| 群馬 ☁| Comment(3) | TrackBack(0) | へっぽこノベル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年04月14日

妹×兄 6話

お〜め〜で〜と〜っ

こんにちは、ロイド登場マダー?姫野さんです。


っさぁっ!
自作へへっぽこノベル「妹×兄」の6話マスターアップ(なんじゃそりゃw)しました。

日曜日の朝の方にね……
今日は朝食を食べてからギアスに2話を保存して1期の好きなトコを垂れ流しながら今回の小説分のらくがきを描いてたー。

ともかく遅くなりましたが続きをどうぞ。
いつものことですがコメントがあると喜んだり吹き飛んだり爆発したりします。

過去のお話を読みたい場合は

1話 2話 3話 4話 5話










「はぁ、はぁ・・・・だいぶ遅くなっちゃったなぁ・・・・」

私は今、家への帰路を全力・・・・はちょっと言い過ぎだな。
うん・・・7割くらいで一生懸命駆けています。
場所はマイホームからちょっと行ったところにある繁華街を過ぎた辺りの公園。
時刻は6時半過ぎで見上げた空は闇を浮かばせている。

何でこんな目にあってるかって言うと。
今日の私は日直で、普段はしないような雑務に追われたわけよ。
そうそう、黒板消しってチョークの粉落とすの意外と大変よね?
力任せに叩けば粉が舞って酷いことになるしチマチマ叩いても中々落ちないし・・・・
違う学校の友達のとこには黒板消しクリーナーが配備されているらしい。
クリーナーの上に黒板消しをスライドするだけで粉を吸い取る優れものなのよ。

まぁそんなこんなで割と遅くまで教室に残ってたら偶然教室前の廊下を通りかかった
生徒会長、秋野さんがひょっこりと登場。

放課後の生徒会室でなんかのお喋りのお誘いをくらったわけだ。
へこへこ付いていったワケだけども・・・・それは良い。
しかしあまりにも会話が弾みすぎて帰宅時間が遅れに遅れた。

帰りがけに食材の買い物にも行かなければならなかったから・・・・
いつの間にかお日様は消沈、結局今私は走ってます。
しかしラッシュ時間のスーパーでオバチャン共と渡り合える女子高生ってなんか・・・・
考えただけでブルーになってきた。


妹×兄 


6×「………仕方ない」


春だからって急に暖かくなるわけじゃなく
吹き付ける風はぽかぽかとしたそよ風とは程遠い物である。

I want to go home!

叫びたくなるほど寒いけど実際に叫んだらどっかの誰かさんと
同じになっちゃう気がするので心の中だけで叫んでみる。
うんうん、平常心平常心。理性が効くのは人の証。
箍が外れればそれは人に在らず獣である。

くそぅ、スカートなので当然足が寒い。
サイハイでも履いてくれば良かったなぁ・・・

「うん・・・・・?」

地を離れては着地を連続する足に揺られ完全に定まらない視界。
その私のフォーカスに明らかに怪しい人物がポツンと映し出された。

うわ・・・・・

瞬間にそう思った。
周りに人の気は無くいつの間にか私の身体には嫌な空気が纏い始めていた。
コートにグラサンにマスク・・・・
絵に描いたような痴漢・・・・だと思う。

ダダッ

男が私の進行方向を遮るように横にずれた。
これは・・・・・痴漢だな。

「っ!」

ここで怖気づいて止まるのは間違いだ。
運動の流れを停止すれば相手に隙を与える事になる。
逆にこのまま駆ければ相手の裏をかけるだろう。
足に勢いを付け一気にギアをトップに入れてダッシュ。

そのまま突っ切るっ!

「おぉっ!!」

あれ〜・・・・・これはマズいかも・・・・
遠くからだと判断仕切れなかったが、私が思ってたよりも随分と相手の体格がデカイ。
太い声を上げ痴漢は両手を広げ壁のように立ち塞がってきた。

一瞬レジ袋を投げつけようかと思ったけど中身が勿体無いので止めておこう。
激闘によるスーパーでの苦労は潰したくない。
タマゴが1パック60円だったんだよっ!?

ならば選択枝は一つっ!

痴漢が掴みかかろうと右腕をこちらに伸ばしてくる。
動きは身体に似合って遅い。
だがアレに捕まれば普通にヤバイだろう。
咄嗟、両の手をパージして今日のお夕飯の材料を保護・・・サイドステップでその場を離れる
そして・・・・
迫ってくる腕に対しタイミングを合わせて私は右に半身ずれた。

「ふっ」

衝撃による重い感触。
痴漢の右腕を私の右手が左側に受け流す。

「ぬおっぉ!?」

そしてその動作のままに受け流しに使った右腕の肘を
バランスを崩しヨタついた痴漢のアゴに突き当てる。

「っがぁぁ!!」

ふら付いた・・・・
よしよし、この男の身長くらいなら私でもやれるかな。
コンコンと靴を地面に叩き跳ね返ってくる感触を確認。

「よっと」

痴漢に向かって一歩ステップ。
二の足で土煙を上げ身体は空へ舞う。
ジャリと音をさせ跳ねたのは足で全身にひねりを加えたからだ。
空中で身体を大きく時計回りに一回転し折畳まれた脚線が伸びる。
痴漢の頭へと向かう牙となるのは私の踵。
後ろ回し蹴りってやつである。

「そぉーれっ」

ゴキっ!!

「ぐえぇっ!」

どさりとそのまま仰向けに倒れる痴漢。
ぐぅと音を吐き消沈した模様。
今まで漂っていた痴漢からの気配は消えた。

「ふ〜〜〜っ、みっしょんこんぷり〜〜〜〜っと」

地面に転がるレジ袋を確認。
どうやら中身を無駄にしないですんだようだ。
めでたしめでたし。
私はその事に安堵しつつ倒れた痴漢を見下ろす。


鍛えられていない私のような身体でも膝や踵など骨の発達した部分は十分な凶器となる。
後は足りないパワーを回転による遠心力や相手の運動力と自分の運動力を重ね補い闘う。

これらは全部歌乃に教わったことだ。
私を助けてくれた時に見惚れた歌乃の動きには程遠いが
武道の心得が無い人間1人くらいならなんとかなる。

歌乃に助けられてから私が欲したのは身を守る為の護身術。
それを教えてもらってから私もそこら辺の男よりは実は強かったりする。

ま、勝てるのは油断を頂ける最初だけだと思うけどね。
突発的な荒事には通用するけどハッキリとした試合形式でやった場合は勝てないだろう。
試合なんてする場面はまるで無いわけだけど。

平穏な日々に突如として襲い掛かる危険を跳ね除ける程度。
護身なんてそのくらいで十分。
というか私じゃそのくらいしか出来ません。
超絶無敵女子高生の看板は鯉口歌乃の特権だからね。


ぐきゅる〜

「あう〜、お腹空いた〜」

いきなり運動量が増えたので私のエネルギー残量が少ない。
早く夕飯を作らねばっ!
私は空腹を訴える身体に鞭を打って足を走らせた。
と、この痴漢はどうしようか?
今から警察とかに突き出すのも色々と時間を取られそうだし・・・
無視して帰宅、OKそれで行きましょう。もう会うことも無いだろうし。
無害無害、再び足に力を入れて一歩を踏み出す。

「・・・・・うぐ・・・・・し、白ぉ・・・・・」

ちょっとバック。男の様子を確認。
気絶はしているようだ。
じゃあ頭に入れるまえの映像をフラッシュバックしてやがるのか・・・・
男はどうしてこうもバカなんだろうかね。

「忘れろっ!!この野郎っ!!!」
「ぐふぇっ!」

蹴った感触、頭はお兄ちゃんよりも固い感じ。
うう・・・足が痛いじゃないのバカ。
足を抱えぴょんぴょん跳ねてるところ見られたら恥ずかしいぞ。
腹いせに靴の底で頭を転がす。ああ、私ってばなんてことを・・・・
ちょっと変な高揚感を感じないでもないがこれ以上続けるとそっちの方から帰ってこれなそうだ。
大人しく踵を返し私は夜の公園を後にした。


家に戻るとお兄ちゃんは居なかった。
たぶん私が帰るのが遅いから自主的に外食に行ったんだろう。
自分の分の夕飯だけをパパっと作り終え消化する。

そして私は今自分の部屋に戻って来たんだけど、やっぱり自分の部屋って落ち着く。
さっきの痴漢に襲われた時、私だってそれなりに怖いと言う感情はあった…
それからどことなく緊張感が続いていたけど
自分の部屋のありがたみみたいなのはこういう時に解かるんだな。

くるりと首を廻して部屋を眺めてみる。
ベッドにソファーにテレビに机に………

「オルガン……」

小さい頃は本当にそればっかりで遊んでたなぁ。
近寄って鍵盤に触れてみる。懐かしい……
このリードオルガンは元々歳の凄く離れている私の従姉妹が使っていたもの。
従姉妹の叔母さんがもう使わなくなったからって私が小さい頃にくれたんだっけ。
もちろん古い物なのでキズや汚れもたくさんある。
それでも私はこのオルガンを手放すことはしなかった。
部屋のインテリアみたいな感じになってしまったけれども…手入れだけはしっかりやっている。


「久しぶりに何か弾こうかな」

King of Instruments

オルガンは楽器の王様。
モーツァルトはこう書に記したことがある。私はピアノよりもこのオルガンの方が好き。
弾いてるだけで心が温まってくる感じがオルガンにはある。

「・・・・・・・・」

大切な物を扱うようにそっと座り両手を広げる。
指先に独特の高揚感が集まり私は鍵盤に指を躍らせた。 
優雅・・・・という単語はリードオルガンには似つかわしくないかな。
旋律を奏で指先を動かしていく内に心も躍ってくる。
私にとってオルガンはそういうものだったなぁと思い返し音を繋げていく。
白い平原と黒い丘。規則正しくならんだ鍵盤が上下を繰り返す。

私の大事な想い出もこのオルガンが思い出させてくれる。
嫌なことがあった時もこのオルガンが忘れさせてくれる。

「最近弾いてあげてなくてごめんね・・・」

曲が終り独り言。
違う、私はこの子に喋りかけたんだ。
ありがとう。心の中でそう思い私は椅子から立ち上がった。


「うーんブラボーブラボーっ」
「………っ!?」

パチパチと手を弾く音。部屋のドアの方を向けばそこにお兄ちゃんが居た。
うっわ……この男不法侵入、最低ー。
演奏に集中し過ぎたのか全くドアの開いた音に気付かなかった。
あるいはお兄ちゃんがサイレントにドアを開けるスキルを持っているか……
いや正常が売りな私のハズだから流石にドアの開閉には気付くはず。
私としては後者は信じたくないんだけどこの人なら普通に出来そうだ。

「うむ、久しぶりに小夜のオルガン聴いたな」
「盗み聞きでね」
「まま、良いじゃねーかよ、減るもんでもないし」
「とりあえず部屋の中に入るか出て行くかどっちかにしてくれる?そのままじゃ寒いよ」

悪いと良いながらドアを閉めお兄ちゃんは私の部屋の中に入る選択枝を選んだ。
ドアが音も立てずに閉まったところを見てこいつは間違いなくプロだと内心呟く。

「で、何か用なの?ご飯まだ食べてないとか?」
「いや、さっきワックでフィレオシュッシュ食ってきたから問題無し。
ただ、家に帰って来たら小夜の部屋からオルガンの音が聴こえたから着てみたのです」

ワックに行ったんならお土産にワックのストロベリーミルクを私に買ってこいよバカぁ!
くっそっ……飲みたくなった飲みたくなったっ!
お兄ちゃんがワックとか言うからなんか無償に飲みたいよストロベーリーミルクっ!

「ホレ、あんまり眉間にシワを寄せるなよ。欲しいのはコレだろ?」
「あ、あっあーーーーっ」

チラ  チラチラ  チラ

「ピンクの紙コップっ!」
「やるよ。久しぶりに小夜の1曲が聴けたからそのお代ってことで……
ってそんなにがっついて飲むなよ」
「苺大好きだもん」

お兄ちゃんの手からひったくるように紙コップを奪い舌鼓を打つ。
口の中に広がる甘酸っぱい味。
この適度に舌を刺激する味がちょっと疲れた身体に染み渡る。

ズズー

あっれ?もう無くなっちゃったの?
中身少なくない?それとも私の飲む勢いが激しかったせい?
あんまり後者は受け入れたくないのですが……
それとも今日の食品類い云々の価格高騰により減量とかそういうのかな?
チョコレートとかは減量とかしてるし。
ちょっと満足いかない顔でムスっとしてしまう。

「量が足りない……」
「あー、それ俺の飲みかけだったからな」
「ぶっーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
「おまっ、汚ねーよっ!!」
「なんって物を飲ませんのよーーーーーーっ!!」

信じられないっ!
この男のデリカシーの無さと言ったら……
手で中で遊んでいた紙コップをお兄ちゃんに向かって全力で放り投げる。
命中した紙コップの蓋が取れ小さな氷がお兄ちゃんにぶちまけられた。

「冷たいっ!凍死しちゃうよっ!!」
「しねーーーだろっ!」

紙コップ如きで満足なダメージはコイツには与えられない。
勿論蹴りで追撃をかける。

「DV?!これDV?!ストップストップっ!!何でミルクあげただけの
善良な一般お兄ちゃんが虐められてるの?!」
「いくら兄妹だからって飲みかけなんか飲ますからよっ!!」
「兄妹だからでしょ?!いっつっ!!ジャストモーメント!!」

最後に思いっきり蹴り上げるとお兄ちゃんは転がってドアにぶつかり止まった。
何が善良な一般お兄ちゃんだ。善良でも一般でも無いじゃないのよ。
うぬー、今日は厄日かっ!?厄日なのかっ!?

「く……小夜。お前が俺に暴行を加えるのは良い……だが最後に一言だけ言わせてくれ……」
「何よ……変なことだったら……」
「お前の弾くオルガン、やっぱり俺大好きだわ」
「え………」
「ガクンっ」
「ちょっとお兄ちゃんっ?!」
「………ぐごーーーーーっ」

ね、寝た?
確かにお兄ちゃんの異常なまでの寝付きの早さは小さい頃から知ってるけど……
こんなとこで寝るか普通。妹の部屋ですよ?

「おーい」

ペシペシと頬を叩いてもツンツン突いても起きる気配が無い。
全身の力が抜け落ちてだらりとドアに寄りかかり爆睡してますね。

「………つーか部屋から出られないんだけど」
「ぐごーーーーーーっ……サラダ。ぐごーーーーーーーっ」

サラダって何だ?どんな寝言だよ……?

「………仕方ない」

妙な監禁状態に陥った私は、起こすのは諦めて押入れにある毛布を引っ張り出す。
それをドアの前まで抱えてきてお兄ちゃんにかけてあげる。
いっつもいっつも非常識で人の事を考えてくれないけど……

私は再びオルガンに座り鍵盤を弾き始めた。
そんなに好きなら寝ている間くらい沢山聴かせてあげよう。
もう何回も私のオルガンは聴けるわけじゃ無いのだから……

私の口の中にはまだちょっと甘酸っぱい感じが残っていた。







読んでくれてありがとうございます。
今回は話しの展開を進展させようとしたけど中々上手く進まなかったかなぁ……
オマケな回になっちまった。

ささっといい加減このお話を終りにもって行きたいんですがなんとも(別に書くのが面倒だから終わらせたいとかそういうわけじゃないよ)。


鯉口歌乃2.JPG




らくがきなんですが誰を描くのか迷った。
キャラクターはもういないので後ろ回し蹴りしている小夜を描こうかなとも思ったけどもこの前も書いたので歌乃を描かせてもらいました。

なんだか歌乃は良くお話に出てきますねw
八重がかわいそうになってきました。
八重をメインに置いたお話も作りたいですがまた無駄に長くなりそうだ……



絵の構図おかしいなww
あっはは。
歌乃とかオマケに考えたキャラなもんだからあやふや〜。

ポニテが上手くかけないですよ。
汚い漢字は気にしない方向でどうぞ。

小夜の師匠歌乃。
別に師弟関係じゃないが……


ボン君様

あ、愛嬌が無いって言いたかったわけじゃないんだぜ?
あったよ愛嬌。もう愛されるくらいに……

影は適当にシュッシュすればおk。
というにはあんまりだから…
首のあたりの影からチャレンジしてみると良いかも知れないのですよ。
僕はそうでした

因みに僕の絵は参考にしない方が良いです。
言わなくても分かってると思いますがww




とりあえずもう寝ようっぜっ!
ちゃお
posted by 姫野 at 13:12| 群馬 ☔| Comment(2) | TrackBack(0) | へっぽこノベル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年03月31日

妹×兄 5話

俺のパソコンは案外と問題だらけでトラブルが多いんだが・・・
稀にインターネットが切断される。

復旧の方法はもう何回も切断されてるから馴れっこなんだけど今回は復旧が中々出来なくて焦った。

小説アップしようとしてアップ出来ないとかマジ勘弁だからな。
パソコンの周りの掃除もちゃんとやっておいた。

皆も自分のPCの掃除くらいちゃんとしような。





こんにちは夜月姫野です。

モンハン2Gを26日に購入してからずっとモンハンばっかりだったので小説大丈夫なのか?って感じだったのですがなんとかなったかなぁ・・・・・

ま、発売前に書いていたところがほとんどなんですけどねw

モンハンのプレイ時間が50時間突破。
もう100や200を余裕で越えてる人なんかいくらでも居るだろうけど俺にしてはこのプレイ時間は異常。

モンハン中毒ですね。
それにしても俺の稀胃石はどこに消えたんでしょうか?




あ、じゃあそれでは妹×兄の5話をお届けします。
リア友は見てくれないのでモニター越しの関係の遠い方に全力で贈る。







ふわりふわりと漂ってくる気分を穏やかにしてくれるような良い香り。
女である私でもクラっといっちまいそうな上品な香りです。
使っているのは柑橘系の香水だろうか?
キツくなく自然に私の嗅覚を刺激してくれる。

トポトポとポットからカップに注がれる紅茶からも
素人でもわかるよう上等な茶葉が出す品のある香りが立ち上る。

教室内で私の机の周りだけがまるで日常からくっきりと切り取られたかのような・・・・
そんな雰囲気を作り出すお嬢様、秋野可憐と昼食を頂く事になったわけでございますけれども・・・・


妹×兄


5×「ほんっとにそれだけ?」


コクリと湯気の立ち上るまだ暖かい紅茶を一口。
コトリとそのカップを手前に置くと彼女、秋野さんは私の目を見てきた。

清んだ蒼瞳に捕まえられたかの様に私の目は視線を放せなかい。
軟らかく、それでいて引き込まれるかのような感じで少しそれが人のものであるかを疑ってしまう。

「あの・・・・紅茶美味しそうですね。良い物なんですよね?」

突然の来訪者に対して何と喋りかければ良いのか分からず、
口を割って出たのは当たり障りの無いものだった。
会話センスが無いとかそんなこと言わないでよね、
私だってお嬢様を相手にして緊張してるんだから。

「いえ、スーパーの特売品ですから、普通の味だと思いますわ」

え、え〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!??
ちょっとちょっと!!
お嬢様なんでしょ?!それがスーパーの特売品の茶葉とかなの!?
て言うかさっき『上等な茶葉』とか思っちゃったよ私!

その発言に驚いたのはもちろん私だけでは無いようだ。
一緒にいた八重も歌乃もちょっと面を食っている。

「ふーむ・・・・・やはりみなさん驚かれますか?私が粗茶などを嗜むのは・・・」

その様子を一瞥して一言。

「お、驚かれますよっ」
「そうですか」

コクリとまたその紅茶を喉に通す。
その一つの動作が銀幕の向こうの映画を見ているかのような気にさせる。
茶葉が例え安物であろうと秋野さんの纏う気品は一級品で、人の感覚を狂わせるんだろうか?

「秋野さんってお嬢様なんだろ?それがなんでスーパーなんかで売ってる安物を飲んでるんだ?」

歌乃は素直な疑問を私達を代表するかの様に目の前のご令嬢に投げかける。
私のイメージでも紅茶の専門店とかの茶葉を使っている感じが強い。

「確かに私の家は普通のご家庭よりも裕福ですけれども、私自信は取り立てて贅沢などを
してみたいと思ったことはありませんわね。
むしろその様な生活を望めば周りの方々と離れていってしまうような気もして私は嫌ですわ」
「ほっえ〜〜〜なんかスゲーな秋野ちん・・・」
「秋野ちん?」

コロリと秋野さんがきょとんとした表情で頭を傾ける。

「あ、コイツは女なら誰彼構わず名前に『ちん』って付けたがるんだよ」
「そうですか、それはユニークな遊びですね」
「いや、遊びでは無いとは思うんですけどね・・・・」
「今度私もそう言った呼び方をしてみようかしら?」
「いや、それは止めておいた方が賢明ですっ。秋野さんの周りが間違いなく混乱するっ!」

本当に真剣そうに考えるのでこっちも全力で止めに入る。
秋野さんがそんなこと言い出したらそりゃ騒ぎになるってもんだ。
まぁ、もっとも今の時点で私達の中では騒ぎになってるわけですけれども・・・・

「そうですか・・・・少し残念ですわ」

今の今まで話しをしたことも無く遠くから見ているだけだったから気付かなかったが・・・・
この人は意外に天然なのか?!
私の中にあった高貴なお嬢様のイメージはボロボロと崩れつつある。

春の軟い風を受け彼女の銀嶺の髪がなびく。
なんというか庶民的なお嬢様だ。
纏った空気が人とは違うのは確かだけど、この人は庶民派なんだな・・・・と。

「秋野ちん、使っている香水も一般的なものだったりするの?」
「そうですね、自分の好きなものを使っているだけですから。
高いものではないですよ。もちろん安いものでもないですけれど」
「あ、あー・・・・・なんか親近感と言うか、遠かったイメージがちょっと近づいたわ」
「そう思っていただけると私もありがたいですわ」


で、でだよっ!!
ここで和みトークをしてハイさようならってワケじゃないですよね?
いったいぜんたいこのご令嬢は何故私を訪ねに着たのだろうかってコトですよ。
さっきの歌乃のお話からするとお兄ちゃんのことなんだろうとは思うけどさ・・・・
そこのトコ訊ねてみないと。

「秋野さん」
「はい」
「秋野さんはどうして私を訪ねに着たんですか?」
「・・・・・」
「・・・・・」
「あー、そうですそうです。私としたことがウッカリ忘れてました」

この人絶対天然だっ!!
そうに違いないっ!!
私の中にあるイメージは天然ボケキャラに完全合体変形してしまったよ。
いや、何と合体したのかは私にも分からないけどさ。
しかし間違いなく完全に当初の用事を忘れてました、ケロリって顔だったぞ今・・・・・

「朝樹君のことをお伺いしようと思ったんですよ。
ですけど小夜さん達とのお話が楽しくて忘れてましたわ」
「お兄ちゃんのことですか・・・・」

やっぱりそうだよね、あの変態のことだよね。
しっかし大人気だよねホント。

「こんなことを言うものお恥ずかしいのですけれども、私は朝樹君をお慕いしているのです。
けれど彼の好みとかそういうものですかね?そういったのを全く知らないので
妹さんである小夜さんを尋ねて色々とお話を聞ければと思って」
「うわ、スーパーストレートだね秋野ちん・・・・」
「お慕いって・・・・・なんか古風だなぁ」

なんという超直球。
今までお兄ちゃんに好意を持って私に近づく子って大概下心は隠して来るもんだったけど。
まぁ、さっきの会話で全くもって毒気なんか抜かれちゃったから気にもしないけどね。
だ・・・・け・・・・ど

「つかぬ事をお聞きしますが秋野さん・・・」
「はい、何でしょうか?」
「お兄ちゃんのことが気になったきっかけとか教えてもらえます?」
「きっかけ・・・ですか?」

こちとらタダで情報を露呈するのもつまらないので興味本位で聞いてみる。
そうよそうよ、何だかんだで私だって恋話の好きな女子高生なんですよ。

「・・・・・・ふーむ」

秋野さんが頭の中を引っ掻き回してきっかけを探しているようだ。
つーか探さないと出てこないの・・・・・かな?

「あ、ありましたっ♪」
「はい、それではどうぞっ」

八重とはまた違った感じで表情に出るタイプだなぁとお弁当のキンピラゴボウを突きながら思った。
八重がマイクを向けるようなジェスチャーで秋野さんの答えを待つ。

「去年朝樹君と同じクラスだった時なんですけど・・・・」
「ふんふん、それでそれでぇ?」
「私が授業中にうっかり赤いマーカーを机から転がり落としてしまいまして・・・・」
「あー、私は良くあるなそういう筆記用具を机から落とすっての」
「歌乃ちんは物の扱いが乱雑だからマーカーが逃げちゃうんだよ」
「うるせぇ」

歌乃が八重のほっぺをグリグリし始めた。
私にとっては見慣れた日常的な光景なのだが秋野さんはそうでもないようでオロオロしている。

「鯉口さん・・・・・っ?」
「ん?大丈夫、いつものスキンシップだから」
「いひゃぃ!!ひゃのひんのびゃかーっ!」

私は触ったこと無いけどあのほっぺはこね回され過ぎて実に軟らかい気がする。
いつか触ろう、そうしよう。

「それでそのマーカーがどうしたんですか?」

外野の二人を無視して話しの続きを訊ねる。
まだ二人のじゃれ合いを気にしながらも続きを話す。

「それをですね、丁度近くの席だった朝樹君がソレを拾ってくれたのです」
「おー、ついに朝樹君登場だね」
「あひゃひふんひゃひふー」


「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
「・・・・・・?」

な、何だこの沈黙?
お兄ちゃんが秋野さんのマーカー拾ってそれからどうなったんだ?

「えっと・・・・・以上です」

ちょっ・・・・話し短けええええええええぇぇぇぇぇ!?
なんかお兄ちゃんとは別の意味でこの子の頭が大丈夫なのか心配になってきた。

「ほんっとにそれだけ?」
「はい、その時の朝樹君がとてもステキだったのでついコロっと・・・・」

ステキって・・・・
どんだけかっこよくマーカー拾ったんだうちのお兄ちゃんは。
落し物拾っただけでこんなに可愛い女の子の心をGET出来るお兄ちゃんの
ポテンシャルの高さが何かムカツクなぁ・・・・・

二人も呆気に取られている。
うん、この子は私達が予想しているような子では全く無かったどころか、
途方もなく天晴れな子だ。
それでも学年トップの成績なんだよ・・・・ね?
世界ってのはおかしなもんです。
トど変態のお兄ちゃんが頭良かったり、
非の打ち所が無い(少なくても今までのイメージでは)秋野さんがホヤっとしてたり。

<ちょっとちょっとっ前情報とだいぶ違うじゃない>

私は小声で隣りの歌乃に話しかけた。
プライドが高いだのなんだのと歌乃に聞かされてたがそれとは全くと違い過ぎる。

<私だって驚いてんだよっ、それにそんなもんはただの噂話による情報だもんよ>
<どこの情報ソースなのよ?>
<でもココ最近朝樹君に積極的に話しかけてるのはホントだって。
残り1年で焦っているってとこは満更でもないと思う>

焦りとかこのご令嬢にはあるんだろうかね?
ふわふわしたような人なのでそういう単語とは無縁な感じがしてしまう。

「それにしても秋野さんって思ってたよりも随分と愉快な人なんだな・・・」

大好物の母親の卵焼きを一口に飲み込んだ後、歌乃がズバっとそんなことを言った。
もうちょっとオブラートに包んだようなソフトな言い方は無いのかよと。

「そうですか?話していて面白いと思っていただければ私としても幸いです」

秋野さんも秋野さんだし・・・・
まぁ話していて楽しいってのは頷けるけど。

「お兄ちゃんの好みねぇ・・・・・」
「あ、そっちが本題でしたね」
「また忘れたか秋野ちん」
「マグロとかイクラとか焼きサンマとかかな」
「何で魚ばっかなんだよ・・・・」
「朝貴君お魚好きなんですか?」
「魚君をライバル視したような人間だからね」

お兄ちゃんは魚が好きなのはホント。
魚というか魚介類はほとんど好みなんじゃないかと。
ウニは嫌いらしいけど・・・・

前に「ウニなんてお前馬糞ウニとか言う名前のがあるんだぞっ!!
馬糞なんだぞ!!馬糞!!そんな馬糞なんか食えるかっ!!」
と声を大にして廊下の壁に向かって怒声を放っていたことがあるけど間違いなく
シナプスがやられてると思った。

馬糞ウニはウニであって馬糞ではないでしょうに・・・・

「あ、食べ物の好みより他のが知りたいですよね?」
「お話していただけることは何でもかまいませんよ。こうして皆さんと会話すること自体が楽しいですし」

それは光栄ですな。
まさかパンピー3人組がお嬢様を楽しませる会話が出来るとはいったい誰が予想できただろうか・・・・
まぁ常識外のお嬢様だったわけなんだけれでも。

「あぁ見えて意外に心霊現象等のオカルトが好きでしてね。それで・・・・・」


結局私と八重と歌乃に秋野さんを交えて4人でお兄ちゃんのあれこれと
お昼休みを使って話しは続いた。

知らなかった秋野さんの一面どころか2面、3面と見れたりしたのは私も楽しかった。
でも・・・・・・

お兄ちゃんは1年後に東京に行ってしまう。
この事は言えなかった・・・・・・










読んでくれてありがとうです。

今回はいつもよりもちょっと短いですね。
ソレと言うのも俺のスケジュール管理の問題とかも絡むんですけど・・・・

ほんとはこれにちょっと付け足したお話があったんですけど時間的な都合とか技術的な問題とかで見送りました。


で、物語も中盤くらいなハズなんだけどまるで先の展開もわかったもんじゃないなwww


さて、そろそろ絵も貼らないと読んでない人も楽しませられないので・・・・


秋野可憐.JPG

描き上げたのは今日ですけど実際には98%くらい2週間前くらいに描けてた。

細かい部分を後でやろうとして今日になって結局面倒になってテキトーにスイスイやって終わり。

良いじゃんアマでこれで食ってるわけじゃないんだからさ・・・・・
でも描いてる時は一生懸命なんですよ。

銀髪のお嬢様。
最初の「いえ、スーパーの特売品〜」でいきなりキャラクターが暴走。
あの台詞がパッと頭に出て完全にぶっ壊れた。

それまで俺の中では「キンパツとかツインテールとかできつめ、強気なお嬢様」だったんだけど暴走して「天然系おっとりやわらかお嬢様」になってしまった。


今回の暴走は酷かった・・・・・



んでこの絵なんだけどちょっと表情を慌てた感じにしてみた。
お嬢様が「およよ」ってしてるとこってなんかクルよね?
すっげクル。

まぁ問題はこの絵がお嬢様に見えないとこなんだがな・・・・・


やろうやろうと思ってた反転絵

秋野可憐kuro.JPG



うん、別に面白くもなかったね・・・・
posted by 姫野 at 12:55| 群馬 ☔| Comment(3) | TrackBack(1) | へっぽこノベル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年03月03日

妹×兄 4話

昨日は11時くらいに死にそうなほど眠くなった。
むどーとモンハンしてたんだけどディアブロス狩れなくてゴメンね。

前シカに「姫野は眠いとき物凄く眠そうな顔するよな」って言われたけど昨日は正にソレの境地だった・・・・

今度ディアブロ狩りなおしましょう。


で、保守しようとケータイ弄ってたんだけど手前で轟沈。
本当に眠かった・・・・




そんなこんなで妹×兄の4話をお届けです。
今回はコメディーを前面に出したので読みやすいかなと・・・・

それではどうぞ。
感想や誤字脱字など指摘してくれー。





今日は一般庶民の休日、日曜日である。
いつもは遅くまで働いている私の両親だけど今日は二人ともお休み。

「たまには家族で焼肉でも行くか?」

と言うお父さんの一言で奮起したお兄ちゃんが

「マジでっ?!タン塩祭りぃぃぃっ!」

と叫び。フローリングに掃除機をかけていたお母さんがそれを聞いて

「野菜もちゃんと食べなさいよ朝樹・・・」親父誕生日

と微笑んだ。

円満な家庭だなと思う。
その中に居る私は幸せなのだとも・・・

そんな家族4人の時間がずっとずっと続いて行くんじゃないのかと、漠然とだけどそう思ってた。
でもそれはもうちょっと後にはたぶん終わってしまうわけで・・・

ちょっと違うかな?
『変わる』っていう方が正しいのかも。
でもどっちにしても続いていくと思っていた今はきっと続かない・・・・


妹×兄


4×「この阿呆〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!」




そんな訳で今私は家族で焼肉屋の『JOJO園』に居るんだけど・・・・

「・・・・・」
「・・・・・」

網の上にはカルビが一切れ美味しそうな音を立て肉汁を滴らせている。
ジュウジュウと耳に聴こえてくる音は
私の脳みそを野生にさせる何かがあるんじゃないだろうか?
もし私が獣だったら間違いなく眼光を光らせてヨダレを際限なく溢していただろう。
わが身が人であることに感謝です。

さて、問題なのはそれが最後の一切れだと言う事だ。

お父さんはビールで締めをしているし、お母さんはもう満足といった感じで座っている。
そうなると最後に残るのは我が兄、いや、宿敵っ!城戸朝樹なわけで・・・・・

「・・・・・」
「・・・・・」

お互い右手に箸を持ち、肉が美味しく焼きあがる完璧のタイミングを見計らっている。
今か、今かと待ち望む期待と肉を争うという緊張感・・・
ヤバイ・・・ちょっと手に汗が出てきたではありませんかっ!?

ジュウジュウ・・・

1秒が長く感じられる。
そして・・・・

立ち上る鼻を惑わせる匂いを孕んだ煙が微妙に揺れ、網の上の肉から1滴の雫が垂れた瞬間っ!


「つえぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「えぃぇぇぇぇぇぇぇ!!」









「お客様、こちらの空いてるお皿の方をお下げしても宜しいでしょうか?」
「え?あ、はい・・・・」

好機!!好機なり城戸朝樹!!
その肉ぅ!!私が頂いたーーーーーっ!!

「えいっ♪」
「ぐぇっ!!??」

勝利!!大勝利!!
この戦、我が軍の勝ちでございますっ!!
軍旗を掲げろ〜〜〜!今宵は祝杯じゃ〜〜〜〜!

繰り広げ荒れる脳内パレード。
目の前でしくじったと悔しそうに割り箸を噛むお兄ちゃん。
兄よ・・・・悲しいけどこれは戦いなのです・・・・
慈悲もなにもあったものじゃないの、許してチョンマゲ♪

ふふ、いつにも増してハイで悦るのもここまでにして、
私はその美味しく焼きあがったお肉を口に運ぶ。




・・・・・・・・・





ガジっ


「っ!?」

噛んだ瞬間から口に広がるジューシーな味わい・・・・
とは、だいぶかけ離れたかさついた硬い感触、無味無臭。

な、なんだこれわ〜〜〜〜・・・

目の前には美味しそうにお肉を食べる私じゃない「私」が居た。
噛み付いたのは肉汁を滴らせるはずがないただの割り箸。
全てを理解した瞬間・・・私はテーブルに突っ伏した。

まさかのまさかじゃないのよ〜っ。
このタイミングでお兄ちゃんと身体が入れ変わるなんて最低過ぎるぅ!
こんなのってないよ〜・・・・



「美味しかったね♪」
夕食を食べた帰りの道、私じゃない私がニコニコしながらそう話しかけてくる。
「いや、やっぱあそこのネギタン塩が1番ビールに合うな」
4人の中で腑に落ちない表情は私だけだろう・・・

ムラムラした気持ちでてくてくと歩いているとあっという間に家の前について
お母さんが家のカギを開けゾロゾロと玄関から4人共家の中にと流れ込む。
私は真っ先にキッチン横にある冷蔵庫へと足を進めた。
冷蔵庫の扉を開けてお目当ての物を確認。
それを掴み取ると思わずニヤリと笑みがこぼれた。

手に取ったものにはこう記載されている。

「おいすぃ〜牛乳」

ふふ、ふふふ・・・
紙のパックを破り開け、中を覗き込むと真珠の用に煌いているかのような
まっさらな牛乳が揺れていた。

私は腰に右手を当て、パックを持った左手を高く掲げ・・・・・一気に口内へとそれを流し込む。
舌に触り食堂を通り胃の中へとツンと冷える牛乳が流れていく。

ゴクゴクとその勢いは止まることなく。
私の身体じゃこんな無理は出来ない。
お兄ちゃんのこの身体だからこその芸当だ・・・・・そして。

「ぷっはぁ」

パックの中身を空にする。
ふふ・・・・ふふふ・・・・
ニヤニヤが止まらない。

後はパックを水で洗ってキッチンの適当な場所で干しておく。
エコライフって重要なのよ?
皆も何か自分に出来る事を見つけてみようね♪

なんて思ってる内に頭がぼんやりしてきた。
これはお兄ちゃんと入れ変わった身体が元に戻る感じだ。
ふふ・・・・ふふふ・・・・地獄を見ろ城戸朝樹!



視界が回復すると視線は先ほどより下がり身体も身軽・・・うん、私の身体だ。
自分の身体に戻れる時はすごく安心する。
もしも、本当にもしもだけどあのまま入れ変わったまま戻らないなんてことになったら
どうしたら良いのかわからない。
私はお兄ちゃんじゃないからお兄ちゃんとして生きてはいけないし、そう生きていきたくもない。
私は、私。やっぱりこの身体が一番だよね。

さて、私の仕掛けたあのトラップだけど・・・
発動にしばし時間がかかるのが問題だよね。
ここは一つ早期解決のために起爆させに行かないといけないと思うんだ。

身体が入れ変わる前のお兄ちゃんの場所に小走りで向かう。
その歩みは途中で全力ダッシュに変わった。
何でかって?
ブラのホックが外れてんのに気付いたんだよっ!!
あの野郎いったい何やりやがったんだっぁぁぁぁぁぁ!!!

1階の廊下にてお兄ちゃんを補足。
フローリングを蹴り出す速度が増し距離を一気に詰める。

「小夜っ!?」
「この阿呆〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!」

ダッシュによる慣性を使い全身の体重をとび蹴りに乗せる。
空を切り裂き稲光のごとく走る私の脚線がお腹に目掛けて見事に的中。

「ごふぉっ!!」

倒れこんだお兄ちゃんにそのままストンピングの制裁を加える。
今日はスカートじゃないから遠慮はしねーーーーーーっ!!

「な、ん、で・・・・ブラのホックが外れてんだぁーーーっ!!」
「げぼふぉっ!!小夜死ぬっ!!お兄ちゃん死んでしまうっ!!」
「死んでしまえーーーーーーーーーーーー!!」

当初の予定よりもかなりの割り増しだけど良いよね?
日頃の恨み辛みはここで一気に吐き出させてもらいましょうかっ。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


ことの末、いくら踏みつけても結局ホックは
悪戯で外しただけで見てません見てませんとしか言わないので
最後に蹴りを頭に入れてその場にお兄ちゃんらしい人型は転がしておいた。

うーん、久しぶりに思いっきり運動したから気分が良いわぁ。
やっぱり食べすぎたかも知れない時は運動よね、運動。

・・・・あれ?
ホックのことで頭がいっぱいだったけど何か他にもあったような・・・・・
ま、良いか。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「さ、小夜のやつ・・・・マジ容赦ねぇ・・・・」

妹によるバイオレンス遊戯まったり3時間(主観的誇張が混じっております)コースを
味わって家の廊下に転がってるわけなんだが・・・・フローリングの硬い床が冷たい。

「ん?なんかお腹の調子が・・・・はぅっ!!」

ゴキュルルルルルっ

な、なんだ?!
これは・・・・・この胃の激しい訴えはっ!?

「ぬっふぉっ!!アカンっ!!とととっ・・・・トイレ!!」

食いすぎかっ!?
いやいやそんなことは無い。
いつもの俺だったらあのくらいは普通だ。じゃあなんでだ?
とにかくそんなことはどうでもいい!!早くトイレにっ!

「ふぬぉぉぉぉぉぉ!!」

残るエネルギーを使いトイレに向かう。

「ぬ?・・・・なんだこれは?」

トイレに向かう途中にある洗面所の鏡。
その鏡に映った自分の口の周り、綺麗に牛乳ヒゲらしきものが出来ているのを確認した。
手で拭い舐め取る。うむ、牛乳だ。
この時俺は全てを把握。

「小夜のやつ・・・・やるようになったなっ!!・・・・・・・あっひゃっーーー!!も、漏れる!!」

ガチャガチャ!!

あ・・・・開かないっ!!

「おう、入ってるぞ」
「親父っ!!親父ぃ助けてっ!!」
「このページもう少しで終わるから待て」

ゆ、夕刊読んでいらっしゃる〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!?


・・・・・あ、


あふ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!






月曜日。
私は月曜日がそんなに嫌いじゃない。
休日の後ってある程度リラックス出来てるから勉強も楽に出来る気がするから。
確かに日曜は明日から学校って思うと嫌になっちゃうんだけど実際登校してみるとなんだが身体が軽いのよね。

で、サクサクと授業をこなしひと時の休息、昼休みにいつもの3人でランチなどをつついているわけですが・・・・・

「お、そうだそうだ・・・・生徒会長の秋野可憐(あきの かれん)。とうとう動き出したらしいよ」
「何よ動き出したって?」
「何って朝樹君だよ朝樹君。今まではアピール無しだったのに最近妙にアピッてんだよね」
「つまり・・・・・っ!!秋野さんがお兄ちゃんを落としにかかったってことっ!?」
「うっひゃーーーそりゃおもしろそうだねん♪」

この学校には容姿端麗成績優秀な城戸朝樹と言う男が居る。
その妹の私は容姿割かし良いほう成績割と良いほうの城戸小夜という女ではあるが・・・
お兄ちゃんと対を成す学校のアイドル的存在となるのにはちょっと足りない。
まぁ、そんなものになる気は更々無いし遠慮したいとこなんだけど・・・・

だけど私ではなく居るんだ。
この学校には城戸朝樹に匹敵する容姿端麗成績優秀なアイドルが・・・
秋野可憐。
正真正銘のお嬢様で生徒会長にして学園のアイドル。

そんな二人が居たら誰だって一度は「二人がカップルになったら・・・」とか思うでしょ?

「今まで秋野ちん大人しかったのにねー」
「あれだろ、今まではプライドが高いっていうか待ってる感じだったけど
 全く朝樹君が動かないまま高校最後の一年になって焦ってんじゃねーの?」
「そっかそっか・・・・」
「お兄ちゃんと秋野さんが・・・・」

秋野さん・・・・
お兄ちゃんは1年後ここから居なくなるんだよ。
結局無駄になっちゃうと思うんだけどな・・・・

「しっかし朝樹君も朝樹君だよね。あんなにモテるのに彼女全然作らないじゃん」
「そーだよな、女と遊ぶ割には彼女ってやつはいねーよな。そこのトコどうなの妹?」
「えー、お兄ちゃんデートは行くけど家に女の子連れてきたこととか無いしなー・・・・
 でもあっちの気ではないことは私が保証する」

本当に何考えてんだかお兄ちゃん。

あの変態っぷりをみんな知らないからキャーキャー喚きやがるんだ。
一度アレの本性を見れば良い。
うん?アレがあるから彼女出来ないのかな?
いや、そうなら朝樹変態説の噂の一つも登っても良いはず・・・・・


「城戸さんは居らっしゃるかしら?」
「え?」

教室の扉の方から名前を呼ばれた。
振り向き見ればそこに立っていたのは・・・・

「あ、城戸さん。宜しかったら私も昼食に混ぜてもらえないかしら?」
「え゛っ!?あ、あー・・・・っ」
「良いんじゃねーか?」
「さっきの話しも気になるしね♪」
「えっと・・・・どうぞ」
「失礼しますわ」

サラサラの髪、必要以上に無い綺麗な肉付き、常人からかけ離れた栄える顔立ち・・・
噂をすればなんとやら。
秋野可憐がそこに居た。





今回は完全にキャラクターが暴走した
お話書いてる人はわかると思うんだけど最初に書こうとしたものよりも全然違うんだよね。キャラクターがかってにお話を作って行っちゃう現象。

話しの修正とかで大変だけどこれもお話を書いている楽しみの一つだったり。
新キャラの秋野可憐参加で物語は折り返し地点です。

ショートストーリーとか良いながら意外に長い・・・・
3話くらいで終わるんじゃね?とか思ってたんだけどなwww





城戸朝樹.JPG



小夜の兄の朝樹お兄ちゃん

変態らしさを出すためにキツネ目にしようとも思ったんだけどそんあ技術力は足りなく断念。

イケメン?
これで学校のアイドルだぜ?

カッコイイ男の子が描きたいです。
しかし男描いたの久しぶりだな〜・・・

1年くらい描いてませんよ。


小学校の頃は女の子描くのがなんか恥ずかしくてずっと男の子描いていたのに今じゃ女の子ばっかだぜ・・・・
posted by 姫野 at 13:24| 群馬 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | へっぽこノベル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年02月18日

妹×兄 3話

朝起きたら8時半。
9時から会社で健康診断・・・・

久しぶりに寝坊しました。
朝ごはん抜きックスで採血とか起っちまうよ。
慎重は175、体重は57くらい。
遅れたので順番が最後で終わったのが10時ちょっと前。

そっからガソリン入れるのに桐生方面に移動中ゲーム屋によったら高校の時の親友のアイツがいた。

ほらν(ニュー)だよν。

姫野「ニューニュー!!」

ν「ば、姫野っ!!」

店舗前の駐車上でνが出てくるとこで会った。
すかさず店内に逃げる俺、追ってくるν。

懐かしいぜこの感覚・・・・
学校の昼休みにコイツの買ったスパイシーポテトを強奪して逃げたもんだ。

ν

νガンダムのνである。
高校の最初に同じクラスで隣りになってペンケースにνガンダムのガチャ王的なキーホルダーが付いていたので俺がつけた仇名。
俺の中学の友達(シカとむどー他)の間でもνと浸透したのでνです。
大決定です。

俺は仇名付け魔人なんですよ。実のところ・・・・

GWを始めるきっかけでもあったなコイツ。


今日は大学休みらしいけど明日から就職活動なんだって。
セブンのバイトは先週の月曜日に辞めたって。

ν「最近友達が恋しいんだよ」

姫野「・・・・」

ν「バイトの友達くらいしか遊ばないからさ」

姫野「大丈夫かお前www」


遊べれば良いんだがコイツモンハンの面白さがワカランとか言うから一緒に狩りいけないじゃん↓

そこで小一時間お話したので小説の最終チェックと絵が大変遅くなったwww

パソコン買ったらしいです。
まだネットには繋いでないらしいんですけどね。

コイツの進めでラパンSS乗ってるんだけど実際に俺のラパン見たのは始めてで舐めまわされたwww


やっぱりνと話すと「ばっかっ」とか「ちっげーよっ」とかそんな楽しい会話になるから好きです。

連絡くれれば遊ぶぜ?って言ったら


ν「姫野の家で何すれば良いかわらんねーもん。姫野を弄るか姫野で遊ぶしか考えられん」


なんだコイツwww
νは俺を弄れる器を持ってるからな・・・
強敵だぜ。





で、本当に大変お待たせいたしました。
妹×兄 3話をお届けでゴザイマス。

は?待ってない?
泣くぞっ!!

今回は話しの中間ちょっと前あたり(だと思う・・・)でラストは考えてあるんだけど中間を考えてない俺は悩みまくりで書いた。

進行ストーリーが2種類あってどっちにするかーとかさ。
前の小説でもそんな感じだったし俺分岐好きだなwww


ではどうぞ。
今回も感想、苦情などあると嬉しいです。



♪〜♪〜〜〜♪

「さよはピアノひくのじょうずだね」

「ちがうよおにいちゃん、これはオルガンっていうんだよ〜」

「そうなのか?まぁどっちでもいいや」

「それより、つぎはなにをひこうかな?」

「さよのオルガンはすきだからなんでもいいよ」

「ほんとっ♪」

「うんっ」

「じゃあ、おにいちゃんはさよと、さよのひくオルガンどっちがすき?」

「うーん・・・・」



妹×兄


2×「ぬおぉーっ!!」


視界が写す光景が授業を受ける生徒と、教壇で教科書を読み上げる教師だった。
それはさっきとまで見ていたのとは変わらない。
ただ授業内容は先ほどまで受けていたものとは全く違ったものだった。
そう、ここはお兄ちゃんの教室なのだ。

やっぱり授業中にお兄ちゃんと身体が入れ変わったみたい。
教科は数学ではなく日本史。
うへー日本史とか苦手ー・・・・

でも親にお金払ってもらって高校の授業を受けてるわけだから
文句言うわけにもいかない。
お兄ちゃんの机に視線を落としシャープペンシルを手に取る。

お兄ちゃんと授業中に身体が入れ変わるのはこれが始めてじゃない。
今まで何回かあった事だ。
その度にお互いの授業内容を少しでも良いから覚えてノートに書く。
家に帰って互いにノートだけじゃ解からない部分を教えあうのが今のとこ私達のルール。

お兄ちゃんは勉強に関してはマジメだからなー。
ちゃんとやっておかないと・・・・うわっ・・・・
相変わらずノートにびっしり文字が・・・
これ黒板に書かれた事以外の内容も沢山あるんだろうなー。

いきなり授業内容が変わるのはかなり違和感あるし
これって他の人に比べたらかなりややこしくてハンデあるよね。

実は私達兄妹の身体の入れ変わりはちょっとした条件がある・・・・
と言っても今までの経験上でこんなもんだろうと定めただけで
正しいのかは解からないけど・・・

まず私とお兄ちゃんが互いに遠い場所に居ると入れ変わらない。
入れ変わるエリアの半径は1キロかもう少し短いくらいかな。
例えば私が家にいてお兄ちゃんが街に居たときに入れ変わるってことはまず無いわね。

それと起きている時にしか入れ変わらない。
どっちか片方が寝ている時にこの現象が起きた事は今まで無い。

最後に入れ変わる時間は長くても数十分くらいってこと。
最高で4、50分くらいだったかな?
何時間も入れ変わったままってことは経験ないね。

とりあえずこんな感じ。
あくまで経験上で勝手に私が条件付けただけだから例外もあるかも知れない・・・
けど、私が寝ている時に入れ変わったり、お兄ちゃんとの距離がメチャクチャ離れている時に
入れ変わったりなんかしたらそれはもう最悪な事になる気がする・・・


なんて思いながらもしっかりノートを取っていく。
途中で隣りに座っている私の友達の歌乃の方を見てみた。
歌乃はお兄ちゃんと同じクラスなんだ。

「・・・・・むにゃむにゃ」

ね、寝てる・・・・大丈夫なのかなE大経済学部・・・・

この寝てる歌乃とは中学校からの友達。
クラスが同じになって仲良くなった・・・・と言うのとは違うんだよね。

私に近づいてくる女の子は中々の割合でお兄ちゃん絡みだったりする。
思春期だからなのかなー、恋愛とかそういうの意識してるんでしょうかね?
お兄ちゃんの妹だから仲良くなっておけば、とか・・・
後は妹だからってお兄ちゃんと一緒居れるのがムカツク、とか・・・

そんなくだらない理由が多い。
まぁ中には普通に友達として私と一緒に居てくれる人もちゃんと居るよ。
まぁ、そういうくだらない人もけっこう居るってこと。

1回だけ私はその「妹だからってお兄ちゃんと一緒居れるのがムカツク」な連中に
酷いことをされたことがある。
適当な理由で校舎外れの女子トイレに呼び出されて複数人に殴られた。

うん、本当にあれは酷いと今でも思う。
物凄く痛かった。
私は別段強くも無いので何人も相手に抵抗は出来ない。
だから心の中で悪態を付くことしか出来なかったんだ。

その時だ・・・歌乃がやってきたのは。
勿論トイレを訪れたのは本当に偶然なんだけど・・・

歌乃は私と私を殴っている連中を見ると有無を言わさず私以外、
その場に居た全員のみぞおちに一瞬で拳を突き入れて失神させてしまった。

失神した彼女達には悪いけど見ていて心が奪われた。
まぁ自業自得よね・・・・
とにかく歌乃の動作に何一つ無駄がなくて
流れるように正確に拳を打ち出していく姿はとても綺麗だったのだ。


大丈夫かお前・・・・?

歌乃に話しかけられた最初の言葉がそれだった。
それをきっかけに私は歌乃話すようになって仲良くなって・・・
一緒に居てくれるようになったんだ。

ああ見えても歌乃は正義の人なんだ。
悪を許さず。みたいな・・・・
八重に横暴を働くこともしばしばあるけどさ。
家が道場を開いていて歌乃も「ちょっとかじっただけだよ」
と言うけど普通の男子よりも間違いなく強くてと頼りにもなる。

おかげでそれからと言うもの、そういう類の連中は私に手を出さなくなった。
それまで話したこともない歌乃と沢山喋る様になったし、一緒に休日を過ごしたり。
そうして歌乃は私にとって恩人でもあるけど一緒に居て楽しい友達にもなっていったんだよね。


で、この私の掛け替えの無い友人だが、起こしたほうが良いんだろうか?
ものすっごい爆睡してるけど・・・

「歌乃ちゃん、歌乃ちゃん・・・」

起こそう。うん。起こそう。
それにしてもお兄ちゃんの身体で歌乃を起こすことになるとはね。
いつものように喋れないって言うのもメンドクサイよなぁ・・・

「ん・・・・んぁ?あ、私寝てた・・・」
「うん」
「んーーーっ、起こしてくれてありがとう朝樹君。ふわぁ・・・」

うーん、私と喋る時とは違ってなんかこういう新鮮なのは良いかも・・・・
私の知らない歌乃の一面見れたのはちょっと収穫だよね。
あ、私そっちの気じゃないんだけどね。

「朝樹君、次の休み時間ノート写させてね♪」
「あ、うん。」

あー、確かにあの先生たくさん書くから黒板消しで文字の大崩壊が数回起きるからなー。
しかし、早く終われーーーー日本史ーーー!!




夕方。
今日身体が入れ変わって受けた授業の部分をお兄ちゃんと一緒に勉強する。
その為に私はお兄ちゃんの部屋へと筆記用具やらノートやら教科書やらを持って移動開始。

コンコンとノックを2回。
すぐにお兄ちゃんがドアを開いてくれたので部屋の中に入る。

変態なお兄ちゃんだけどこの部屋は割と普通だ。
変なポスターが貼り付けられているわけでもないし、
おかしな人形とかが飾ってあったりもしない。
普通の学術書が並んだ机や流行り、そして廃っていった音楽CDなど。
鉄アレイとかあるけど男の子ならこれも普通なのかな?
あ、でも部屋の角に放置してあるロデオボーイは普通じゃないと思う・・・

昔アレに跨って「いけぇぇぇぇぇ!!俺のペガサスー!!」
とか叫んでるとこを見たことがあるけど間違いなく頭がやられてるなと思った。

私はこの部屋に入るときにいつも座っている座布団に腰を下ろし勉強道具をテーブルに広げる。
1回この座布団の下にブーブークッションをセットされてキレかかったもんだが
今では座る前に足で踏んで確認しているのでそんなことももう無い。



「よし、それじゃあ早速始めようか」
「うん」

もう1回言うけどお兄ちゃんは勉強はマジメだからこの時は一切変態の片鱗を見せない。
私とはしては安心できるけど、それもそれでなんだかいつものお兄ちゃんじゃないのでやりにくいというか・・・・
べ、別に変なことされるのを期待してるわけじゃないんだけどさ・・・・

「さっき小夜が書いてくれたノートの部分を見てたんだがこの部分、先生がどんな感じに教えてくれてた?」
「あ、そこはねー・・・・」

お兄ちゃんと一緒に勉強する時間は嫌いじゃない。
お兄ちゃんは頭が良いから解からない部分とかもキチンと丁寧に教えてくれるしものすごく頼りになる。

「オッケ、今日の授業の部分はだいたい把握できたよ」
「あ、うん」

私はまだ把握できてないー・・・
やっぱり飲み込み早いなこの人ー!

「おっし、それじゃあ小夜の数学キチっと教えるからな」
「うん、ありがとう」

あー、双子だと言うのに離れた成績がホントに悔しいわ。
悔しいけど頼りになるお兄ちゃんはやっぱりカッコイイなー。
そりゃ変態だけどさ、普通にしてくれる分には
私にとってもカッコイイ素敵なお兄ちゃんなんだよこの人。

「小夜の取ってくれたノートは見やすくていつも助かるよ」
「え、普通だよ」
「いやいや、俺複雑に記入し過ぎて自分でも判らなくなるから
要点まとまってて見やすいよお前の書いてくれた部分。ありがとうな」

なんて言いながら私の頭を優しく撫でてくれる。

ぬおぉーっ!!
ヤメローっ!!
ちょっと萌えるぢゃないかよーぅ!!

今日の夕飯のおかず1品多く作ってやるよコノヤロー!

あ、そうだ。お兄ちゃんにも聞いておこうかな……



「ねぇねぇ、お兄ちゃん」
「何だ?」
「お兄ちゃんって進学とかどこの大学にするの?」
「ふーーむ・・・・」

頭の良いこの人のことだ、進学しないわけがない。
問題はどこなのかだ。
まぁ普通に良い大学なんだろうけどさ。

「俺、上京しようと思ってるんだ」
「へ?」
「東京だよ、東京。あっちのK大学に行ってみようかなって。適当に部屋借りてさ」

な、なんとっ!!
県外とはっ!?

あー、これは全く思っても見なかったわ・・・
いや、お兄ちゃんくらいなら普通にある選択枝だよね。
しかしよりにもよって東京かぁ。

「それってその後も東京で暮らすってこと・・・・だよね?」
「たぶんなー、あっちで就職したいって思ってたし」
「・・・・」

な、なんだこの寂しい気持ちは・・・
確かに東京に行かれたら簡単に会えなくなるけど・・・
それでもそんな事は世間様でもそこそこあることだろうに・・・

「あ、小夜寂しいのか?大丈夫だってちゃんと節目節目で帰ってくるからさ」
「ほぇ?・・・っ違うよ!別に寂しくなんかないってばっ!」
「落ち着け落ち着け」

くー、なんだか恥ずかしいなぁ・・・
しかしいつも一緒だったお兄ちゃんと離れ離れかぁ。
なんだか違和感って言うか不安って言うか・・・

「後はさ、俺たちの身体のこともあるだろ?」
「あ・・・・うん」
「離れてれば入れ変わらないんだからさ、俺がどっか遠いとこに行った方が良いんだよ」

上京したらもう会わない。
そんな事を言われた気がした・・・・
もちろん違うんだけどなんかショックだ私。

でもお兄ちゃんってば私達の身体のことちゃんと考えててくれたんだ・・・
いつもバカみたいにこの異常を楽しんでるけどちゃんと私の事も考えててくれたんだ・・・
そこはちょっと嬉しいかな。


もう今日の夕飯のおかず更に1品多く作ってやるよコノヤロー!


「さて、そろそろ終わりにしようぜ。俺腹減ったよ」
「うん、今日は勉強見てくれてありがとうねお兄ちゃん」
「そりゃお互い様だろ。ノートサンキュな。
あとまだ解からない部分あったら遠慮しないで俺のとこ来いよ」
「うん、それじゃあ私ご飯の用意するから・・・」
「おーぅ、頼むな」


お兄ちゃんは上京・・・・か・・・・
まだまだ1年先のお話だけど、ここから居なくなっちゃうんだよね・・・

ま、深く考えてもしょうがない。
今はお兄ちゃんのために美味しい夕飯を作ってあげよう。




いや、書いてて大変だった(主にモンハン的な意味で)。
1話250〜300行くらいを目指して書いてるんですけど180行あたりで苦悩。

出すものが無いって感じになって死にそうになった。
俺のボキャ貧どーにかしたい。

今回の話しはあんまりコメディー部分が少ないから大変だったんだよきっとwww!!


鯉口歌乃.JPG

鯉口歌乃です。
3人組みの中の頂点に立つ女番長歌乃です。

もちろん嘘です。

普段は色々と関心なさそうにボケーっとしてる感じの子なんですけど。
武道派な子でもあるのでキリっとしか感じで書いたがたまに描く正面描きと相まって毛色の違うものに・・・・・

髪型は解かり難いけどポニーテールです。
色は特に決めてないから・・・・・赤で良いやwww(適当)


武道派娘にポニーはなんか俺の中で自動的にそうなる仕様。
ゆるせっ!!

posted by 姫野 at 13:00| 群馬 ☁| Comment(2) | TrackBack(0) | へっぽこノベル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年02月04日

妹×兄 2話

寒いなー。
手が悴んでるから打ち込むの大変でしゅた。


1話を見てない方はこちらからどうぞ。

一応ちょっと修正しました。
4桁は流石にありえないよねーww
500件にしたわ。

誤字脱字や感想などあれば今回も姫野さんがタミフルになります。

で、なんで今俺コードギアス見てるの?
やっぱり何回見ても面白いな・・・




それではどうぞ。




コンコン・・・

私だけの聖域。
私だけのエデン。
その入り口の扉が叩かれる。

学校から帰宅してから部屋でぼんやりと本を見ていたわけだけど……
私の両親はこの時間にはまだ帰ってこないから十中八九どころか全弾命中で
ドアをノックしたのはお兄ちゃんだ。
うーん、夕飯の用意にはまだ早い気もするけどもうお腹でも空いたのかな?

腰を落ち着かせていたベッドから立ち上がり部屋のドアノブを引いてドアを開ける。

「ん・・・?」

誰も居ない。
開けるのが遅かったから帰っちゃったのかな?
それにしても声くらいかけてくれても良いと思うんだけど。

「ふふ・・・ピンクか」
「っ!!!!」

脊髄反射的に私はスカートを抑えながらその場に素早く座り込む。
見つけたっ!!
目の前でお兄ちゃんが床に仰向けで転がっている。
お尻に感じるフローリングの硬い感触で私の思考は一気に回転する。

スカートの中を見られたぁぁぁぁっ!!

「こんのぉぉぉ!!」

とにかく報復だっ!
拳を握り目の前の頭蓋へとアタックをしかける。

「いてぇぇ!」

見事にクリーンヒットした一撃で悶え苦しむお兄ちゃん。
ザマー見ろー!

「ちぃっ!!このままでは俺の脳内パンチラメモリーに記憶弊害が出かねないっ……撤退だっ!」

わけのわからないセリフを残して足をシャカシャカと動かし
出来の悪いゴキブリのように床を人間雑巾がけで逃げていく。

「パンチラどころかモロじゃないのーーーーーーーっ!!」

逃がすまいと後を追う。
勿論スカートの中身は覗かれないように低姿勢で。

「忘れろーっ!」
「当たってやるもんかよーっ」

私の繰り出す下段回し蹴りを次々とかわしながら逃げるお兄ちゃん(もちろん人間雑巾のまま)。
でもその後階段に差し掛かってお兄ちゃんは1階へと転がり落ちました。

めでたしめでたし・・・


妹×兄


2×「あ゛う・・・・」


私の家から学校までそこそこ距離がある。
だから私とお兄ちゃんは電車で通学しているんだけど、
やっぱり朝の電車って言うのは混んでて大変。

もう2年も乗ってるのに馴れないなぁ。やっぱり朝の電車は嫌い。
お兄ちゃんはどうなんだろ?

ふと隣りのお兄ちゃんの顔を見てみる。

「ふあぁぁ・・・・」

欠伸、特大欠伸。
昨日は夜遅くまで勉強頑張っていたのかな?
だとしたらコーヒーでも持っていけば良かった。

忘れちゃいけないけど私のお兄ちゃんは成績が良い。
私も良いほうだけど双子なのにお兄ちゃんには適わないのがちょっと悔しい。

まだ春だとは言え受験生たる高校3年生としてはもっと頑張らないと思う。
その前に進路・・・どーしようかなぁ?
大学に行きたいけどまだどこの大学を受けたいとかちゃんと決めてないんだよね。

きっとお兄ちゃんはもう決まってるんだろう。
お兄ちゃんは進みたい道を決めて着実に歩を歩む人だから。
忘れちゃいけないけどお兄ちゃんは出来る人間なのだ。

「ん?どうしたんだ小夜。俺の顔なんかじっくり見て・・・顔にごはん粒とか付いてたり?」
「あ、違ぅ・・・・・・」

うはっ・・・気付かれた。
誰かの顔を見ているのを気付かれるのってなんか恥ずかしくない?
私はそうなんだけど。

「すっごく眠そうだから昨日の夜遅くまで勉強とか頑張ってたのかな〜って、そう思ってただけ」
「あー、確かに深夜まで起きてたけどただAV見てただけだよーん」

なっ・・・・・
お茶らけた表情でなんてことを妹に向かって言い放つんだこのクソお兄ちゃんはっ!

あぁ・・・あぁぁ・・・ほらほらっ!
こんな人の多い電車の中でAとかVとか
アルファベット2文字をぶっ放すから乗車してる人達がこっち見てるじゃないのよっー!

「うーーーっ………」

すごく恥ずかしいぃっ!だけどどうしようも無くて顔を出来る限り俯ける。
となりでケラケラと笑うお兄ちゃん。
とりあえずお兄ちゃんの足のつま先をカカトで思いっきり踏んで置いた。

忘れちゃいけないけどお兄ちゃんは変態なのだ・・・





「歌乃っ!ほれほれコレー」

昼休み。
学業の連鎖から開放されるハーフタイム。
今日も私の机にはクラスメイトの八重とお兄ちゃんのクラスメイトの歌乃。
2人の友人と昼食を取っている。

「二つ名メーカーぁぁぁっ!」

うん、八重がテンション高いのはいつものことだから気にしない。
それにしても二つ名メーカーって何よ?
脳内メーカーの親戚だろう、きっとそうだろう。

「あぁっ?なんだそれは?」
「んっとね、ここに名前入力すると
ライトノベル風の二つ名を作ってくれるオーバーテクノロジーなのだっ」
「ふーん・・・ところでライトノベルって何?」

歌乃はそういう本とか読まないもんなー・・・

「ライトノベルって言うのは挿絵の多い読みやすい小説・・・」
「ほー・・・で二つ名って赤いアレとかそんなの?」
「そうなのだっ♪とにかく早速2人もやってみるのだよ」

八重ノリノリだな。
ちょっと面倒そうに八重のケータイを掴み取ると歌乃はカチカチと名前を入力していく。

「鯉口歌乃さんの二つ名は・・・ロックボトム 水葬乱舞・・・」
「重々しいね・・・」
「いや、コレ案外気に入ったわ。主に乱舞のトコ。なんか私強くなった気がする」

ちょっと待てって・・・
アンタは女の子なのに喧嘩強いくせにまだ上を目指すのか?!

「小夜ちんもやってみて♪」
「はいはい・・・」

歌乃の方からグルリと振り向いて私にケータイをグイっと差し出す。
ディスプレイに映し出された入力画面の枠に自分の名前を打ち込む・・・

「城戸小夜さんの二つ名は・・・フュージョンキャノン 武装連斬・・・」

な、なんだコレわぁぁ?
キャノンって言っているのに斬って矛盾してるじゃないのよっ。
アレか?お兄ちゃんの身体に私が入ってうおー下半身にキャノっって何考えてんだ私ぃぃーー!!

「重々しいな小夜」
「うん・・・・・でもなんか強くなった気がする」
「だろ?」
「だね」

なんというか変な高揚感に身体が支配されている。
侮ったか二つ名メーカー・・・

「あ、一応聞いておいてやるけど八重はどんなのだったんだ?」
「おぅアタシのもカッコイイよー。コズミックリベリオン 胎児の多面体!」
「・・・それカッコイイのか?」
「多面体って・・・」
「ア・・・レ・・・・?」

たぶんそれはカッコイイと言うのとは違うと思う。うん。
そんでもって弱いとも思う。胎児だし・・・

「あうあう〜」

しょぼしょぼとカレーパンをモフモフし始める八重。
ちょっと子犬みたいで可愛い。
八重は何かと話題を出してくれるから一緒にいて飽きない。
私もたまには話題でも出しみた方が良いかな?

「あ、ちょっと2人に聞きたいんだけどさ・・・」

そう言えばこの2人は進路とかってどう考えてるんだろうか?
ちょっと聞いてみようっと。

「2人はさ、進路とかってちゃんと考えてるの?」
「ほえ?」
「は?」

う、なんだなんだその視線はっ?!
エー何言ってるんですかこの子はー?みたいなーーーっ!?

「まぁそれなりに・・・」
「それなりにだよね・・・」

あ、あぁっ!?
もしかして漠然としか考えてないのは私だけとかそんな感じとか!?

「アタシは美容師になりたいからそっち関係の専門学校とかかなぁ」
「私はE大の経済学部」

か、歌乃さんそこまで決まってるんスかーっ!?
ひえー、皆すごいなぁ。って関心してる場合じゃないよね・・・

「小夜ちんは?」
「あ゛う・・・・」

何も決まってませぬ!決まってませぬーーーっ!
つーか八重が決まってるあたりがかなり驚きなんですよー!

「・・・ふん」

は、鼻で笑われた・・・

「まぁ、別に決まって無くても良いんじゃねーの?焦って選び間違えるよりよっぽど良いよ」

笑われたけど空気の読める姉御肌、歌乃様。
その言葉胸に深く刻み込んでおきます・・・

「やっぱりみんなちゃんと考えてるのかなぁ・・・」
「そーでも無いんじゃないか?私のクラスでも先のことなんか考えてない連中沢山いるし。
 まだ春先なんだからこれからゆっくり決めれば良いと思うがね」

ズズーとストローで自販機から買って来た紙パックのいちご牛乳を飲み干す歌乃。
まだ飲み足りないのか隣りの八重のカフェオレをむんずと掴むと何の躊躇いも無く飲んでいく。

「か、歌乃ちんの鬼・・・」
「うん♪ありがとう」

満足がいくまで喉が潤ったのか、上機嫌で空になったカフェオレのパックを八重に返す。
八重が逆さにしてパックをシェイクするも1滴も垂れてこない。
華麗なお仕事です。

「ん、八重にはコレあげるよ」

流石に八重が可愛そうだったから私は自分のポットの紅茶をカップに注いで八重に手渡した。
瞳をウルウルさせながら受け取った紅茶を大事に飲んでいく。
あー、今日もこの子はあいも変わらず小動物チックだ・・・
でもそんな小動物な八重もちゃんと進路考えてるんだし、アタシもバシっといかないと。

「ところでなんでいきなり進路のことなんか聞いたのさ?」
「いや、なんとなくなんだけどね・・・
 それにしても八重が美容師目指してるなんて知らなかったなぁ」
「ふっふっふ、従姉妹のお姉ちゃんが美容師やっててね、憧れてんだー♪」
「そっか、なれると良いね」
「うんっ、頑張るよ」
「そしたらタダで髪切らせてやるよ」

か、歌乃嬢・・・・
それはアンタが金使いたくないだけだろ。

「うし、とりあえず午後の勉強頑張りますか」

焦っても仕方が無い。
歌乃の言ってくれた言葉が確かだと思った。
私は私で皆に遅れないように決めていけばそれで良い。



2限ある午後の授業、最初の科目は数学だった。
0から9までの10の数字と記号で構成される迷宮を黒板に書いていく教師。
静まり返る教室にはサラサラ、あるいはカリカリとペンが白いノートを走る音と
チョークが黒板に削られ落ちる音。


ドクン………

左胸が熱い。
またか・・・


私は諦めを表すよう深いため息を付き意識が飛ばされていった・・・・




「oblivious」を作業BGMにしてずっと書いてたんだけど作品のイメージと全く合わないよねww

読んでくれてありがとうございます。

今回のお話は「日常」な感じを描いてみたのでさしてスパイスのあるお話しではないのですが、小夜達はいつもこんな感じだよってことがわかっていただけたら嬉しいですね。


さっき描き上げた片岡八重

片岡八重.JPG

「か、歌乃ちんの鬼・・・」

茶髪のショートだと思う。
PCに取り込んでから気付いたけど眉毛書き忘れたww

まぁ良いや。
眉毛描くのヘタクソだから失敗したら嫌だしねww
posted by 姫野 at 11:23| 群馬 ☁| Comment(2) | TrackBack(0) | へっぽこノベル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年01月28日

妹×兄 1話

なんかよくわからんが手袋の片方を無くした様だ……

今晩は、軽くショックな姫野です。


昨日告知した通りに今日は自作小説をアップします。
前に上げた13月よりも読みやすいように意識したのでお仕事や学校の休み時間に気軽に読んでくれると嬉しいです。

誤字脱字や感想などあれば姫野さんがタミフルになります。







成績 割と良いほう。
容姿 割と良いほう。
性格 はちょっと問題あるかも……。

とりあえず私はどこの学校にでも居るような普通の高校3年生の女の子なんだ。
とりあえずはね……。


妹×兄


1×「この野郎」


私の両親は共働きなので家事全般は私が行っている。
今、目の前に広げられたお弁当は勿論私のお手製。
別に貧乏ってわけでもないけどわざわざ他で買うのも勿体無いし、これくらいは余裕でしょ?


お弁当箱の蓋を開けると一緒に昼食を取っている友達の片岡八重(かたおか やえ)が
ジト目で私のお弁当箱を見てくる。

「うぬぬー……相変わらず小夜ちんのお弁当は美味しそうでいいなー」
「ありがとう。何なら好きなおかずを適当に摘まんでも良いよ」
「ほんとっ!?ゴチになりやすーぅっ♪」

屈託の無い笑みを浮かべるとさっそく彼女は私のお弁当箱の卵焼きに箸を付ける。
それを落とさないように大事に自分の口に運ぶと美味しそうに卵焼きを食べてくれた。

自分の作った料理を人に食べてもらえるのは嬉しい事だ。
しかも、こんなに美味しそうに食べてもらえるなら本当に嬉しい。

「うん、美味っ!」
「もー、大袈裟なんだから」

私も自分のお弁当に箸をつけ始める。
いつも食べてる自分の味だけど、
誰かと食べればやはりいつもより美味しく感じられる。

「悪い、4時限目の授業の最後の先生から頼まれごとをされて
 遅れ……ってもう食べてる……のぉ……かっ!!」

昼休み前半、人通りの喧騒を掻き分け私達の友達。
鯉口歌乃(こいぐち かの)がやってきた。

「まぁ、クラスが違う人間の宿命ってヤツ?」

八重は自分の感情を隠したりすることがほとんど無い。
それは付き合っていて気持ちの良いものなんだ。
今もニカニカと歌乃に笑いを向けている。

「えーいっ、えーいっ!この口かぁ!?この口が悪いのかーっ!?」
「きゃなぁっ……いひゃいっ!!やえれぇぇぇぇ」

縦々、横々、丸書いてクラッシュ。
歌乃は八重の唇を両の手で摘まんで遊び倒す。
これが食べ物を口に含んだ状態で行われていたら
かなりデンジャラスなことになるなーとか頭の中で考えながら
いそいそと私は自分のお弁当を消化していく。

「っとにもーっ……よっこいせっと」

八重で遊ぶのに飽きたのか歌乃は近くの席の椅子を私の机にドラック&ドロップして
腰を落ち着けた。

「歌乃、年寄りくさいよー」
「へいへい、悪いござんしたねー。どーせ私はオバサンですよー」

文句を言いながら歌乃も持ってきていたお弁当箱を広げる。
歌乃のお弁当は彼女の母親が作ってくれるらしい。
私のお弁当とは違って経験の多さが見て取れる。

「うぬぬー……相変わらず歌乃ちんお弁と…」
「やらないぞ…」

出鼻を押さえつけたっ!
流石歌乃、そこに痺れたり憧れたり。

「アタシまだ何も言ってな…」
「うるせー、カリモフしてやがれパン組みが」

一応言っておくけど、口調が荒いけど歌乃はちゃんと女の子。
かなり頼りになる私達の3人目。

「くっ……母さん、今日もこのタコさんウィンナーの美味さは私を泣かせやがる…」
「歌乃ちんのタコさ……いぃっ!!」

眼光で八重を沈めたっ!
流石歌乃、そこに痺れたり恐れたり。

「あうあう〜」

しょぼしょぼとメロンパンをカリカリし始める八重。
ちょっとリスみたいで可愛い。
歌乃は別に八重のことが嫌いなわけじゃないんだけど、
こんな感じなのはよくあることで……

それにしてもあのタコさんウィンナー美味しそうだなぁ…
歌乃はお母さんの事が大好きだから歌乃のおかずは滅多に食べられない。
全部自分で残さず食べてしまうのが殆どだから。

「そうそう、小夜、朝樹君またそこらへんの女子にお昼一緒に食べないかって誘われてたよ。
 もうそろそろお誘い件数500件いくんじゃねーの?」
「まぁ、いつもの事だし……」

朝樹

城戸朝樹(きど あさき)

成績 非常に良い。
容姿 非常に良い。
性格 ―――――。

どこの学校にでも居ないような特別な高校3年生の男の子。

「んー、小夜ちんには、そんなお誘い来ないのに朝樹君はすごいね」
「それは男女の違いじゃない?男子から誰かを昼食に誘うっての、
 学校だとあんまり見かけないし」
「誘われても私は断るわよ。私には2人が居るんだから」


城戸朝樹

実のところ私の兄だったりする。
学年は同じ。双子だから。
お兄ちゃんは聞いての通り出来る人間。
私は割りと出来る人間。

双子っていうのは嫌でも人目に付くんだけど
私よりお兄ちゃんがスゴイから私はあんまり目立たない。
それで良い、私は目立たなくて良い。

だけど……

「だけど、500件は無いでしょーっ」
「あー、小夜がご立腹モード突入〜」
「小夜ちんっ、ドードーっ」

ドードーっって私は家畜かこのカリモフがぁぁぁぁっ。
お兄ちゃんがモテるのは解かる。解かるけどモテ過ぎなのよぉ〜っ!

「アイドルじゃないんだからさぁっ!追っかけとかするなって言うのーっ!」
「でもでも、まぁ仕方ないんじゃねーか。実際カッコイイし頭良いしなぁ」
「小夜ちんっ、ドードーっ」

だから私は家畜じゃねーーーーーーーーーっ!







ドクン………



あ、



ドクン……



ヤバッ!!




意識が遠くなっていく。
力が抜け落ちる……

また、始まっちゃったっ!











「っ!」

一気に視界が開ける。
目の前には2人の女の子がきゃいきゃいとはしゃぎながらお弁当と食べていた。

ちっ、嫌な時に■ったなぁ。
ってそんなことより「私」がヤバイっ!

「あの、俺ちょっと用事思い出しちゃって……ゴメンネ」

あー、この喉仏に響く違和感のある低い声……慣れないなー。
慣れたくも無いんだけど。

「あ、先輩っ」

うるせー、こっちは取り込んでるんだよっ!
慌てる2人の女子を置き去りにして駆け足で「私」のクラスに駆ける。

ヤバイ!ヤバイ!!
主に「私」のモラルがヤバイぃー!!

さっき居たのは校舎の屋上。
筋肉があってパワーのある身体にいつもなら出来ない無理を働かせて
階段を一気に飛び降りる。

っひゃーっ♪ズボンサイコー!

そのまま廊下を疾走。
まるでスーパーマンにでもなったような気分で私は「私」の教室へと1直線。

3・・・・・2・・・・・1・・・・・


教室に飛び込むっ!!




「えー、何言ってんだよ小夜〜」
「おねがーいっ、ちょっとだけだから……ね?」

「私」と歌乃が喋ってる。
多分、いや確実にダメな話しだっ!!

「ちょっとだけだって、歌乃の胸触らせて」
「そんな良いものじゃないぞー」

あの野郎………

「あ、朝樹君だぁ」

八重がどうやらこっちに気付いたようだ。
隣りにいる「私」もこっちに振り向く。

「いっ……」

竦む。

「や、やぁお兄ちゃん……」
「ちょっと来いっ……」

むんずと「私」の手を取り引っ張り上げる。

「ひぃー、私お兄ちゃんに犯さっ……もごごもごぐおーっ!!」

五月蝿いから口にデカイ手のひらを被せてやった。

「朝樹くーん、あんまり変なこと小夜にしないでよー」

歌乃の冗談に空いている片手を上げて相槌を打っておく。
さて、この野郎をどうするべきか……
とりあえず校舎裏だな。


――――




「ぷふぇぁっ!!い、息!!スーハーっ……死ぬかと思ったっ!」

それは困る。それは「私」なんだから……
ぜはぜはと肺の中の酸素を入れ変えるのを見ながら私はどーしたものかと苦悩する。

「お兄ちゃんっ!!私の身体で変なことしないでって何回言ったら解かるのよっ!」
「へっ?! 俺は変なことなんか何もしてな……っ」

ドンと地面を踏みつける。
乱暴は出来ないからなー。





私とお兄ちゃんの異常体質。
肉体と精神が互いに入れ変わる現象。

双子が織り成す未知のテクノロジーってヤツ?
こんなこと誰にも相談も出来ないし……

ちょっと前くらいからなんだけど、
私とお兄ちゃんの身体が入れ変わるようになったのは。
最初は本当に驚いた。
少しづつ馴れてはきたんだけど、
やっぱり他の人間になるって言うのは気持ちの良いものではない。

お兄ちゃんはそーでもない見たいだけど……

「クオラァァァァァァっ!!ドサクサに紛れて私の胸に触るなぁぁぁぁ!」

1番の問題点は私のお兄ちゃんが変態であること。
「私」の身体で「私」の乳を揉むなーっ!!

成績も容姿も本当に良いお兄ちゃんなんだけど……物凄く変態なんだよこの人……

「歌乃ちゃんの乳を揉めなかったからお前ので我慢してやるんだっ」

開き直ったっ!
この野郎……「私」の体だからヘタに手を出せないのを良いことにぃぃっ!





あぁ……なんでこんなことになってしまったんだろうか?
私、城戸小夜(きど さよ)は、こんなお兄ちゃんと日々戦っています……


城戸小夜.JPG

とりあえず読んでくれてありがとう。
主人公の小夜ですわ。

時間が無いので10分くらいでパパッと描いたからまぁボロクソなわけだが………

黒髪ロングってことで認識してくださいな。
posted by 姫野 at 23:26| 群馬 ☀| Comment(5) | TrackBack(0) | へっぽこノベル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年12月18日

13月の世界 〜a four leaf clover〜 19

今日帰りに事故りそうになった。
狭い道の見え難いカーブを真ん中を走りながらトラックがつっこんで来るんだぜ?

自重しろよマジで。
群馬のドライバーは皆強気過ぎる。

死ぬかと思ったぜ。
お陰で足回りに無理かけちゃったわぃ!!


R 3年5組の季風さん。

校内の生徒、職員が体育館で始業式をしているため廊下は静寂であった。そこに取り残されポツリと存在する二人。
未だに膠着状態(?)が続いている。
原因は全く起きる気配のない剣と、この状態に満足しきっている少女。
どちらからもアクションが無いと言うことは第三者の登場を待つしかないのであろうか?
「あ・・・」
少女が何かに気付く。
「何で剣君走ってたのかな?・・・・・廊下は走っちゃダメって掲示板にも書いてあるのに」
今日日そんなことを守っている生徒はおろか正す職員もいないだろうに。
「・・・・んん」
そうこうして、やっと剣が現実世界に戻って来た。ゆっくりとまぶたを押し広げる。
「あれ?季風(きふう)・・・?」
目の中に入ってきたのは剣の見知った顔であった。
3年5組、季風 楓(かえで)。さらりとしたショートボブのヘアスタイルで独特の雰囲気を持っている少女である。
「あ・・・剣君。おはよう」
剣の起床に気付いた季風はVサインをする。何故Vサイン・・・・?
それと同時に剣は不思議な視界に気付く。
目写る彼女の顔が逆さで体に掛かる重力が自分の後方に向いている。
「あっ、悪りぃ!」
自分がどういう体勢なのかに気付きとっさに立ち上がる。
ちょっと残念そうな顔をして季風もスカートのお尻をパンパンと叩きながら立ち上がる。
「あ・・・・・ちょっと足痺れた・・・」
「平気か?」
「ビリビリする・・・」
フラフラと立つ季風の手を取り支えた。
「あ・・・ごめん剣君」
「いや、原因俺だし謝るのはこっちだよ。ごめんな」
ふと季風が剣をじっと見つめる。
「・・・・・何?」
「剣君、口開けて」
「ん?・・・・こうか?」
ガバリと口を開いてみせる。
「それと目・・・閉じて」
良くわからないまま瞳を閉じる。
「ちょっと待ってて」
数秒後、剣の舌にザラザラした感触が伝わってきた。
「っっ!!!」
得体の知れない恐怖を感じ思わず身を引く。目の前の彼女はなにやら長っ細い紙を握っていた。
「剣君・・・酸性・・・」
握られている紙をよく見てみると赤く変色していた。
・・・・・リトマス紙だ。
リトマスゴケから採取した紫色の色素を使った紙。アルカリにあうと青くなり、酸性にあうと赤くなるというアレだ。
「何でそんな物持っているんだよ!?」
「だって私、科学部だもん・・・」
科学部だからと言って日常的にリトマス紙を携行しているのはどうだろうか?
「あ・・・・・」
剣は季風と同じクラスだった2年の時を思い出した。なにかと剣は実験に使われていたことを思い出す。
「お前・・・・相変わらずこんなことしてんのか?」
3年になってから季風と接することが少なくなった剣は今の彼女についてよく知らない。今も意味の無い実験に誰かが使われているとしたらそれは嘆かわしいことだ。
「んーん。剣君がいないからしてないよ」
「あぁ、アレは俺単体に対する嫌がらせだったわけか・・・」
「違うよ・・・アレはコミュニケーション」
21世紀が始まって少しずつ人類も変わり始めたのだろうか?
「はぁ・・・・・」
彼女と話しているとペースが乱され疲れるという事も思い出した。
「あ・・・剣君。始業式・・・もう始まってる」
先刻の鐘の音を聞いていた季風は体育館に移動するように促がす。
「あ〜、なんか今日は無理・・・・・」
体育館に行けば謎の転校生(知れているが)の二人の相手をしなくてはならない、それに先程から季風と話していたせいでグバっと疲れが溜まってとてもじゃないが始業式などやってられない。
「でもでも・・・始業式に出ないといけないよ」
くぃくぃ
「・・・・・・・」
袖を軽く引っ張られる。
「・・・・いけないよ?」
疑問系にしてみる。
「よし、季風。今日は学校をサボってどっかに遊びに行こうぜ」
「なかなか・・・爆弾発言。でも・・・剣君がそう言うなら・・・行く」
満場一致。イキナリの提案は可決した。剣は季風の手を握り昇降口へと駆け出していく。
「剣君・・・ちょっと速いよ・・ペースダウンを要請するよ」
「とろとろして先生に見つかると大変だろ?文句言わない」
「先生に怒られるのは嫌・・・頑張る」
剣に置いていかれないようにトテトテと走る。というか剣に引っ張られる。

「何で灯華さんが前なんですか?」
機嫌の悪そうな沙耶。そして前方には灯華がいた。
「私に言わせれば何でアンタが後ろなのよ?」
同じく機嫌が良くないような灯華。
始業式を執り行うにあたって生徒は無論体育館のステージに向かって綺麗に並ばなくてはならない。この豊中学園では男女を別け、名前の順で前から整列をする。その方法で並べた結果『た』行の名字を持つ二人は仲良く並んでしまったわけである。
「せめて都賀谷とか鶴谷とか剣君とかいればなぁ」
1番最後は激しく違うと思う。むしろ名前だ。性別も違うし。
「て言うか何で栂さんまで転校生なんですか?」
それは今朝から気にかけていたことである。何故この次期に栂 灯華は豊中学園に編入して来たのか。
「言いたくないから教えてあーげない」
突っぱねられた。これ以上はない宣戦布告。
「そ・・・そーですか・・・」
少女二人は再び、静かに激しい闘志を燃やし始めた。

「剣君・・・これどういうゲームなの?」
二人は近くのゲームセンターに遊びに来ていた。
「これは見たまんまのレースゲームだよ」
二人が遊ぼうとしているのは「最終ギア」というレースゲームであった。国内、国外を問わずに多数の車がエントリーしている。それでいてコクピットもアクセルからサイドブレーキまでも備えていて好評を博しているゲームだ。
二人はシートに座る。どうやら対戦をするようだ。
「お金は俺が持つから気楽に楽しんでよ」
「う・・うん・・・頑張る」
剣は何度かこのゲームをやっているので普通に考えれば断然有利である。
しかし初心者の女の子と遊ぶのに本気を出すということはしないであろう。これはただの戯れなのだから。
「俺はコレでOKっと・・・」
剣の選んだ車は現在剣が使っているワゴンのセダンタイプ。ドレッシィB4。水平対向6気筒エンジンを積む4WDのスポーツセダンである。
「私はライトがクリっとしてるこれで・・・・・」
「また恐ろしいものを・・・・・」
季風が選んだのは外車。ボカスカーS・・・・剣のドレッシィB4と同じ水平対向6気筒エンジンだが3200CCでエンジンをミッドシップに積む。とても扱いが難しい海外メーカー、ポルシエの車である。価格にして750万。
「コースはどこにする?」
ここは初心者である季風にまかせる。彼女が走れそうなコースを選んでもらった方が良い。
「ここで良い・・・・面白そう」
「大胆だな・・・・」
コースは世界的に有名なニュルニュルクリンクと呼ばれるサーキットであった。このコースはとても過酷なのだが・・・・季風にはあんまり関係のないようだ。
「じゃあ、始めるよ」
「うん・・・オッケ」
ブオオーーーンッ!!
けたたましいエンジン音と共に画面の前方にシグナルが現れる。
赤・・・・黄色・・・・・そして・・・・・
キキキーッッ!!!
激しいスキール音をかき鳴らし2台の車はコースへと駆け出した。
「流石に直線では勝てないか・・・」
最初のコーナーまでのストレート。これは馬鹿でもアクセルを踏み込めば早く走れる。ここでものを言うのはエンジンパワー・・・剣の乗るドレッシィB4は3000CCエンジン、僅かだが季風のボカスカーSの方が排気量が高い。それがそのまま直線でのスピードに直結していた。
「あれ?私・・・・勝ってる」
自分が剣より前にいると言うことに気付いた季風は信じられないといった顔をする。
「勝負はコーナーで決まるんだよ」
最初のコーナー。剣は綺麗に減速、加速をし、素早くコーナーを抜けていく。
「抜かれた〜。置いてけぼりは寂しいよ〜」
方や減速をし過ぎた季風の車はあっさりと剣に抜かされてしまう。
「早く追いつけよ〜」
「私・・・頑張る」
ブオオオオオーーーーーッン!!
季風のボカスカーSのエンジンが吠える。
開いたはずの差がみるみると縮まっていく。
「コーナーっ!今度はついて来い!」
ドレッシィB4の車体が斜めに傾きながらコーナーに突っ込んでいく。
「あーやればいいのか・・・・」
そして先程とは違い、同じように車体を斜めに傾けながらコーナーにボカスカーSが進入していく。
コーナーから抜ける時には2台の車は並んで走っていた。
「季風、お前センスあるよ。難しいRRレイアウトであの動きは・・・・・頑張れば俺にも勝てるっ!!」
ヘアピン。右、左とハンドルを切ってサーキットを駆け抜けて行く。
「・・・・・頑張る」
同じようにサスペンションを撓らせてボカスカーSが後を追う。
そして2台はコース中盤へと駆け抜けて行った。

「ふぇ・・・・」
ドサ
つきなみと言うか・・・学園長の長くありがた味の無い話で沙耶は前のめりに倒れてしまった。
「っとと」
それを受け止めたのは前方にいた灯華であった。
「もう・・・仕方ないわねアンタ・・・」
「うぅ・・・すみません・・・・」
文句を垂れつつもしっかりと沙耶の体を支える。
「歩けるわね?先生に話して保健室まで行くよ」
「はふぅ・・・・」
気持ち悪いの懸命に堪えて灯華と共に歩きだす。
「まったく・・・・何してんのかな・・・・アイツ」
灯華は沙耶の背中を擦り体育館を後にした。

夕刻・・・・繁華街は買い物をする客で賑わいを見せる。そんな中始業式をボイコットした二人は並んで歩いていた。
「いやーっ、思いっきり遊んだなぁ。いつの間にかこんな時間になっちまってる」
剣は大きく体を上に伸ばす。
「結局勝てなかった・・・・」
「季風、俺の後ろにいると凄い上手く車を操れてるのに前に出るとてんでダメなんだもんなぁ・・・・」
「先立ちはあらま欲しきことなり・・・・・」
あのあと二人は何度も勝負を重ねた。剣も最初は1回で止めて他の店に寄るつもりでいた。しかし季風の予想外のドライビングテクニックが面白くて結局ゲームセンターに長居してしまった訳だ。
「ボカスカーSは速い・・・・悪いのは私に腕が足らないから・・・」
しょんぼりと軽く落ち込む。
「そんなことないよ、季風は速い。初めてやったとは思えない」
確かに季風のコントロールは対戦相手の後ろを走っている限り初心者とは思えないものであった。
「レースゲームって面白いね、剣君」
「じゃあまた今度遊ぼうぜ。それに本当はもっと行きたい場所もあったしさ」
「また・・・剣君・・・遊んでくれるの?」
「あぁ、機会があればまた今度。な?」
そう言うと剣は右手の小指を差し出す。
「ゆびきり・・・・」
季風も右手の小指を差し出し、剣の指に絡める。
「ゆびきりげーんまーん嘘ついたら針万本飲〜ます。ゆびきったっ!」
それは大したものではなかった・・・気休めだったかもしれない。それでもそのゆびきりは季風にとっては凄く嬉しかった。・・・針万本は流石に嫌だが。
「そーだ、俺の友達の家がケーキ屋さんでさ・・・あ、正確にはパティスリーって言うんだけど。そこのケーキがスッゴク美味しいんだ」
そのケーキ屋と言うのは勿論柳君の家である。
「剣君って甘いの好きなの?」
「そ、以外かな?季風は甘いのダメか?」
「そんなことない・・・・好き」
「良かった。今度遊ぶ時はそこに連れて行ってやるよ。ケーキ、マジで美味いからさ」
「うんっ♪」
季風はその時とても綺麗に笑った。それはただ純粋に嬉しかったから・・・・・

「うへぇ・・・・」
グロッキー沙耶。保健室のベッドに横になり脳内を旋回して続ける気持ち悪さに必死で対向する。
すでに始業式は終わり。校内に残っている生徒は文化部と沙耶、灯華だけになってしまっていた。
「・・・・・・・・・」
灯華はもくもくと持っていた小説を読んでいた。
<しかし青龍んトコの嬢ちゃんは大丈夫か?もう何時間も唸っているぞ」
「大丈夫でしょ・・・一応憑人なんだから」
<ちょっと・・・一応とは何ですか!?>
青龍が文句を垂れる。
<灯華、あの女は怒ると怖いからあんまりヘタなこと言わない方がいいぞ>
「過保護ね・・・・」
ペラリと小説のページが捲られる。
後何回ページを捲れば沙耶は元気になるのだろうか?

「今日は・・・・ありがとう。その・・・・楽しかった」
剣は季風の家の前まで来ていた。無論彼女を家まで送るためだ。
「うん、学校サボらせちゃって悪いね」
「それは・・・平気・・・・多分」
「じゃあ、また今度な」
そう言うと剣は右手をブンブン振って帰って行った。
「・・・・・」
ガチャ
玄関のドアを開け中に入り・・・
バタン
閉める。
「剣君・・・・・」
玄関のドアに寄りかかり季風は自分の胸の鼓動の回転数を確認していた。
今日という日に感謝して・・・・・
posted by 姫野 at 12:33| 群馬 ☀| Comment(2) | TrackBack(1) | へっぽこノベル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年12月01日

13月の世界 〜a four leaf clover〜 18

居間に「岩手観光ガイド」的なパンフレットが放置されてあった。
あ、俺の親父は元々岩手出身なんだけどね。

なんでこんなものが……w
ちょっと開いて見てみたら

「二戸市シビックセンター」とかいうのが出てきたんだけど。
これ車のシビックの事じゃないよね?
シビックって大衆とか民衆とか市民とかそういう意味の言葉だからそっからきてるんだよね?


うす、今日仕事でケガしたw
キリコが手のひらに刺さった、血が出たぜピューってよ。
綺麗に刺さったから痛みも無かった、痛くない内に消毒→絆創膏で処置。なんで俺様こういうの手馴れてるんだぜ?




あうあう。
小説あうあう。

なんつーか話が無理やりだよな、うん。


Q 始業式の朝

慌ただしい年末と正月休みが過ぎ。剣達には学校というライフワークが再び訪れる時期になってきた。戦いのことを頭に抱えつつも剣達は学生である本分を真っ当しなくてはならないのだ。
ガララァ
懐かしい教室の引き戸を開けて一歩足を踏み入れる。
あ、というような感じで教室に居たほとんどの人間がこちらを向く。
「おはよう・・・・」
あいさつをしてみるも・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
あいさつは返ってこない。
「・・・・・」
とぼとぼと自分の席に向かう。この教室は前とは違かった。冬休み前のガヤガやとした雰囲気はまるで無く、静かであった。
「・・・・・」
久しぶりに見る自分の椅子を机から引き出し座り教室を見渡してみる・
・・・・ぽっかりと教室の一部分にだけ際立って生気が抜けている。
それは無論、鞘・・・・朽木 鞘が使っていた机の周りであった。
「・・・・・」
あの雪の日になくした小さな命。目の前で散っていった愛しい恋人を前に何もできなかった自分が悔しかった。
「・・・・・・・・?」
後ろからスルっと腕が回され誰かが剣を包み込むように抱いた。
「葉月・・・・・」
振り向いたそこには葉月がいた。
「ここに居る皆、痛い気持ちは一緒だ。あんな″さよなら″は、俺だって認めたくない・・・・」
親友の言葉が胸に染みる。人一倍悲しいのは自分だ、最愛の人を亡くしたのだから。でも、それでも前に進もうとあの日に決めた。譲れない想いが胸にあるから。
「葉月、俺は平気だよ。確かに悲しい、辛い、苦しいよ。でもいつまでもそんなのだったら鞘も悲しいし、辛いし、苦しいままだと思う。だから俺は前に進もうと思う」
・・・・・いつかまた逢える日まで
その言葉は自分自身の胸にそっとしまっておく。
「剣・・・・」
「さ、いつまでもブルーになってないで少しは元気出してくれよ」
今は鞘の死にくよくよしてはいられない・・・・・失ったものを取り戻す為に戦いに混ざったのだ。
剣の発言にクラスの中は軽くざわめく。
そのざわめきの中にこのクラスの担任である福チャンがホームルームのために現れた。
「はーい、はーい。皆さん今からホームルームを始めますよー」
ツカツカと教卓までの距離を一気につめる。
クラスメイトも自分の机に戻ったり、話しを止めたりする。
「はい、おはよう。・・・・っと皆さん、話さなくても解ってますと思いますけど。このクラスに居た朽木 鞘さんは・・・・・」
「・・・」
剣は視線も、意識も窓の外へと向けた。福チャンが話すことは全て自分の目の前で起こったことだ、聞いたところで悲しくなるだけだ。
鳥が鳴いている。
チュンチュンとただその1フレーズのリピート・・・・
「・・・・・・」
リズム良く発せられるその泣き声をBGMに剣は瞳を閉じて、昨晩のことについて考えてみた。
力の波を感じ取ってその先に向かってみたら灯華が倒れていた。白虎の話しによると朱雀との戦いでボロボロになったらしいけど・・・・
いったい朱雀の憑人とはどんな人間なのだろうか?
灯華は自分からすればまだ勝てない相手であろう。それは剣もわかっている。しかしその灯華と戦って引き分けまでに持っていく実力・・・・・・鞘と剣が二人で戦ってなんとか退けられた灯華を朱雀の憑人はたった一人であそこまで追い込めたという事実が少し剣を焦らせた。
剣は未だにまともな実戦の経験がない。しかし沙耶も灯華もそして朱雀の憑人も実戦の中で確かに力をつけている。
戦いたいと言うわけではない。でも負けるわけにはいかない。
力なんて本当は欲しくない。でも守りたい物があるから力が必要。
それは矛盾している。すべてが欲しいからすべてを壊すような、傷つけたくないから傷つけてしまうような、矛盾した想い。
<白虎、朱雀、玄武はな、別に徒党を組んで私を襲っているのではない>
ふと黄龍が喋り出した。ここは教室だが背後霊の声は常人には聞こえない。不審に思われるだろうから言葉は返せないが・・・
<聖獣の中で最も強大な力を持つのは私だ、しかし今の剣は覚醒して間もない。他の聖獣からすれば私を倒すチャンスと同時に私の力を取り込めばあとに残る聖獣を倒すのも容易になる>
なるほどと剣は思う。
<しかし私達は白虎にしかまだ襲われていない、他の憑人も覚醒して間もないのでヘタに攻撃はしてこない。という感じが私にはする・・・・>
覚醒して間もない憑人が自分以外に・・・・・・

ガヤガヤ
急に教室内がざわめき始める。
「?。おい、何があったんだ?」
事態を把握しようと前の席に座る柳君に訪ねてみる。
「聞いてなかったのか?どうやら転校生が来るらしいぞ」
「そうか・・・」
剣には解りきっていたことだった。
転校してくるのは勿論沙耶に決まっているからだ。こっちに戻ってきたから本州からの転校という扱いになるというのは随分前に沙耶に聞いた。
「それにしても同じクラスとはな・・・・」
「それじゃあ、二人とも入ってください」
・・・・・二人?
福チャンのその言葉は剣の予想していた人数とは違っていた。転校してくるのは沙耶以外に誰かいるのか?
ガラリと教室の扉が開きそこから転校生の二人が入ってくる。
1人は勿論沙耶、ムスッとした感じの表情なのは何故だろうか?
そして意識をもう1人に移してみる。
「なっ・・・・」
そこにはニコニコしながら剣に向かってVサインをする灯華の姿があった。
無論その行動を向けられている剣の方にクラス内の視線が集まる。
「おいおい、勘弁してくれよぉ」
「今日から皆さんと一緒に勉強してもらう、時原さんと栂さんです。じゃあ事故紹介してもらえるかしら?」
そう福チャンが促がすとまずは沙耶が自己紹介を始める。
「東京から引っ越してきました時原沙耶です。私は元々釧路が地元で家の都合で東京で暮らしてました。今回こっちに戻ってこれてとても嬉しいです。宜しくおねがいします」
短く簡素にまとめているがだいだいこんなもんだろう。
続いて灯華の番に回る。
「栂灯華。ヨロシク勇気・・・・・」
年代的に制限のあるセリフを訳のわからない使い方をしているのは何故だろうか?・・・・・って以外に皆さんウケている。
「さてと、それじゃあ。あなた達の席なんだけど・・・・・剣君の隣りが空いているわね・・・・どっちかあそこに座ってもらいたいのだけど」
「あ、先生私が行きます」 「先生、無論私が行きます」
・・・・・・・・・・・・
それは同時だった。二人の志願者は互いに目線を合わせ火花を散らしている。
<黄龍様の隣なんて絶対認めません!!!隙を見て剣さんを殺る腹に違いありません!!>
<俺はそんな真似しねぇよっ!!つーか俺、アイツの隣嫌だよっ!!>
「・・・・・・・・」
<・・・・・・・・>
青龍と白虎までもが激論をしている。殺る腹って・・・・・・・・・
<ごほん・・・・・私もできれば・・・沙耶が隣りに来てくれると助かるかな・・・・・>
おいっ!!!この龍教室でもイチャつく気かよっ?! とは流石に声には出せない。
さてこの惨状。何故に灯華までもが転校生でしかもこのクラスなのか?
まず疑問としてそこを上げたい。さりとて彼女自身は他の学校で毎日を安泰に過ごしていたのではないのか?
そして目の前で勃発している異種的なまでの戦争(ウォー)はなんだろうか。
運命付けられたかのような最後尾の1番左の窓側席。この席になったものの大半が「これで授業中に安心して寝れる」などとちょっと思ってしまうだろう席。
そうでいて実は先生のマークが以外に厳しかったりする席。
平たく言ってしまえばその席の右にしか空きスペースが無い。この席に陣取れるのは沙耶か灯華の片方のみ。
「ふぅっ!!」
強行的な手段に打って出たのだろうか?時原選手は教卓前から飛び出し剣の隣りを奪おうと駆け出す。その距離は知れている。しかし全力疾走。
しかし・・・・いや、やはりとでも言うべきだろうか?
栂 灯華の脚には勝てるものはいない。
灯華は後発にもかかわらずフライングスタートをした沙耶よりも先に剣の隣りへと移動していた。彼女は風からの恩恵を受けているのだ。自らの進行方向から来る風を遮断し後方から己へと追い風を巻き起こす。そこに抜きん出た脚力を上乗せし、爆発的な走力を叩き出す。まさにスプリンター。そのスピードは生態系の中でも間違いなく最速であろう。
「甘い・・・・」
勝ち誇るように両腕を組んで沙耶に視線を向ける。
「む〜っ」
悔しそうな顔の沙耶。スピードで灯華に勝てるわけがなかった。
「おいおい・・・・・」
一瞬の出来事でクラス内は騒然とする。それはそうだ、転校生の二人が尋常では無い速さで室内を横断したのだから。
「え〜っと・・・・」
事態を収拾しようとついに福チャンが起動した。
「剣君。今の席から右に一つずれてもらえますか?」
「あ、はい」
言われたとおりに席を右にずらす。するとあら不思議、剣の左に空きスペースが出来る。そして実は移動した剣の右にも元から誰も居ないので空きスペースある。
「おお、福チャン。それはナイス」
教室の前の方で葉月がぼやく。
「ささ、二人ともぼやっと突っ立ってないで座って頂戴。剣君も何だか大変そうだけど頑張ってね」
何だかだいぶ無責任な感じに丸く抑えられたような気がするがここで反論でも討とうものなら更なる抗争をおっ始めかねないのでやめとおこう。
問題の二人の転校生の沙耶は剣の左、灯華は剣の右で落ちついた。
「今日からヨロシク♪」
と左の沙耶がニコリと笑いかけてくる。これは俗に言う『勝負笑顔』と言う類であろうか?剣にとってその笑顔を眩し過ぎたと同時に周囲の視線が痛い。
そして右、今朝のパニックの主犯である灯華はと言うと。
「学園では手は出さないから。よろしくネ♪」
沙耶に負けないくらいの勝負笑顔をニコリと咲かしている。
その笑顔と同時に差し出された右手。
それをおずおずと掴む。ただ握手をしただけなのに教室全体から刺さるこの痛い眼差しは何なんだろうか?特に剣の左方からのプレッシャーが凄まじい。
キーコーンカーンコーン
ホームルームの終わりを告げる鐘がなる。そして次の瞬間教室を人影が凪いだ。
無論、その人影は剣であった。
「あ、剣ちゃんっ!!」
「剣っ、待て!」
二人の少女は同時に駆け出す。
しかし・・・・・
「時原さんと栂さんって浅神君と知り合いなの?!」
やら
「ねーねー、剣君のどこが気に入ったの?!」
など数分前までブルーモード全開であったのが信じられないほどにクラスの女子達はノンストップのフルスロットルで転校生の二人を質問攻めにする。
力で押し切るわけにもいかず、飲まれるようにその輪の中で答えを出していくしかなかった。

「あんなおっかねぇとこに居れるかよっ!!」
教室から飛び出し。とにかく廊下をひたすらに駆ける。
新学期早々にとんでもない目にあった。いや、とんでもない目にあう・・・の方が適切なのかもしれない。
いずれにせよ変わらない恐怖に駆られ、逃げる。
ドンッ
「きゃっ」
「うわっ」
廊下の角を全速で突っ走っていた剣は曲がり角から出てきた少女とぶつかる形となった。
「いたたぁ・・・」
倒れた少女は頭をさする。ぶつかったショックで飛ばされて尻餅を付いただけなのに何故か頭をさする。ちょっとした振動でイカレてしまうほど彼女の脳は精密機器なのであろうか?
「ふぇ?」
視線を下に流す。
そこにはバタンキュ〜な剣の頭が自分の膝の上に乗っていると言う光景。言わば、故意ではないが膝枕状態であった。・・・剣も都合良く倒れこんだものだ。
「あ・・・・浅神君だ・・・・。寝てる・・・・・?」
試しに顔をツンツンと小さな指先で突付いてみたり。ムニムニと頬を摘んでみたりする。しかし、眼下で横たわる剣には依然として反応がない。
「やっぱり寝てる・・・・」
寝ているというかその状態は気を失っているんだよお嬢さん。と声をかけてくれるジェントルはその場にはいなかった。
「どうしよう・・・・。浅神君が・・・・こんなに近く・・・・」
剣の頭を膝に乗せたまま少女の顔は次第にうすい紅に染まっていく。
しばしのタイムラグを経て少女ははっと我に返る。
「剣君・・・起きて・・・・私、立てないよ」
ゆさりゆさりと剣の体を揺らす。しかし剣に反応はない。そもそもこの男。人とぶつかっただけでこうも簡単に気絶するのだろうか?
キーコーンカーンコーン
「あ・・・始業式が始まっちゃった」
しかし彼女は始業式が執り行われる体育館に向かおうとはしない。行こうと思えば膝の上にのたれかかっている剣の頭を床に叩き落として行けるものの、そうはしない。
「どうしよう・・・」
<ささっと起きないかっ!!この戯けがっ!!>
黄龍も黄龍で孤軍奮闘している。しかもキレてるし。
「でも・・・・・」
少女は何か考えてるような顔をする。
<・・・・・・・・・>
「このままでもいっか・・・」
<良くないっ!!>
怒号。それは彼女には届かないものだ。
「剣君・・・」
少女はそっと手の平で剣の頭を優しく撫でる。
「幸せ・・・・」
優しい笑顔が少女に灯る。
誰も知らない二人だけの時間がそこにはあった。
その時間を切り取って、少女は胸に刻んでいく・・・・・
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2007年11月30日

13月の世界 〜a four leaf clover〜 17

会社から帰宅して今朝。
広告見るとベイシア電機で1GBのSDカードが1000円。
キングストンってよくわからんメーカーだけどあんまり気にしないので買いに行く事にした。

それにしてもSDカードって安くなったな。俺がデジカメ買ったときうはSunDiskの258MBとかで2000円くらいだった気がする……

車載動画取るのもこれでOKだな。
前のは3分くらいしか取れなかったけど今回のはかなり取れるから1回のツーリングで2、3ポイント取れるぜ。

それと地元のわんぱくでモンハンポータブル2ndG予約してきた。
来月の13日までは予約で20%オフ、3880円で買えるのでオヌヌ。

ついでにゲーセンで仁Dやってきた。
平日の昼はやっぱ相手弱いなぁと……
まぁ対戦は全部相手にコース選ばれた↓

1クレ3回戦目にサブカに当たる。
赤城の下りの雨の夜でブーストオフ。

見事に負けたwww
ブースト無しだったから良い試合でした。

2クレ目3回戦目にサブカに当たる。
いろは逆走の雨の夜でブーストオン。

ココ苦手です。
ブーストオンでもミスって追いつけなくて死亡。
お見事です。これも腕の違いだから悔しくない。

3クレ目3回戦目にサブカに(ry
秋名でGOGO。
秋名で俺に勝つのはもっと腕A☆GE☆NA

まぁ俺も遅いけど……


とりあえずチームポイントランキングは1位!YATTA!

サブカの「ラクトガール」の顔がデブから細顔(色白)になったのでやっと見れるようになってきた。

あ、うーん?
なんか俺の姉に見えなくも無いwww


そんでもって給料下ろそうとしたらATMが調整中とかで20分待たされるので死んだ。

せっかく着たのにこれは酷い。
時間もないので帰る。

の前にエンチャンターの新刊購入15巻。
あれ?俺14買ってないwww

最近忙しいので買い逃しばっかりです。
黒神の新刊も逃したし。

へんに初版好きだから萎えるよね。俺。





うぃ、灯華メインの戦いですね。
ついに朱雀の憑人が出てきますよっと。


P 人形

夜は更に深まり、世界を黒く染める。街の光の裏側で灯華は建築物の上を次々に駆け抜けて行く。
<しかし・・・・俺には幻獣の気配は伝わって来ないぞ。本当に近場に居るのかよ>
白虎が愚痴を溢す。
「微かだけど感じるのよ。この子達を操っている力の糸をね・・・・それに居てもらわないと困るわ。迷子のこの子達もどうにかして欲しいしね」
飛翔・・・・灯華は闇夜を敵を求め跳ねる。そしてその灯華の後をしっかりと追ってくる二人の暗い影。先程の女達だった。
<それにしてもあの女達遅いな・・・・>
「アンタの力・・・速さだけは天下一品ね。私はジョギング程度しか頑張ってないつもりだけど、彼女達は追いかけるのが精一杯ってところね」
確かに先程から彼女達からは攻撃がこない。それは灯華に追いつこうと必死で攻撃などとてもではないが出来ないということなのだ。
「・・・・・居た」
どうやら灯華は憑人を発見したらしい。その瞬間から灯華の目は殺気の色に染まる。
ズザァァァァァァァァッ!!!
憑人の立つビル屋上に着地する。その反動でコンクリートのタイルが何枚かボロボロにはげた飛ぶ。
<相変わらず足だけは速いことですわね・・・・白虎>
幻獣、朱雀の声が響く。
<朱雀っ!?>
「朱雀・・・・・あれが・・・・・」
虹色に輝く羽を広げ、煌く鳥。そしてその憑人。
灯華は右腕に風を纏わせた。それと同時に追いついてきた女達とすでにそばで待機していた少女も身構える。
「お姉ちゃん速いね。この子達の攻撃、全然当たらないんだもん」
朱雀の憑人の少女が言うこの子達というのは先程から灯華を襲ってくる彼女達のことだろう。
「やっぱりアナタの仕業なのね・・・彼女達を今すぐ元に戻しなさい」
強い口調でハッキリと言ってのけた。彼女にしてみれば他人を巻き込むことは考えられないことだから。
<残念だけど、それは出来ない相談ね。これが私の新しい力ですもの。それに彼女達は元に戻したところで今までの運動の負荷で死んでしまいますわよ?>
「な・・・・アナタ命をなんだと思ってるのっ!!」
<それはあなた達が言えたものかしら?あなたは他の動物を殺して食べるでしょう?アレだって命を玩んでると思うけど>
「だけど・・・・・くっ」
だけど・・・・・それは人間のエゴでしかない。
<新しい力ね・・・・・どうりで旧友の俺がお前を見抜けなかったわけだ>
本来、幻獣の力の方向性はある程度決まっている。黄龍は光、青龍は音や振動、白虎は風と空気。憑依した憑人との相性で力の出し方は変わるのだが・・・・
「白虎、アイツ・・・・どんなヤツなのよ」
<朱雀は元々は参謀タイプでな。基本的には作戦を練るのが中心であまり戦闘はしないヤツだ。アイツの力は熱を操るものなんだが・・・・・今のアイツは正直解らん>
「戦って解るしかないってことね・・・・」
ジャリ・・・と灯華が床を踏みにじる。
次の瞬間、灯華は朱雀とその憑人の少女に向かって飛び出した。
「守って、私の採血人形(ブラッドマータ)」
少女の声とともに先程灯華を追ってきた二人が灯華に飛び掛る。
「邪魔ねっ」
灯華は空中に風の台座を形成しそれを蹴る。そして次々の形成した台座を蹴り進み空中を跳ね回る。空を自由に移動できる風の台座の力を最大に生かす・・・・・・灯華の得意なスタイルだ。
朱雀の人形である二人は飛び掛るも回避され一度床に着地しなければならない。しかしその間に灯華は次の風の台座に移動してしまうのだ。この差は大きく人形の二人には灯華を捕まえることはできない。
そして・・・・
「空圧弾っ!」
灯華の決め手である空圧弾が放たれた。その狙いは勿論朱雀の憑人に向けてだ。
バシュュュュュュュュウ!!!
「やっぱりそう言う使い方をするのね。アンタ達は・・・・・」
止められた。先程から朱雀の憑人のそばを片時も離れなかった人形の少女が体を張って空圧弾を防御した。無論無傷と言う訳にはいかない。それ相応のダメージを人形の少女は負ってしまった。
「解ってるんだったら撃たなければ良かったのに」
朱雀の少女はクスリとほくそ笑む。
<この子はもう長くは持たないわね・・・・・>
「破棄しないと。魂の光(バーストソウル)・・・・指定、1番人形(アイン)」
朱雀の憑人の言葉と同時に空圧弾を防御した少女からすさまじい力の波が押し寄せてくる。
<何だっ!!>
「アイツら、あの子に何をしたのよ?!」
つい先程までボロボロだった人形の少女は突如としてその場から跳んだ。
「速い!!!」
慌てて灯華は人形の攻撃を避け屋上の床に着地した。
<あの女・・・・・人間のリミッターを解除してオーバートップで回してやがるぜ>
「それって・・・・」
<あの人形の女はもう数分しか持たねぇよ。それと引き換えであの速さだ。パワーも強化されてるだろうな・・・・>
確かに見ると人形少女は苦痛に顔を歪ませている。だがそれでも灯華の命を奪おうとしている。
<灯華、部外者を巻き込まないとか言ってる場合じゃない。こいつらを倒して朱雀も殺らないとまた朱雀の犠牲者が増える>
「でも・・・・・・・」
<甘えるなっ!!!アイツらはもう助からないっ!!!ならお前の力で早く眠らせてやれ!>
白虎の言うことは確かに正答であった。
「1番人形、そいつを殺しちゃって」
再度オーバロードしている人形が襲い掛かる。
「くそっ!!」
大きく後退し人形の攻撃を避ける。
「2番人形(ツヴァイ)っ、3番人形(ドライ)っ」
掛け声と同時に二人の人形が動く。
「しまったっ!」
1番の人形に気をとられ過ぎたのか。灯華は回避ルートに先に回られ二人の人形に羽交い絞めにされてしまった。
「1番人形、チェックメイト」
バキッ!!!
「うぐっ・・・・・・・・・・・」
ズザザザザザザザザザザザザザザァァァァァァァァァァァ!!!
魂を燃やす人形の拳の一撃が灯華の腹部に直撃した。地面を転がりまわり灯華は倒れた。
<フフフ・・・・いいザマね。でもまだまだこれからよ>
「朱雀は酷いなぁ・・・・仕方ないよね?君には恨みはないけど全部私の為だから許してね。2番人形っ、3番人形っ、1番人形っ」
2番人形が転がった灯華を夜空高く放り上げる。
ゴスッ!!
「ガハァッ!!」
宙を舞った3番人形がそれを蹴り落とす。その蹴りは先程1番人形からの直撃を受けた腹部にまともに入った。垂直に落ちるそこには1番人形が待ち構えていた。
ドゴォッ!!
「あああぁぁぁぁぁっっ!!!!!!」
1番人形の膝が灯華の背中に決まった。いくら幻獣に憑かれた憑人だとはいえ流石に身体は持たない。肋骨も背骨も何本か折れてしまっただろう。
「じゃあトドメ。2番人形っ、3番人形っ」
掛け声と共にボロボロになった灯華の体が持ち上げられ、再度羽交い絞めにされる。
「1番人形っ」
そして最期の1番人形が大きく漆黒の闇夜を飛翔する。
<おいっ灯華っ!!!ヤバイぞ!!!>
1番人形が落下する勢いを使い灯華にとどめを刺そうと降りてくる。
<灯華っーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!>

ザシュ!!!!!!

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
倒れた。
<何っ!!>



倒れたのは・・・・・・・





2番人形だった。
<灯華っ!!??>
腕を持たれて羽交い絞めにされていた灯華。しかし今その右腕に激流にも似た嵐と呼ぶに相応しい風を纏っていた。右腕を持っていた2番人形は風の腕に引き裂かれ倒れたのだ。
「アンタもいつまで私に触ってるのよ」
ザシュ!!!!!!


倒れた。


今度は3番人形が倒れた。
なんと灯華の左手にも右腕の風の腕と同じ嵐のような風が巻き付いていた。
「1番人形っ!!!!!早くそいつを殺して!!!!」
凄まじい勢いで1番人形が落下してくる。
「私の体で球遊びなんかしてんじゃないわよ・・・・・・」
灯華は両腕に巻き付く豪風を両の手の平に集め頭上に巨大な風の球を形成した。
「本当の球遊びってのはこうやんのよっ!風圧砲(エアロミックカノン)っっ!!!」
ズバァァァァァァァァァァァァッッッッ!!!!!!!!!!!
形成した風の塊を大きく振りかぶり降下してくる1番人形に放り投げた。
ズバシュュュュュュュュュ!!!!!!!!!!!!!!!
直撃。風圧砲を叩きつけられた1番人形はその激しい風の波に引き裂かれ・・・・そして自身のオーバーロードによる稼動時間の限界がきた為、灰になって夜空に散っていった。
「そんな・・・・・・」
朱雀の憑人が信じられないといった顔をした。
<人形がいないんじゃ私達に分が悪いわ。ここは引くわよっ>
「うんっ」
朱雀とその憑人が逃げようとする。
「逃がさないわよ」
無論ココまでされた灯華がそれを放って置くはずが無い。
両の腕に逆巻く激風を再びかき集め、風の球体を形成する。
が・・・・・
「くっ」
しかし灯華が体に負ったダメージは相当なもので二発目を打つことは叶わなかった。体から力がこそぎ落ちていくのを感じその場に倒れた。
「白虎・・・私少し寝るわ・・・後宜しく・・・」
そう言って灯華は眠りの世界へと沈んでいった。
<おいっ。こんなトコで寝るなよ・・・・・お〜い>
白虎の呼びかけもむなしく灯華はスヤスヤと寝息を立て始めた。
<骨折れただろうからなぁ・・・・まぁ1日おとなしくしてれば直るか。普通なら瀕死だろうけど・・・・・・憑依された人間って便利だよなぁ>
憑人の身体能力は普通の人間のそれを遥かに凌駕する。それに兼ね備えて回復力も尋常ではないのだ。
<しかし、残されて一人で夜空を見るしかないってのも・・・・・ん?>
その時白虎は自分に近づく気配を感じた。
ザンッ
灯華がここに来たようにビルの屋上に跳躍して着地する何者かの影。
<てめぇは!!>
いつか雲に隠れてしまった月はいつの間にかその銀色の光を甦らせていた。

チュンチュン・・・・チチチチチ・・・・
「ん、ん〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜んっ。ふぁ・・・・」
小鳥のさえずりで灯華は目を覚ました。
カーテンの隙間から射しこむやわらかい光が心の中を優しく包み込む。
「って。ここは何処よ?」
唐突に疑問に思う。それはそうだ、彼女が睡眠に入ったのは明らかにビルの屋上なのである。なのに今はフカフカベッドにホカホカな毛布に包まっている。一体全体何があったというのだろうか?
<ようやく起きたか。この寝ボスケめ>
昨日も聞いた太い声、彼女のパートナー白虎であった。
「私は低血圧なのよ。朝は弱いのだからまた寝るわ・・・・・」
いそいそと再び毛布に包まる灯華。
<ちょっとまて。この状況に疑問を抱いたまま寝るのかお前は?!>
「そうよっ!それ!」
ガバッと灯華が再度上半身を起こす。
「何でなのっ?」
白虎はそれに答えずクイっと指先(彼の場合は前足だが・・・)で部屋のテーブルに置いてある紙を指す。
面倒くさそうにベッドから出てその紙切れを見る。

〆俺を殺さなかった時の借りはこれで返した。
 体に気をつけろ。それとあんまり無理をするなよ。
                                    
                                By剣
「あ・・・・・・・」
剣・・・・・その名前を見てはっとする。
<あの後あいつらがビルの屋上に来てな、お前が派手に力をぶっ放すもんだから感づいて何かあると思って来たんだろうよ。それで倒れて寝てるお前を見て、何も言わないでここまで運んだんだよ。>
「そうだったんだ・・・・・」
そう、良く見渡せばこの部屋には見覚えがある。糸女や剣と初めて出合ったあの部屋だ。
「剣は?」
<昨日の夜の内に帰ったぜ。一緒にいた糸女は剣がお前を助けたことを不服そうにしてたがな。あとテーブルに置いてある鍵、家から出る時はそれ使って戸締りをキチンとしてくれだとさ。ここはアイツの家らしいが今は使ってないんだとよ。今度会った時に鍵は返してくれって>
「そう・・・・・それじゃあ不意打ちは無理じゃないの・・・・・・」
<何でだ?>
灯華はおもむろに剣の家の鍵を手に取ってみる。
「戦う前に・・・・キチンとこの鍵返さないと・・・・・・」
<・・・・・・・・・・・・・・>
「さてと、せっかく起きちゃったし朝ご飯は何を作ろうかなぁ?」
その場で大きく伸びをしながら朝食の献立を考える。
<お前この家のもの勝手に使うのかよ?>
「今は私しかこの家に居ないのよ。言わばこの家の実権を握るのは私、主人は私。やりたい放題好き放題なのは私なのよ」
灯華は満面の笑みを浮かべる。
「っとその前に・・・・」
部屋のクローゼットをあさり始める。
「これとコレ♪白虎・・・・・あっち向いててよ」
<ヘイヘイ・・・・着替えもパクるのかよ・・・・>
「仕方ないでしょ。今着てる服ボロボロなんだから」
いそいそと剣の服に着替えを済ます。
「案外アイツ大きいサイズ着てるわね・・・・ジーンズはベルトでキチンと締めればなんとかなるか・・・よっと。元々ボーイッシュな感じだったけど磨きがかかっちゃったわね。よいしょっと、こんなもんね」
剣の服に着替えた灯華はトテトテと歩き階下に降りる。
「あ、お風呂にも入りたいなぁ・・・・どうしよう?」
<まさかココに住み着くとか言わないよな・・・?>
これから剣の家はまるまる一日に渡り灯華に使われていった。

「あぁ、どうしよう・・・」
その日、剣は一日中不安がっていた。
<どうした剣?>
「灯華にグラビア見つけられたらどうしよう・・・・・」
<・・・・・・・知らん>
「うぅ・・・・・・」
posted by 姫野 at 13:12| 群馬 ☔| Comment(2) | TrackBack(0) | へっぽこノベル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年11月29日

13月の世界 〜a four leaf clover〜 16

ヴァルキリープロファイル本気ヤベーww
もうかれこれ8年くらい前のゲームだが全然普通にハマってるわよ。
まぁやってんのはPSPのリメイク版なんだけどこれ何回プレイしたかもうわかんねww

アルティミットヒッツで1575円でオヌヌ。

とりあえずチャプター3のダンジョン攻略終了。
神界転送要因のロウファの育成に入る。

ハードモードでやってるんだがハードの初期ダンジョンで隠見な感じの多くてちょっとブルーにならね?

ゾルデ地下墓地とかネルソフ湿地帯とかサレルノ実験場とかさ。
余ったピリオド消費して育成のために毎回そんなとこ入るの嫌だよね?

ノーマル以下なら凶禍の森あるじゃん。
あそこは雪が綺麗で好きなんだけどハードじゃ出てこないもんなぁ。

あぁ、早くローム丘陵のカラクリ屋敷、炎の城塞、水中神殿に行きたい。

今日の仕事途中で機械が動かなくなったので他の人の手伝いしてた。
その場所に居た人が朝の6時に退社するっていうから俺も6時に退社したぜぇ。

まぁ、元来やるべき仕事がないから5時で帰っても全く問題なかったわけだがな。


あいあい、小説。
とりあえず新たなバトルを匂わせておくよ。


O 真冬の陽炎

「いっくよ〜」
月がまどろむ夜の時間。少女の声と共に暗がりの向こうから銀色の糸が三本伸びてきた。
右、左、中央と高速でこちらへと襲い掛かってくる。
「よっと」
力を解放――左から来る銀糸を上段から斬り伏せ、返す刃で右から来る銀糸を払い、遠心力を使いそのまま回転し中央から来る銀糸を
――断・・・・・その全てを打ち落とす。
「お〜♪」
パチパチと手の平を叩きながら少女、時原 沙耶は先程の銀糸による攻撃を全て凌いだ剣のもとに歩み寄る。
<まぁまぁそこそこのレベルで能力は使えるようにはなったな・・・・・正直ここまで早く力に慣れるとはな>
「へへへ、昔から剣道の稽古をみっちりされてたからな、剣さえ言うことを聞いてもらえればあとは応用でなんとかなるぜ」
<名前は伊達ではないようだな>
剣は手に象った光の刃を持つ「剣」。黄金の神剣をその場で振り下ろす。その剣はいつの日にか振るわれた巨大な剣では無いもののちゃんと形のとれた剣であった。
<流石と言いましょうか?黄龍様が憑依されただけはありますね>
<うむ、私の思惑を少々超えていたようだがな>
「よし♪まだまだ、これから特訓あるのみだ。期待にはバッチリ応える働きをするぜ」
「じゃあ、また攻撃するから。避けたり受け流したりしてね〜」
トテトテとまた暗がりの向こうへ戻っていく。
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
精神集中、己の中に宿る黄龍の力を始動、回転させる。
念、手の中に神霊の力を注ぎ込む。
形成、その全てを外側へと一気に吐き出す。
「おっし、沙耶〜っ。ドンとこ〜いっ!!」
剣の手には黄金の神剣。輝きを放つ光の粒子は美しくもあった。
「いっくよ〜・・・・・・3割増しで・・・・・・」
・・・・・・3割増!!!!!??????
剣がそう考える頃にはすでに暗がりの向こうで銀糸のきらめきが見えた。
「うおうっ!!」
瞬時に迫った銀糸をとっさに避ける。
空かさず次の糸が剣を襲う。
「このっ」
剣で斬る・・・・・しかし。
ガキィッンッ!!
糸を受け流しはしたものの先程のように切り伏せることはできなかった。
<剣、今回の銀糸は今のお前では断ち切れんな>
「今ならなんとなく灯華の気持ち解るかも・・・・・」
回避。続けて足を躍動。自分を狙う糸からの追撃を逃れる。
<回避した銀糸も今回はしなり、再び得物を狙ってくるというわけか>
「それ、最悪じゃん」
<見かけによらず沙耶はできるな・・・・・>
「いたぶられてる感じがする・・・・・」
正面から迫る糸を剣で跳ね除け、側面から来る糸をダッシュで避ける。
モーションにモーションを重ね、幾重にも波のように迫る銀糸を避ける。
<避けるのも良い修行にもなるが、そこから攻撃に転じなければ戦いには勝てんぞ>
「んなこと言ったってっ!飛び道具にどう対抗すれば良いんだよっ!?」
<前にも言ったろう、その力は元より形無き力、使い手の感じたままに力が動く、お前が形容しやすいのが「剣」という形であるにすぎない>
「するってことは、斧や盾にもなるわけか!!??」
<なるにはなるがこの状況でそんな物に剣を変えても仕方が無かろう>
「解ってねぇな、見せてやるぜ。斧の戦い方をっ!!」
何をそんなに意気込んでいるのか知らないが剣は「やる気」である。
<青龍、剣が何かやらかすらしい。沙耶に対処しろと言っておけ>
<了解ですわ>
<・・・・・ところで剣、力の形は変えられたか?>
「・・・・・・・・・・うう」
剣の手にはベチョベチョになったソフトクリームの形をした元黄金の神剣が握られていた。
<お前はシンプルな刀剣類しか形成できないんじゃないのか?もっとイメージを明確に持て。頭の中のキャンパスをクリアにしろ、そして描け、己の欲しい得物を>
「やってみる」
無論その間も沙耶の音の銀糸による攻撃は止むことはない。それを懸命に避けながらも意識を集中、光の形を自在に変えていく。
「よし」
成功、剣の手にはしっかりと形が取られた斧が握られていた。
<・・・・だから、斧でどうこの距離感を詰めるというのだ?>
「こう使うんだよっ・・・・」
剣は手に持った斧を大きく掲げ・・・・
「トゥゥゥゥゥゥマホォォォォォウッッック!!!」
ゴウゥゥゥンンッッ!!!
あらん限りの力で投げつけた。投擲された斧は物凄い勢いで周りの木々も薙ぎ倒し沙耶へ向けて景気良く回転しながら一直線にぶっ飛んでいく。
シュン!!!シュウウウウウウウン!!!
沙耶の銀糸がそれを撃墜せんと撓る。しかし、高回転がかかった斧は糸を断絶し勢いを衰えることはない。
<なんというアバウトな・・・・・・>
チュドムッーーーー!!!
爆発、まるでグレネードのような斧は暗がりの向こうでその命をまっとうした。
「ヤバイっ?!沙耶〜っ!!」
「はいはい、何ですか?」
「うおっ!!」
剣の隣りからニョキリと沙耶が出てくる。
「お前いつの間に?!」
「当たると痛そうで怖かったから逃げてきたよ」
<単調ですからね・・・・今の剣さんの攻撃は>
<軸からずれれば簡単に避けられるということだな>
剣の攻撃は攻撃力こそあったものの簡単に避けられるダメ攻撃だった。
「・・・・・・・何故だっ!?」
「まぁまぁ、剣ちゃん。とりあえず練習しようよ、練習」
<経験に勝る物無しだ・・・・・・>
こうして剣達の修行は、再び開始された。

「う〜ん・・・・・・・」
冬の夜もだいぶ深まった頃、灯華はファーストフード店の片隅の一角でハンバーガーを一人でパクついていた。
「何か不公平じゃない?って言うか不条理?」
唐突な疑問の投げかけ。無論それは白い白虎に向けられたものであった。
<何がだよっ?>
「白虎ってオスじゃん?」
<じゃん?っとか疑問にしなくてもオスだろっ!!>
「剣の黄龍はオス、糸女の青龍はメス・・・・なんで私に憑いたあんたはオスなの?」
<は?・・・・・何だよ、俺がオスじゃおかしいのかよ?>
「アンタがオスだろうとメスだろうとそれはどっちでも良いのよ。私が言いたいのは男の剣にはオスの幻獣、糸女にはメスの青龍、どちらも同姓よね?だけど何で女の私にオスのアンタが憑くわけ?」
つまり彼女は何故自分に同姓の幻獣が憑かないんだ?と、訴えたいわけだ。
<オスだから男に憑くとかそう言う決りは無ぇーんだよ>
「やっぱ不公平だ。不条理だわ。お風呂とか、トイレとかも全部アンタにバンバン見られてオールタイムショウサービスなんてこっちにしてみれば最悪よ・・・・・・」
不機嫌そうにガブリとハンバーガーを口に押し込む。
<人間の女に興味は無ぇよ。そもそも女なんて生き物はだな・・・・・>
「あ〜〜、そんな俺は女に興味は無ぇんだよとか言っといてアンタ、前回も前々回もとり憑いたのは私みたいな可憐な美少女だったんだわ・・・・。あ〜〜ヤダヤダ、私は騙されないわよ、このニャンニャン野郎」
白虎の言い分にカットインし、言いたいことをヅケヅケと言う。
<ニャ・・・・ニャンニャン野郎だとっ!!おいっ、灯華っ!訂正しろっ!>
「はいはい、もう行くわよ。人前でアンタの声は他の人に聞こえなくても私がアンタに喋る声は聞かれるんだから。私が変な人間だと思われるの嫌だからしばらく良い子にしてなさいよね」
伝説の獣である白虎を手玉に取る灯華。正直、白虎がちょっと情けない。

カツ・・・カツ・・・・カツ・・・・
灯華はあれから繁華街を抜け、人気の少ない路地裏を通っていた。
「・・・・・・・・・そろそろ出てきても良いんじゃない?」
小さな電灯にしか照らされていない薄暗い道に灯華の声だけが響いた。
どうやら灯華は誰かにつけられているのを感じ。人の目に付かない路地裏に誘い込んだようだ。
・・・・・・・
ユラリと声に呼応するかのように視界の前方に影が動いた。
<女・・・・・・?>
ガスッ!!!
「がはぁっ・・・」
後ろからの拳による奇襲。激しい打撃を背中に受け地面に転がる。
<前の女は囮かっ?>
灯華の後方にもどこか空ろな少女が立って居た。
「まったく、何よコイツらは?」
灯華は転がった反動を利用し、両腕をバネように使い地面を押し上げ空まで飛ぶ。
「風の舞台・・・・」
形成した力場に足を着ける。
下方には最初に現れた大人びた感じの女性と後方からの一撃を浴びせた中学生くらいの少女が見て取れた。二人とも空ろな瞳でこちらを見上げてくる。
「っ痛ぅぅ、何か私ってば大人気ね」
<・・・・何なんだアイツら?別に幻獣も憑いてねーのに・・・・>
確かに、彼女達の背後には剣や沙耶と同じような幻獣の類は見当たらない。
「憑人でもないのに私に喧嘩売るわけ?それよりあの背後からの気配を消した一撃、普通の人間の攻撃じゃないわ。力が拳に乗りすぎてる」
<誰かから恨みでも買ったんじゃないのか?>
「そんな覚えないわよっ。だいたいあの二人は見るのも初めてよ」
謎の女達はどこか不気味にこちらをまだ見上げている。
「何あの目線は?悪寒がするわ」
ザッ!!
下方の二人は再び行動に移った。路地側面の建築物を蹴り上がり。空中に佇む灯華に向かってくる。
「あいつら普通じゃないわねっ」
ものの数秒もかからず灯華のいる位置まで蹴り跳び、鋭い回し蹴りを打ち込む。
「そんなヘマい攻撃なんか当たらないわよ」
灯華は更に跳び、新たな風の舞台を作りあげていく。
<灯華、何故反撃をしないっ?>
白虎が吠える。
「アンタ、私は契約する時に言ったでしょ?部外者は傷つけることはしないって。彼女達が何なのか解らない以上は手は出さないわよ」
そうこうしている内にもう片方の女も灯華に目掛けて蹴りを放つ。
しかし、それはまたもあっさりと回避される。
<どう考えても幻獣の仕業だろっ?アイツらは!>
「だとしても彼女達には覇気が感じられない、思うに・・・・誰かに操られてる感じがするわ。それは立派な一般市民よ」
・・・・・・漫画やゲームでもそうなのよ大抵ね。
<じゃあ、どうするんだよ?>
灯華は連続して風の台座を形成しそれを駆け上って行く。
「操ってる奴を見つけてぶっ飛ばす」
ひときわ大きく風の台座を蹴り、建設物に挟まれている狭い路地裏の空間を脱出。灯華は大空に飛び出した。
満天の星空の下、月光に照らされた銀色の光が妖しく光る。
「白虎、反撃開始よ」

<もうっ、あの白虎が憑いているだけあってすばしっこいわね>
ビルの屋上で人成らざる者の声が響く。
その声の主は虹色の翼をもった鳥であった。まさしくその鳥は四聖獣、かつて都の南を守護した朱雀であった。
「この子も参加させてあげた方が良いんじゃないの?」
憑人の少女が朱雀に意見する。
<それはダメよ、彼女はアナタの護衛役だもの。下手に動かさない方が良いわ>
彼女・・・・・。朱雀と憑人の隣りには先程から灯華を狙っている女達と同じように空ろな瞳をした少女が立っていた。
彼女達を操っていたのはこの朱雀と憑人だったわけだ。
「そっか、ゴメンね朱雀。まだ私弱いから・・・・・」
憑人の少女は少し落ち込んだ。
<そんなこと無いわよ。これからアナタは強くなる・・・・それを見込んで私は憑依したんだもの、変に心配しないの>
朱雀は憑人の少女に優しく語り掛ける。
「うん、私強くなるよ」
憑人の少女はニパっと笑顔を作る。
・・・・・・・それでも隣りの少女の顔には曇りがかかっていた。

今宵の月は雲に隠れ、闇を照らす銀色の光は消えてしまった・・・・・
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2007年11月28日

13月の世界 〜a four leaf clover〜 15



↑これはマジで良いわ。
空耳コメとか爆笑しちまったよ。

うー、何か中学校の時に完全暗記してた決め技セリフや大魔法詠唱をまた覚えなおしたくなってきましたwww

あんときは声ネタ多かったよな。
あの頃は声変わり前だったからガノッサの声とか出せたのになぁ……



今日のアクア


アクア「最近やるもん無くて暇〜」

姫野「お前この前箱○買ったじゃねーかよ?w」

アクア「なんか飽きた」

姫野「('A`)ヴァー」


だからPSP買えって言ったじゃないかっ!!
ソフト安いんだぞ!!

とりあえず地雷臭に立ち向かってギルティギア2を買えよww


N 戦士の記憶

痛い。まずこの頭の痛みを訴えたい。何故こんなにも頭がガンガンするのだろうか?訴える相手も定まらないが訴えたい。
「痛いなぁ、くっそぉ」
ガンガンする頭を左手で擦りながら剣は自分の今の状況を確認しようとした。
まず、周りを見渡してみる。
庭・・・・・ではなかった。肌に纏わりつくような冷たい空気を感じる。
「どこだここは?」
明らかに剣のいる場所は沙耶の家では無かった。
見渡す限りの草原。しかしその草原は朝に見た幻視のような草原とは違いどこか薄っすらとした厭なヴェールがかかっていた。
天上の天気は曇り。グレーのウレタンが敷き詰められたような窮屈な感じがする。
一歩出る剣。続いて二歩。歩みを開始する。行く場所なんて解らない。ここがどこなのか解らない。取りあえず歩く。
すると、前方地平線付近に何か黒い波のようなものが見えた。
「何だありぁ?」
遠く向こうにモゾモゾと、もしくはユラユラと動く。
黒い波は剣の視界に入る地平線を全て埋めていた。ふと後ろの地平線付近も黒い波があるのではと思い振り返る。
しかし、反対側の地平線は全くもって何にも異常は見られなかった。
ではあの黒い波は?再度振り返る。
「げっ!?」
思わず後ずさる。地平線付近の黒い波が大きくなっている。いや、少し考えれば解るだろう。近づいて来ているのだ、黒い波が・・・・
何か言い表せない不安に刈られる。
ダッ
次の瞬間には反射的に反対側の地平線に向けて逃げていた。
「いったいなんだよアレはぁ?!」
文句を言いながらも走る。なおも後方からの黒い波は大きくなってゆく。
ズキン・・ズキン・・
頭が痛い、しかしここで止まってはあの得体の知れない黒い波に追いつかれてしまう。
ズキン・・ズキン・・
痛みを堪えて必死に大地を蹴る。
前へ、前へ・・・・・
「うわっ!」
転ぶ。足元には少し出っ張った岩が見て取れた。
しかし、いつまでも倒れたままでいるわけにいかない。こうしている間にもあの黒い波がこちらに向かって来ているはずなのだ。
剣は急いで立ち上がり草原を再び駆け出す・・・・・そのとき。

ギャァァァァァッッ!!!!

奇声のような快音を聞いた。

ドタッドタドタッドタッ!!

大群の行進のような地響きを感じた。

振り返る。そこには黒い波、いや・・・・あれは・・・・・
形容の整っていない怪物が列を成して進軍していた。
「・・・・・・・っ!!」
黒い怪物。目の前とは言わないが姿が確認できるほどもう近くに迫っている。
黒い怪物。一匹ではない。何千、何万もの怪物がひしめき合っている。
黒い怪物。本当に真っ黒で目のような部分が赤く光るだけの漆黒の怪物。
声に出せる言葉は何も無かった。剣の心は恐怖に塗り潰されてゆく。

その時・・・・
ビュオンッ!!!
剣の真横を何かが過ぎ去って行った。
速い――しかし辛うじて目で何とかその姿を追う。
「虎?」
それはまさに疾風のような白い虎だった。
「まさか、白虎?!」
剣の横をもの凄いスピードで駆け抜けた白い虎・・・・紛れも無くそれは白虎だった。
白虎は勢いを殺さずにそのまま黒い波・・・黒い怪物の群れへと突き進んでいく。
その姿は雄々しく、活力に満ち溢れていた・・・・・

「ウラァァァァァァッッ!!」
怒声。超高速で駆け抜ける虎は前足の爪を剥き出しに黒い怪物の群れに切り込んでいく。
ギュオオオオォォォォォッ!!!
怪物の悲鳴が上がる。そんな中悲鳴が止み鳴らない前に虎はバタバタと黒い怪物を引き裂いてゆく。
キキキキキィィィィィッッッッッッ!!
ガァァァァァッ!!!
怪物の悲鳴が間髪入れずに響き空間を揺らす。
「す、すげぇ・・・・」
見る者を惹き付ける荒々しくも魅力のある戦い。
しかし、黒い怪物達もやられるばかりでは無かった。
右から、左から・・・・並んだ黒い怪物が束になり白虎を討とうと集まってくる。
「ウゼェよ!!手前ら!!」
剣の横を風が凪いだ・・・それはしだいに強くなり強風になる。
ジャリ
足を踏ん張る。そうしないと強風に飲まれて飛ばされそうな感じがした。
風は言うまでも無く白い虎の方に向かっていた。
白虎の周囲は大気の渦と化した。そして巻きついた風の濁流を纏い・・・
「散りやがれ!!」
白虎は閃光の如く黒い怪物の群れの中を駆け抜けた。
巻きついた風という名の凶器で黒い怪物を鋭利に切り裂き殺していく。
風塵・・・・・乾いた空気に剣はどこか心地良さを感じた。

グゥォォォォォッッ!!
その時、一匹の黒い怪物が群れから逃げ出すようにこちらに向かってバタバタと向かって来た。
「うぉっ!!」
危険を感じた剣は逃げ出すももう遅かった。
黒い怪物は背後、踏み潰される・・・・・・・
直前。光の柱が黒い怪物を貫いた。
みるみるうちに黒い巨体は光に掻き消されてゆく。
ギュアアアアアッッ!!!!!!
黒い怪物の奇声と共に光の柱も細くなり消えていった。
「いったい・・・何が・・・?」
そう疑問に思い周囲に目を配る。
居た。光の柱の現況・・・・・それは目の前に居た。
「黄龍!!」
金色の帯を絡んだ神々しい龍。黄龍は剣の呼びかけに呼応するかのようにその体躯を唸らせた。
「??・・・・・白虎、今私の名を呼んだか?」
「はぁ?何言ってんだよ。呼んで無ぇよ。それより早くしないとお前の分の得物も全部俺が片付けちゃうぜ」
「・・・・・・気のせいか」
どうやら剣の存在は二匹の獣には解らないらしい。剣も何となくそれを悟った。
「そういえばあいつら・・・・実態してるじゃん・・・・これは、どういうことだ?」
確かに二匹の獣は剣の知る背後霊の時のような違和感は無く憑人も見当たらない。つまり背後霊ではなく・・・・生前の彼等ということなのだろうか?
「だとしたら・・・ここは、過去・・・なのか?」
思考を廻らせた末にこれ以外に納得の行く考えも浮かばなかった。やはり今目の前で黒い何かと戦闘をしているのは過去の彼等なのだろう。
そうだとしても、何故自分がこのような場所にいるのかの疑問が残る。
「俺は沙耶の家の屋敷で気を失って・・・」

「ふんっ」
光の龍の巨体が唸る。
「浄化されるが良い」
その手の平から大きな光の球が黒い怪物が群なす中央へと打ち込まれた。
「白虎っ、その場を一時退け!」
「へっ、当たらなければ良いんだろ?」
次の瞬間・・・怪物達の真上でその動きを止めた光の球は更に強い輝きを放ち・・・・・
「全部避けきってやるよっ!!」
白虎と黒い怪物が激戦を繰り広げる戦場に光の槍を雨の如く無数に放った。
ギョェェェェェッッ!!!
グキャァァァァァァッッ!!!
バラァァァァァァッッ!!!
怪物達の断末魔が戦場にこだまする。その光の槍は間髪を入れず降り注ぎ次々と黒い怪物達を貫いて、引き裂いて、切り裂いて殺していった。
そんな黒い怪物とその屍骸が渦巻く戦場の中に目にも止まらぬ速さで白い影が駆け抜けていく。
「ラァァァァァァッッ!!」
その白い影の正体は白虎である。打ち込まれている豪雨のような光の槍を全て避けきり、更に光の槍が打ち損ねた怪物にトドメを刺し、また光の槍を回避する。その研ぎ澄まされた動きは他の生物を遥かに凌駕していた。
「まったくもって白虎には手がつけられんな・・・・・」

ズキンッ!!!
「痛っ!!」
ズキンッ!!!ズキンッ!!ズキンッ!!ズキンッ!!
しばらくぶりに頭を襲ってきた頭痛に頭を抱える。
割れるような間隔に襲われながらも剣はその痛みに必死に耐える。
しかし、剣の意思はそこで再び闇の中へと消えて行った。

<・・るぎっ!!・・・剣っ!!起きろ!!>
「・・・ぁあっ?」
「剣ちゃんっ!大丈夫?!」
視界に沙耶の心配そうな顔が飛び込んできた。
「俺は・・・?」
ここは沙耶の家の庭、どうやら意識が回復したらしい。
「平気っ?黄龍さんが呼んでるから来て見れば倒れてるんだもん」
「あ、そっか・・・俺意識が無くなって・・・・」
<剣の内にあった力は私が強制的に外に吐き出しておいたぞ。力のコントロールが出来ないと先には進めないからな。この特訓はこれからも続けていくぞ>
「あぁ・・・」
力が抜けたと黄龍は言ったがまだ体の内側には違和感みたいな物が残っている。
<今日は疲れただろう。もう休め>
「・・・・・・・・・黄龍」
呼びかける。
<なんだ?>
「黄龍からもらった力って・・・剣だけじゃないよな・・・」
<・・・・・その力は元より形無き力だ。使い手の感じたままに力が動く>
倒れている時に見た黄龍は光の雨を降らせていた。いつか、自分も思うように力が使いたいと強く感じる。
「俺、頑張るよ」
<頑張ってもらわないと私も困るのでな>
剣は黄龍に親指を立てて右手を突き出した。
はにかむような笑顔と共に・・・ちょっと黄龍との距離が縮まったみたいで嬉しかった。
「剣ちゃん、お風呂沸いてるんだけど・・・・・今から入る?」
「おう、なんかこてんぱんに疲れたからな」
「最初なんてそんなもんだよ。私も青龍さんの力をコントロールするのにけっこう時間かかったしねぇ」
と、沙耶は背後にいる青龍の方に目線を送る。
<まぁ、私の力は黄龍様ほど強烈なものではないので幾分かは楽でしたよ。剣さんは沙耶の何十倍も苦しいのではないですかね>
「何十倍っ?!・・・・・うわっー、よく剣ちゃん生きてられるね」
そんなにヤバイのかよ・・・・・・
<一週間以内には戦えるまでになってもらうぞ>
「いや、明後日までには力を使いこなしてみせるぜ」
月光が浮かび上がらせる剣の表情には自身に満ち溢れていた。
<言っちゃいましたねぇ。スパルタになりますよぉ♪>
などと嬉しそうに言っちゃってくれている青龍。
「ドンマイ剣ちゃん・・・・・」
ポンと肩に手を置かれる。
<男に二言は無い・・・・>
やる気満々の黄龍。
しかし剣は臆せずに・・・
「任せろっ!」
と得意げに笑ってみせた。

沙耶と再会して・・・黄龍達に会って・・・灯華を退けて・・・
剣の戦いはこれからなのだ。
まだ見ぬ力を持った敵・・・・・
朱雀・・・・・玄武・・・・・そして麒麟。
脅威はもう、そこまで迫っているかもしれないのだから・・・・・



posted by 姫野 at 11:33| 群馬 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | へっぽこノベル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年11月27日

13月の世界 〜a four leaf clover〜 14

最近のツボったニコ動画



大スズメバチに大爆笑。




ゼロがショット外したとこはマジで死にそうになったw



守衛痛がりすぎww
カレーかけんのww




おぉ!スターオーシャン発売まで後1月!!
PSP購入まで1月なんだぜ!!

とりあえずシロタマに借りたPSPでヴァルキリーばっかりな毎日。

チャプター1終わりました。
やはり神界転送の1人目はベリナスww
こうちはかなり好きなキャラだがきめ技弱いからなぁ、神界フェイズだと大活躍してくれるからおk。

それにしても最近思ったんだがジェラードって良く見るとツンデレみたいで可愛くね?

バーンストームで敵をバンバンふっ飛ばしまくってるぜ。
それとラウリィのエイミング・ウィスプだっけ?あの攻撃ガード不可だからマジ強い。それ以外の攻撃が弱いけどな…

リメイクとはいえもう何回もやってるゲ−ムだから変わった戦闘メンバーにしようと思うのでアリューゼは育てません。




はい、小説。
今週で終わっちゃうかも……

M トレーニング

「はぁ、はぁ、はぁ・・・・・」
ゴロリと時原家の玄関に転がり込む剣。
住宅ジャングルとの戦いにどうやら終止符を打ったようだ。しかしその代償はあまりにも大きかった。
剣は足の疲れ、何故か痛い右の小指、たまに感じる原因不明の後頭部の頭痛、お腹が空いている、何かもうどうしようもなくお腹が空いている、お腹と背中がくっ付く寸前、空腹1、空腹2、空腹4、何故か痛い左の小指などのダメージを負ってしまった。
それ故に彼は限界状態である。人間には個人差はあるものの1、2週間くらいは何も食べないでも平気らしいが成長期の剣には無理。というかこいつはただ単に人よりかなり食うだけではないだろうか?兎にも角にも玄関で転がっているのは浅神 剣その人である。
「剣ちゃんっ!?どうしたのっ?帰ってくるの遅いから心配したんだよっ」
そう思うなら探しに行くなど捜索願いを出すなどしてくれてもいいんじゃないだろうかと思ったりもするが如何せん彼は空腹により言葉に出せない。というか本当に捜索願いなんて出されたら困るが・・。
・・・・・現在の時間は午後6時34分。灯華と別れてからだいたい6、7時間は経過している。朝におせちを食べたのが7時半くらいだから剣はかれこれ11時間くらい何も食べていない。いや、食べようとすればコンビニでも何でも入っていって何か買えば良かったのだ。この男はどこか頭が悪いきらいがあるようである。それともお金が無いのであろうか?
「メシ・・・・・・」
それだけ言い残して剣は完全にダウンしてしまった。
きゅるる〜☆と目を回している。お〜っ、グロッキ〜♪。
「え?!剣ちゃん!!どうしたのよ?!」
あたふたと慌てる沙耶。
<沙耶、すまんが剣は空腹により一歩も動けないという言葉が適用されるくらいに空腹らしいのだ。何か剣のために食べ物を用意してもらえないだろうか?>
剣の代わり今剣が言いたいであろうことを沙耶に伝える。
「え?・・・・あ、はいっ、解りました。今すぐ作るんで待っててください」
言うと沙耶は台所の方に小走りで向かって行った。
<・・・・・いや、私に言われてもなぁ・・・・・>
黄龍は玄関にぶっ倒れている剣を見下ろしながら呟いた。

ドンッ!!
食卓の上にはそれは大きなドンブリのカツ丼が置かれた。もちろん剣専用である。しかし当の剣はというと・・・・・
「きゅるるるる〜☆」
まだグロッキー状態が続いているらしかった。
「剣ちゃんっ!!大丈夫?ご飯作ったんだけど・・・・」
剣の体をゆさりゆさりと揺らしながら懸命に起こそうとする。
「うぅぅ〜・・・・」
剣は最期の力(?)を振り絞って箸を持ちカツ丼に手をつける。
「がんばれ〜。剣ちゃ〜ん」
沙耶の良くわからない謎の応援を受けながら懸命にカツを口に運んでゆく。
<青龍、これはどんな料理なのだ?>
<カツ丼って言う庶民的なドンブリ物らしいですよ>
後ろの背後霊はなにやらアットホームな雑談に入っていたりもする。
パクリ
ふんわりした卵とアツアツの肉が口の中に広がっていく。
「はう〜」
何時間にも渡る断食の末にやっと辿り着いた久しく感じなかった『味』であった。
「おいしい?」
「う〜」
難語だ。剣の体にはまだ充分なエネルギーが回っていないのであろう。沙耶の問いかけに対してまともには返答ができていない。
「あははは、まぁ食べられるんならちゃんと全部たべてね」
「うう〜」
そう返事を返すと剣はまた箸をカツ丼に向けて伸ばし始めた。
パクリパクリとカツ丼を口に運んでいく剣。それを見ている沙耶はやっぱり男の子はこのくらい簡単に食べちゃうのか〜などと思っているかもしれない。しかし、それは間違いだ。剣の前に出されたドンブリは三人前くらいが余裕で入る特大なドンブリだ。何故こんなドンブリがこの家にあるのだろうかと思うがそこには触れないでおこう。とにかくそんなドンブリをガツガツ食べれるのは男子と言えどそんなにはいない。剣は例外なのだ。
そうこうしているうちに剣はカツ丼の半分は平らげている。
<しかし、剣の胃袋はどうなっているのだ?>
<食べ盛りなんですよ・・・>
<剣はいったいどんな食生活を送ってきたと言うのだ?>
どんな食生活?それは山のように積まれたコロッケを食べたり、さらにその後水餃子を食らったりする生活のことだろうか?
「おいしい・・・・」
栄養価が体に回ってきたのだろうか?剣はようやく喋れるようになったようだ。
「ほんとっ?ありがとう剣ちゃん♪頑張った甲斐があったよ」
体力が戻って来ている剣は残り僅かとなったカツ丼を食すべくラストスパートをかける。そしてあっという間にドンブリは空になってしまった。
「ごちそうさま」
「もっとゆっくり味わって食べてくれれば良いのに」
なんだか沙耶は剣の食べ方に少し不満があるようだった。
「ごめん、お腹空いてたからつい・・・・」
「まぁ、いいよ。今度作った時はもっと味わって食べてよね」
そう言いながら沙耶は剣の食べ終えた後のドンブリと箸を台所の流しに運んでいく。
そこでふと剣は一つ疑問に思ったことを聞いてみた。
「沙耶、その・・・眼が見えないのに何でこんなに美味しい料理が作れるんだ?」
先程のカツ丼は紛れもなく沙耶が作ったものであろうが、眼が十分に見えない彼女がいかにして料理を作るというのだろうか?
「あ〜、それね。理由は単純だよ、私の眼はどこに何があるかくらいしかわからないんだけどね、私ひとりじゃわからない細かいことは全部青龍さんが教えてくれるんだよ。砂糖とか塩とか私の能力じゃ全然わからないし、間違えたりしたら困るでしょ?」
なるほどと剣は納得する。自分では物やその動きしか把握できないから細かい表記などは青龍に聞くというのか。
<そうなのか青龍?>
<ええ、おかげで日本の料理の勉強にもなるんですよ>
まぁ、知識が増えるだけであって背後霊である青龍には料理を作る機会などないだろうが。
「それより剣ちゃん、こんな時間まで何してたのよ?」
痛いところを疲れた。何をしてた?と聞かれれば道に迷っていたということになるだろう。しかしそれは躊躇われた。仮にも自分は地元住民である。ワイルドに言い換えれば原住民である。アイヌなのである。いや、アイヌでは無いのだが・・・。その地元住民であるはずの己が自分の家の近辺で迷いましたなんてなんかカッコワルイ。ワイルドに言い換えればアイヌのはずなのに道に迷ったなんてカッコワルゥイ。いや、アイヌの人だって道に迷うこともあるだろうし、そもそも剣はアイヌじゃ無いって・・・。
ともかく事がばれてしまってはいけない。ここは適当にあしらって面子を保つべきである。
「あぁ、実は・・・・」
<いい歳して道に迷っていたのだ>
・・・・・・・・・・ガラガラガラァ
その瞬間に剣の端から見ればどうでもいいようなプライドが崩れていった。
「そんなことよりだな!!黄龍っ!!トレーニングだトレーニング!!」
コタツにドンと手を打ち付け剣が主張した。・・・・・ちょっと痛い。
「トレーニング?」
キョトンとした目で剣の方を向く沙耶。
「実は今日。昨日の夜に戦った女と偶然町で会ったんだよ」
「会ったってっ、危ないよ剣ちゃん!平気だったの!?」
聞くまでも無い。今の剣の状態を見れば平気かどうかは知れたことである。
「俺は全然平気だった・・・・だけど、力の差ってのを見せ付けられたんだ。今の俺じゃあ勝てないって解ったんだよ。だから俺は強くなりたい・・・」
<家に帰ったら修行だとうるさくてな、少し時間はかかったが今からするとしよう>
「つ〜わけで庭借りるわ」
さくさくと剣は庭に向かって行った
がしかし・・・
「ちょっとっ!!そんなの許せるわけないでしょう!もしお婆ちゃんとかに見つかったらどうするの?!」
静止された。しかしそれもそうだろう、ここにはお婆ちゃんがいる。そして街の中でもあるのだ。こんなところで力はそうそう使えるわけがない。
「全然考えてなかった・・・・・」
「はぁ〜・・・」
がっくりと項垂れる沙耶。
「裏山の林道・・・・そこなら夜中に人も通らないと思うからそこでトレーニングしなよ」
剣の落ち度をフォローしてみたりする。
「お前、こっちに来たばっかりなのに何か地理に詳しいな・・・・」
「こっちに着いてから色々調べて回ったし、元は地元なんだよ?これくらい把握してないと」
そう胸を張って言い切られた。現在進行形で地元住民である剣は元地元住民である沙耶に地理でも劣ると言うのか・・・・と少ししょぼくれた。
しかし・・・
<いや、庭で構わない。修行と言っても内面的なもので『力』を表には出さないものだ。他人を気にする必要は無い>
「・・・・・・・・・・まぁ、人目に付かないなら文句は言いませんけど」
<剣にはまずその『力』の流れをコントロール出来るようになってもらう>
<剣さんの扱う黄龍様の力は強大ですからね。誤って使うと大変危険ですからみっちりと扱かれてきてくださいね♪>
随分と楽しそうに言ってくれる青龍。『みっちり』の部分に何か引っかかるものを感じながらも自分で言い出したことだしと庭へと剣は向かって行った。・・・・・『むっちり』だったら何か期待が持てた気がしないでもない。

まず始めに・・・・・
<力を使うな>
と言われた。いまいちピンと来ない。ならばどのようにして修行をするのであろうか?
<正確に言ってやるとだな、剣は昨夜のように神霊達の力を取り込むのだ。しかし今回はその膨大な力をコントロールするのが目的だ。取り入れた力を具現化せずに自分の体の中だけで循環させるのだ>
「力を自分の中だけで循環させる・・・・あの膨大な力をか?」
昨夜の剣に流れ込んできた神霊の力とやらは恐ろしいものがあった。正直あの時は沙耶を守るために無我夢中でもあったので力のコントロールなど自分では出来ていないようなものだった。
<けっして力を外に漏らすな、自分の中で自在に動かせるようになることが今夜の目的だ>
黄龍は簡単に言ってくれるが実際にあの力を抑えるとなると・・・
剣は不安にかられつつも自らのスキルアップの為、神経を研ぎ澄ましてゆく。
「・・・・・・・」
<いいか?私が止めろと言ったら力は全て元ある場所に返せよ>
「解った、やってみる」
シンと静まりかえった庭で剣は念を込め周りのエネルギーに呼びかける。
少し、また少しと剣の中に力が集まってくる。
身体が温かみを帯び、そしてそれはしだいに熱に変わって行く。
身体に際限なく力が流れ込んでくる。昨夜の戦いではうろ覚えであるがこの辺りの段階で己の得物、『黄金の神剣』をイメージし、そして具現化させていたなと剣は思った。
しかし、黄龍は力を自分の中だけで循環させろと言った。つまり神霊達の力を取り入れつつも武器として身体の外に吐き出してはいけないということ。その場合凄まじい力は自分の中で蓄積されていく。黄龍が<止めろと言ったら力を元ある場所に返せよ>と言ったのは多分、力を使う剣、即ち器が力の波に飲まれ壊れてしまうからなのだろう。
剣の中に循環する力は次第に加速して熱を更に上げていく。波を打ち、荒れ狂うように内側から剣を叩き付ける。
「痛ぅっ!!」
声が漏れた。それを合図にしたかのように剣の身体のなかでは行き場を無くした力が内側からガンガンと打ち付ける。
<剣、痛みに臆するな。お前の中に流れる力はお前の力なのだ。自信の力に脅えるな。従えろ。自分が力の持ち主、力の主であるということを>
なおも内側からの痛みが続く。むしろ痛みは1秒ごとにガンガンと増していっている。
そんな中で剣は黄龍に言われたようにただ力をコントロールしようと努めた。
・・・・俺が主だ、俺が主だ。従え、従え。
自分の中に流れる力に呼びかける。
しかし、痛みは一向に静まる気配は無い。この瞬間にも新たな力が外から流れ込んでくる。

ドクン・・・・・ドクン・・・・・
自身の心臓が脈打つ鼓動が聞こえる。
ドクン・・・ドクン・・・ドクン・・・
全身に絡み付くような痛みを覚えながらなおも力に呼びかける。
・・・・従え、従えっ。俺に従えっっ。お前らは只俺の中をグルグル廻ってれば良いんだよっ!!
呼びかけは、もはや叫びに変わっていた。
ドクン・ドクン・ドクン・ドクン・――
体内を熱く激しく踊り狂うように流れる力。
朦朧とする意識の中で抗えない恐怖を見た。
<・・・・剣っ・・・・・いい・・・から・・・止め・・・>
微かに黄龍の声が聞こえる。
目の前には暗闇、背後を振り返れば暗黒。足元は不安定な混沌。天を見上げてもそこに散りばめられた星屑も浮かび輝く月もなく延々と続く漆黒で塗りつぶされていた。
黒・・・黒・・・黒・・・
その場から逃げ出したい恐怖に刈られ、剣の意識はそこで途切れた。
posted by 姫野 at 12:31| 群馬 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | へっぽこノベル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年11月17日

13月の世界 〜a four leaf clover〜 13


こんにちは、シロタマです。現在21歳の姫野さんの寝顔の横にいます、フラグが経ちました。でも私はガチホモではありませんのでそこんとこよろしく〜狽ac…

正直に言うとこなたタイマーでニヤニヤ(゜∀゜)してる姫野さんの横に居ます。
姫野さんが倒せなかったのはクックじゃなくてティガレックスだったわ。
無理ですよ〜。


俺→ヽ( ゚д゚)ノ┌┛)д゚)←シロタマ


あ、正真正銘の姫野ですこんにちわ!!
シロタマはこの後エアリアルコンボでフルぼっこにしておくわ。




L 戦う理由――― fate of force

神社の裏は静かであった。遠くから聞こえる新年の喧騒もそこでは老いた木々のざわめきに呑まれ消えてゆく。乾いた風は頬を撫で消えてゆく。
・・・・・・
少女の声が聴こえ始めた。
「私ね・・・・事故に遭ったんだ。大きな大きな交通事故。今回の戦いに対してのキッカケはそれかな・・・」
尚も続けて沙耶は口を動かす。それは哀しい愁いを帯びた声だった。
「自分の意識が戻った時には目の前は真っ暗だった。夜だった。でも違かった・・・・・それはただ私の眼が見えなくなっただけの話し。剣ちゃん・・・・私ね、こんな不自由無く動けるのに眼は見えないんだよ。おかしいよね」
―――・・・そう言いながらも沙耶は剣に無理に笑ってみせる。
「眼が・・・・見えない?何でだよ?今日だって普通に歩けてたろう。何になんでだよ?」
沙耶は自分の眼が見えないと訴えた。しかし沙耶と出会ってからそう感じたことは少なくとも無かったはずだ。
何故彼女は眼が見えないのか?もしそうだと言うならどうやって彼女は昨夜、あれほどの戦闘をこなしてみせたのだろうか?剣が疑問に思うのもおかしくは無い。
「全部青龍さんの力のおかげ。ベッドで横になる私に力を貸してくれたの。私は周囲の音――振動を探知して周りを『観ている』の。剣ちゃんが今どこに居るか解るし人込みの中だって歩いていける。でも色なんか解らないし剣ちゃんの表情だって窺えない・・・」
彼女の瞳・・・・パッチリと開いてはいるがその眼は光りを映してはいなかったのだ。彼女は力により周りを観ている、感じている。しかしそれは仮初の物であり少女はその力だけで道を切り開こうとしているのである。
「・・・」
予想にもしなかった事であった。自分の前で笑っていた沙耶は眼が見えないなんて。少し心が曇ったように落ち込んだ。
「じゃあ・・・沙耶は自分の眼が見えるようになるために戦かっているのか?」
戦い、契約をした者は目的達成と共に幻獣の力により願いを一つ叶えてもらえる。ならば沙耶の願いは自身の眼を・・・光りを取り戻すことではないだろうか?
「違うよ・・・・・私の眼より大事なのことがあるの。」
沙耶は高い虚空を眺めた。
「その事故でね・・・私のお母さんね・・・・亡くなっちゃたんだよ。だから私が助けてあげなきゃって思ったの」
「そんな・・・・」
風が二人の肌を凪いでいった。ざわざわと木が揺れる。
沙耶は母親を助ける為にこの戦いに参加している。それが彼女の戦う理由―――運命であった。
「お母さんが居なくなっちゃったから私はお婆ちゃんのとこにきたの・・・。だからこうして剣ちゃんにも会えた。せっかく再会出来たのに剣ちゃんの顔が解らないのは残念だけどさ・・・・」
「沙耶・・・・・・・」
「さ、こんなしんみりしちゃう話しはもうお終いっ。今日はお正月なんだよ。こんなブルーな気分になってどうすんの?私は別に・・・・・・大丈夫だからさ。大丈夫だから・・・絶対・・・・」
沙耶の瞳からひと雫の涙がこぼれた・・・・
「だから絶対・・・・・この戦い。終わらせようね」
剣はそっと自分の胸に沙耶の身体を抱き寄せた。
「沙耶・・・・絶対生き残ってやろう。俺がずっとそばにいてやるからな。だから絶対大丈夫だよ」
沙耶は寂しかったんだ・・・目が覚めたらそこは暗闇で暗黒で深淵だったんだ。いくら青龍に力を借りたと言っても沙耶はまだ18歳の女の子じゃないかよ。それが、母親が死んで、視界も無くなるなんて辛いよ・・・・・なのに沙耶は残された道を、運命を必死に歩んでるじゃないか。
「剣ちゃん・・・・やっぱりいつも・・・・・・・・。ありがとう・・・ね」
沙耶は潤んだ目を手でこすり・・・剣の腕の中で温もりを感じていた。

それは小さい頃にも感じた・・・変わらない剣の温もりであった。

――――・・・・・・・・・・
「恋歌(れんか)、明けましておめでとう。今年もよろしくな」
けして広いとは言えない空間に葉月の声が響く。白い壁、白い天井。ポツリと取り残されたような小さな窓からは陽光が差し込み室内を照らす。
「あ、葉月君。明けましておめでとう。今日は天気が良いよね」
その室内には一人の少女が居た。恋歌と呼ばれた小柄な体型の女の子・・・歳は17、18といったところであろうか。ベッドの上に座っている彼女の瞳は綺麗に澄んでいた。
ここは病院、そしてベッドに座る少女は入院患者であった。部屋の扉の横には【市澤(いちざわ)恋歌】と記してあった。それが少女の名を表わしていた。
「今日は本当にいい天気だよな。だからさ、先生に許可もらって散歩に行かないか?俺この前の日曜にすっごく気持ちのいい気分になる穴場見つけたんだ」
気候は冬なので寒いのだが今日は確かにいい天気である。葉月が少女を小さな病院の個室から連れ出し外の世界へと散歩に行こうと誘うのも無理は無い。
「葉月君・・・ありがとうね。こんな私の為にいろいろ優しくしてくれて」
「何言ってんだよ。俺と恋歌の仲だろ?変な事は考えないで元気な体になることを考えろよな。・・・・・っとそんじゃあ俺、先生に外出許可もらってくるわ」
そう言い残すと葉月は病室のドアを開け廊下を進み始めた。
「・・・・・本当に今日はいい天気だなぁ。葉月君も居てくれるし、新年早々幸先が良いよ」
少女、恋歌は窓の外を眺めながらそう呟いた。

恋歌は病院に入院していた。これはもちろん彼女が病人であるがゆえである。彼女は昔からこの山鹿総合病院に入院していた。幼い頃から・・・この病院が恋歌の家だった。この病室が恋歌の鳥かごでもあったのだ。
ただ部屋は白く・・・清潔であった。
パチンッ♪
手の平を叩いてみる・・・・・
ベッドの横の机にはいつぞやのダンシングフラワーが踊っていた・・・

――――・・・・・・・・・・
住み慣れた街で迷うこともたまにはあってもいいんじゃないだろうか?
「ここ・・・・俺の生活圏内だよな?」
迷った・・・・・。
剣は朝に初詣でに行ったあの後の帰りに自分の家から昨日運びきれなかった荷物を持っていこうと思い、沙耶を先に帰らせたのが間違いだったのであろうか?
時刻は・・・・午前11時付近。新年にお約束なスポーツ競技がブラウン管の中で発光しているだろうな・・・。
迷い込んだのは細い道。釧路に生を受けてから18年間。今まで通りそうで通らなかった道。今になって何故そんな得体の知れない道に入ってみようなんて思いついたのか?激しく後悔をしてみる。
周りには見覚えの無い住宅ばかり。玄関前の表札には田中、岸、喜田、森ノ目とこちらも同じく見覚えが無い。住宅ジャングルはそこにあった。
「つーか何でこんなに複雑な道なのだ?」
愚痴りながらも剣は道を選択、前に前進していく。己の直感を信じて自宅を目指す。
外に出ている人も少ない。この時間はやはり家の中でゆっくりとテレビを観るのがベストなのであろうか。

「こんにちは・・・・・剣とか言う名前だったっけ?」
どこかで聴いたことがあるような声に呼びかけられて振り返る。
「お、お前はっ・・・・・」
そこに立って居たのは灯華だった。背後に白い巨獣も確認できる。
<明けましておめでとうってか>
白虎からも挨拶をされた。
「ち、こんなところでっ」
瞬時に剣はバックステップである程度灯華との距離を取る。
それを見た灯華はクスクスと笑い出した。
「キミ、そう構えなくてもいいわよ。私は昼間っから殺しあうような趣味はしてないから」
<新しい年からギスギスしたのは嫌なのだがな。剣はどうする?>
背後にいる黄龍も会話に混ざり出した。
どうやら灯華に戦闘の意思は無いらしい。しかし、だからと言って警戒をやすやすと解くわけにはいかない。相手は憑人、剣の敵であるには変わりは無い。剣は灯華と間に一定の間隔を維持する。
それを見て灯華は両手を軽く持ち上げやれやれといった感じのボディーランゲージをしてみせる。
「だいだいキミ程度のひよっ子なんてあの変な糸使いの女さえ居なければ今すぐにでも殺せるのよ。解る?この場では私がイニシアチブを持っているの。もう一度言い直してあげるけど私は昼間から殺しあうような趣味じゃないの。気楽にしてなさいよ。こっちまで疲れちゃうじゃないの」
<俺も昼は休業したいんでな>
灯華が言うには警戒をしていようがしていまいが剣程度の人間ならいつでも殺せるから無駄なことをするなと言いたいらしい。
「ふざけるなっ、俺だって戦える!」
強く言い返す剣。
<だが剣、主はまだあの力を抑えきれていない。自身でコントロール出来るようになるには今しばらく時間がかかるぞ>
黄龍の言うことは正論である。彼は一度しか力を発動させてはいない。明らかに場数が灯華とは違うのである。その証拠が・・・・・
「遅い。全然ダメ〜っ。キミ1回死んだよ」
いつの間にか後ろから首に右腕が回されていた。しかし昨夜のような風の渦は巻き込んでいなかった。
「な、クソッ!」
「あ、それがレディに対する態度なの?」
回された腕を払いのける。灯華は剣を敵として見てはいなかった。
<今日はゆっくり休もうぜって言ってるんだ。素直に聞けよ>
灯華の動き・・・剣には捕らえることができなかった。実力の差を思い知らされたのである。
「あのねぇ、殺し合うにしても時と場合を考えないさいよ。こんな昼間でここは住宅が立ち並んでいるのよ。他の誰かに迷惑がかかるかもしれないでしょ?もう少し考えて行動しなさい」
ピシャンと言い切られた。
「はぁ?」
剣は不思議そうな顔をする。昨夜の灯華のイメージに合わないのだろう。好戦的で目的達成の為にはどんな犠牲も厭わない・・・・・剣の中にはそんなイメージがあった。
そんな表情から読み取ったのか灯華はまたも両手を軽く持ち上げやれやれといったボディーランゲージをする。
「あのね、私・・・一応憑人である前に18歳の普通の女の子なんですけど・・・・・・私だって好き好んで人なんて殺したくないわよ」
と、ため息混じりに言う灯華。
「幻獣との契約で叶えたい願いがあるから他人を蹴落とすのよ。そうでもなけりゃあこんな戦い息が詰まりそうだわ」
いきなり灯華が身近な存在に感じられた。いくら敵であると言っても灯華も人間なのだ。自分と同じ、強い信念を持って戦いに混じったに違いないだろう。
「今は何もしないけど・・・・・今度会った時は解らないからね。私がキミを殺すことは変わりないんだからさ」
「俺の名前は剣だっ!キミとか言われると調子狂うから止めろ」
「あら、そう。ごめんなさいMr.剣」
<そん時は黄龍・・・てめぇの力は俺が頂いてやるからな。安心して逝けよ>
・・・・・・・・・
<お前は気性が荒いからな、心配でそうやすやすとは逝けんよ>
<へっ。そいつは怖いな>
白虎・・・・都に使えた白い猛虎。風の加護を受けた彼は最速であった。戦場を嵐のように駆け抜け敵を切り裂く。黄金の龍の記憶には白虎と戦った幾多の戦いが思い浮かんでは消えて行った。
・・・・・所詮は戻れぬ過去の話しよ
「灯華、一つだけ聞きたいことがある」
剣が口を開く。
「何?3サイズは?とか言ったら原始的方法でボコるけど」
原始的・・・・・・・平たく言うと拳であろうか?
「戦いに他人は巻き込まないって言ったのは本当か?」
「マジに決まってるでしょ、私にだって血も涙も通ってるもの、誰かが傷ついたり、失ってしまうのは哀しいことだから・・・・・」
その時の灯華の顔は数時間前に見た沙耶の顔と同じような愁いを帯びていた。
彼女にも何か辛い過去があったのだろう。
「あの糸女に言っときなさいよ。私と殺り合うなら他人の目も考えろってね」
そう言い残すと灯華は剣の来た道を歩いて行った。
<先日の戦闘で感じてはいたが・・・・あの娘、手強いぞ>
「黄龍。帰ったら俺にもっと戦闘とか力について教えてくれ」
力が欲しい。今のままでは戦いに参加はできてもまともにやり合うことは出来ないだろう。それは先程の灯華に遊ばれたことで痛感した。
<それは構わんが・・・・・いつ帰れるんだ?>
――――・・・・・
「とりあえず昼までにはなんとか・・・・・・」
左の腕の時計を見る。
すでに時刻はランチタイムにいい感じの時間になっていた。
グキュルルル〜
「あ・・・」
腹の虫が鳴る。警戒発令・・・警戒発令・・・私はおなかが空いています。という状態。
「黄龍・・・・」
<なんだ?>
「助けてくれ」
<知らん>
「やはりドラグーンボールを揃えないとダメなのか?」
<ドラグーンボール?何だか知らんが歩け。主には自分の足があるだろうに>
お父さん、お母さん、釧路の風は今日も冷たいです。
posted by 姫野 at 09:25| 群馬 ☁| Comment(2) | TrackBack(0) | へっぽこノベル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年11月16日

13月の世界 〜a four leaf clover〜 12

Say answer
You say
Your answer in your calling



あ、今日は以外と仕事中に寝てたりする姫野です。

友達のシカからPSPとモンハン2借りてやってるんだけどクック倒せません。無理です。

結局そうっ!!いっつもそうっ!!

ものすごい挫折感。
そんなことより早いとこシカと一緒に狩りに行きたいです。

あー!!今、逃げでやってるGジェネポ−タブルの1面でトルネードガンダム撃墜されるとか俺どんだけwwww


じゃあ続きね。
うん、つまらないでしょ?
10の話しがヒートし過ぎて書いてて俺も萎え萎えだったもんよ↓


K new year 〜夏の日差しと冬の神社〜

〜そこは草原だった〜

どこまでも、どこまでも続く青い大空と 

同じように

どこまでも、どこまでも広がる緑のじゅうたん。

四方に八方。
どこまでも・・・・・
「すぅ〜」
大きく息を吸う。
大自然の大地に流れる風は優しく、全ての痛みや悲しみを包み込むような暖かさがあった。
輝く太陽の光も身体を陽気に照らす。
その草原の真ん中にポツリと寝転がった剣が居た。
「気持ち良い・・・」
何をするでもなく。何かがしたいわけでもなく。
時間の流れに身を任せ。ゆっくりとした時を過ごす。

「何してるの、剣君?」
いつの間にか脇に誰かが立っていた。
「鞘・・・・・」
・・・・・朽木 鞘だった。
白いワンピースに麦わら帽子をかぶってニッコリと笑ってくる。
ゴロリ
鞘も剣の隣り・・・草原に転がる。
「な〜んにも無いね・・・・・」
「な〜んにも無いな・・・・・」
二人は何をするでもなく。何かがしたいわけでもなく。
時間の流れに身を任せ。ゆっくりとした時を過ごす。
「気持ち良いね・・・・・」
「なぁ、鞘・・・・・俺はお前を助けられるかな?」
・・・・・
「剣君、頭悪い」
「・・・・・」
そっと鞘の手が剣の手に触れる。
「私はもう剣君に助けられてるよ。それこそ感謝しきないくらいに・・・・・私はもう『居ない』の、だけど夢の中なら剣君にはいつだって会える。夢の中なら大地を踏みしめて風を切って走ることも出来るし剣君の温もりだって感じられる。それに・・・・・」
鞘が何かを言おうとしたその時には、隣りに居た鞘はもう消えていた。
風が流れる緑の草原。青を眺める緑の草原。
「・・・・・俺の成績は学年上位だぞ・・・・・」
そこは、そこは・・・・・心地の良い空間であった。

「剣ちゃん、起きて。もう朝だよ。新年だよ〜っ」
「ん、鞘・・・・・」
「ハイハイ起きましょうね〜っ」
違う
沙耶か・・・・・
沙耶は手にもった手に持ったフライパンとオタマをガンガンとたたき合わせて随分と古典的な方法で喧しく剣を起こす。
「っ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」
ガンガンと頭に金属音がダイレクトに侵入してくる。
「起きるっ、起きるっ!ストップ!スト〜ップ!!」
半身を起こし慌てて沙耶を静止させる。
「おはよう剣ちゃん♪」
「おはようございます・・・・・」
無理矢理たたき起こされた剣はあまり目覚めが良くない様子。まだ重いまぶたを手で擦り頬を軽く手の平ではたく。
「明けましておめでとう、剣ちゃん」
「アケマシテオメデトウゴザイマス・・・・・」
・・・・・まだ起ききれてないのか?剣はもう一度手の平で頬をはたく。
「明けましておめでとう、沙耶」
「うん♪朝ご飯の用意出来てるから準備が出来たら居間の方に来てね。それじゃあまた」
そう言い残して沙耶は剣の使わせて頂いている客間の扉を開けて去っていった。
部屋の中に一人になった剣。
「目覚まし以外で起きたの・・・・・初めてだよな?」
自問自答。
「目覚まし以外の起き方って大変なんだな」
剣はベッドから立ちあがり着替えを始める。
「寒い・・・・・」
部屋の空気は冬そのものであり、身体を震え上がらせる。何時ぞやの陽気な太陽光はもう身体に感じることは無かった・・・・・

ススー
居間の畳部屋、引き戸を開けて中に入る。こういう造りを見るとこの建物は洋式の屋敷と日本文化独特の屋敷が混ざり合ったキテレツな屋敷だと感じる。
「おぉ、剣ちゃん。明けましておめでとうございます」
「明けましておめでとうございます、婆ちゃん」
現屋敷の主である沙耶のお婆ちゃんに挨拶を交し昨日も活用したコタツの中に足を潜り込ませる。
「豪華だな・・・・・」
豪華・・・・・それは目の前に広がるおせち料理のことであった。新年と言えばまずはこれであろう。色とりどりに並べられた品の数々は目を喜ばせ食欲をもかりたてる。まさに豪華絢爛。
「お婆ちゃんと私で作ったんだよ。しっかり味わって召し上がってね」
<・・・・・・・・・>
流石に声には出さないが黄龍も日本のおせち料理に興味を覗かせる。無論見ているだけなのだが。
「いただきます」
三人が同じタイミングでいただきますをする。剣は好物である栗きんとんに真っ先に手を伸ばす。掴み、口に運ぶ。濃厚な甘味と栗の少し固い食感がたまらない。
「やっぱり最初に栗きんとんに手を付けると思った。昔から好きなのは変わらないね」
「まともに食えるのはこの時期だけだしな。ここでしっかりと味わっておかないと・・・」
お婆ちゃんも嬉しそうに笑っている。食卓が賑やかなのが喜びなのであろう。
沙耶も刺身を口に運び始める。剣は何度も沙耶とおせち料理食べたことがあるが沙耶が最初に口に運ぶ料理、好物なんて覚えていない。
「二人は初詣でには行くのかい?」
お婆ちゃんがそんなことを聞いてきた。これも新年の慣しの一つである。
「私は行くから当然剣ちゃんも連れて行くよ」
などと沙耶は答えを返す。剣の意思はどこにも含まれていない。
「・・・・・俺も行くのか?」
「当然」
思い出した。沙耶は昔から強引なところがあったんだ。俺の意見をねじ伏せて俺を引っ張り回す。そんなやつだったんだ。と心に思う剣。
ズズっとお雑煮を口に流し込み沙耶を観察する剣。
・・・・・やっぱりオトナになったんだなと感じる。沙耶が親の都合で本州に引っ越した時はまだ小学6年生。二人ともまだ12歳だった。時の流れは早いな。
そういえば沙耶はいつ北海道に戻って来たのだろうか?剣はその疑問を後で聞いてみようと思った。

「剣ちゃ〜んっ!!用意できた〜?」
玄関の方で沙耶が呼んでいる。
「はいはいっ。今行くからな〜!!」
屋敷の奥のほうから足早に剣がやって来る。
「ハンカチとティッシュ持った?」
「いらんっ」
「そーですか」
ガラリ
玄関の引き戸を開ける。吹き込む冷気に耐えながらも外界へと踏み出す。
「寒いっ、寒いっ、寒いっ、寒いっ!!」
「うるさいよ剣ちゃん」
こうして二人は一路近くにある神社へと出かけていった。

鳴鎌大社(めいれんたいしゃ)

ここは剣達が住むエリアの中では一番近く大きい神社である。毎年そうなのだがこの時期は人でごった返す。
「今年もたくさんいるなぁ」
素直な感想を出す剣。
「私、久しぶりに来るなぁ・・・」
沙耶はゆっくりと人の波を歩き出す。それに剣も続く。
「なぁ、沙耶・・・・・お前いつこっちに戻って来たんだ?」
歩を進めながら剣が沙耶に問い掛けた。
「昨日だよ。フェリーで釧路港までね」
「昨日!?まだ戻ってきてから本当に全然経ってないじゃんか」
「そ〜だね。帰ってきて街を散策してたら黄龍さんが目覚めたからそっちに行ったら剣ちゃんが居て。そんでもって上陸初日で戦闘までしちゃったね」
こう改めて振り返ってみると釧路に戻ってからの沙耶はかなりハードな時間を過ごしたのだと感じる。
「いや〜♪まさかイキナリ戦闘になるとは思いもよらなかったけどね〜」
「俺は最初は何が何だかサッパリ解らなくて困ったがな」
先日の白虎、そして憑人の灯華との戦いは本当に突然だった。剣は沙耶が居なかったらもう死んでいたのかもしれない。戦いと言うのは本当に危険なのだ。
「ま、お互い無事で生きてるんだからさ、今は新年を楽しもうぜ」
「うん♪」
と、そうこうしている内に神社の前まで来てしまった。目の前には賽銭を投げ鐘を鳴らす参拝客が居る。
次は剣達の順番。
「てや」
賽銭を投げる。鐘を鳴らす。
・・・・・願掛け。その内容は解りきったことであった。
願掛けを終えた剣がそっと瞳を開けて沙耶の方を見る。
「・・・・・」
沙耶はまだ何かをお願いしているようだ。そうだ、沙耶の願いはいったいどういったものなのであろうか?もちろん沙耶が今願掛けしていることではなく、青龍との間に結んだ契約の報酬。その願いについてだ。
りんとした沙耶の横顔。彼女は何を目的にして戦いに身を投じたのか?
沙耶の瞳が開き剣の方を向く。
「終わったよ。これからどうしよっか?」
彼女にはまだわからないところがたくさんある。剣は沙耶についての疑問点を解消するために・・・・・また沙耶という人間を再確認するためにこう言った。
「神社の裏・・・・・沙耶のこともっと知りたい」
「えっ!!?」
沙耶の顔がみるみる内に赤色に染まっていく。なるほど、神社の裏と言えばあまり人の寄り付かない場所であり鳴鎌大社も例外では無い。剣はその場所でじっくりと沙耶と話したいという要求のつもりで言葉にしたつもりなのだが変に勘違いされている。
「嫌か?」
それに全く気が付かない剣も剣であった。そんな台詞を使えば火に油である。
「嫌ってわけじゃないけど・・・・・まだそう言う関係じゃないし・・・・・」
「そう言う関係って、もう十分そう言う関係だろ?」
剣の理解したそういう関係とはたぶん色々話せる友人という意味だろう。もちろん沙耶の言うそう言う関係とは剣の考えている関係とはおよそ違う。
「とりあえず嫌じゃないなら行こうぜ」
そう言うと剣は沙耶の手を取り神社の裏へと歩いていく。
ドキリ
沙耶の中で心臓がバクンと小高く跳ねる。
「ちょ、ちょっと剣ちゃんっ」
尚も赤面をしたままの沙耶。剣に引っ張られるままに神社の裏側まで運ばれて行く。

到着。時間にして2,3分。神社の裏側の渡り廊下に並んで腰をかける。
「―――っっ」
以前沙耶は顔を赤くして心臓をバクバクと回転させている。これから剣がすることを履き違えている。剣がどんな行動に出るのかとチラチラしきりに剣の方に眼を向ける。
「沙耶、何か顔赤いぞ。大丈夫か?」
ビクッ
「だ、大丈夫だよっ。平気、平気―――っ」
身体が強張り緊張している沙耶。
「そっか、じゃあ聞くぞ。沙耶はどうしてこっちに戻って来たのか?それと沙耶が何のために戦いの中にいるのかを俺は知りたい」
「―――」
沙耶は停まっていた。表情一つ動かないただの石のようになっている。
「別に喋りたくないなら言わなくても良いんだけどさ」
今だに固まっている沙耶。先程の言葉と神社の裏に入るまでの勝手な創造の間で支障が生じたのだろう。固まっているのは情報の処理が追いついていないから・・・・・まるでパソコンのような仕組みであった。
「―――っっ!!」
ボンッと言う音と共に沙耶の頭から煙が出たような気がした。自分がかなりの勘違いをしていたのがようやく理解できたのであろう。
「沙耶?」
沙耶は下を向き自分の顔の赤面を必死に隠す。
「何でもないっ!!ちょっと待っててっ!!」
「うぉぅっ」
少々気圧される剣。その後二分くらい待って沙耶がこっちに振り返る。
「準備できた」
その沙耶の顔は少し頬に赤みが残るものの、いつもの沙耶の顔に戻っていた。
「何だか良くわからんが平気か?」
素直に具合が悪いのかと思った剣は沙耶に気遣いの言葉をかける。
「もう平気。ちょっと表情の筋肉が変になってただけだから・・・」
それも充分おかしな話しだ。
「じゃあ、もう一回訪ねるけど・・・沙耶はどうしてこっちに戻って来たんだ?お前は何の為に戦ってるんだ?沙耶が平気なら俺は聞きたいんだけど」
少女、沙耶は先程も問われた質問を頭の中で咀嚼し、少しばかり俯いた表情になる。大地を駆け抜け虚空を舞う・・・生と死の狭間で秒刻みでおこなわれる命のやり取り。その戦いに身を置いたからにはもう後戻りは出来ない。彼女にはそれだけの覚悟があったのだ。ならばその覚悟の根源とはいったい何なのか?
沙耶はゆっくりと・・・・・唇を開けて語り出した。

それが彼女の戦い。それが彼女の希望。それが彼女の運命であった。
posted by 姫野 at 11:57| 群馬 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | へっぽこノベル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年11月15日

13月の世界 〜a four leaf clover〜 11

Bless your load
Bless your song
Bless your Bless



ハイどーも郵政民営化してから今日初めて銀行行って来ました姫野さんです。

なんだ、昨日テレビで見たけど姫ファッションてのが流行ってるらしいな。

ゴスロリは好きだけど姫ファッションはちょっと……
と俺は思うんだがどうよ?ん?どうなのよ?

あ、俺ですか?
俺は何着ても姫ファッションになりますデフォです

…っ誰だ!!今ふんどしをバカにしたやつはっ!!??


あ、小説ですか?
話しぶっ飛んだだろ?
そうだろ?

しかしほんと文章能力にバリエーションがねーな。


J どーしてそーなる そーしてこーなる

「お婆ちゃんただいまぁ〜」
と声を出し自分の自宅に帰還する。
「おかえりさっちゃん」
屋敷の奥の方から沙耶のお婆ちゃんがやってきた。
「おやまぁ、何か知らんけどはでに汚れてるねぇ。どうしたんだい?」
「ちょっと転んじゃった。えへへへへ」
まさか人知を超えた戦いをしていましたなどとは言えない。
「じゃあ先にお風呂に入って来なさいな」
お婆ちゃんは頭を傾げはしたが沙耶のことを考えそう促した。
「あ、お婆ちゃん・・・・・ちょっと頼みたいことがあるんですけど・・・・・」
言い難い・・・・ということが手にとるような表情をして沙耶は声を絞り出す。
「なんだい?言ってみなさい」
お婆ちゃんのその優しい声での問に沙耶は少し安堵をついた。
「小さい頃良く遊びに来た剣ちゃん・・・・知ってるよね?」
「あ〜、あのさっちゃんといつも一緒だった子か。良く覚えてるよ。あの子は良い子だったよぉ。しかしその剣ちゃんがどうしたんだい?」
すぅー。はぁー。
深呼吸・・・・・言いたいことを頭の中で整理する。
「そのね・・・・えっと〜・・・・その剣ちゃん・・・・・・・・・・この屋敷に住ませてあげても良い?」
言った。言ってしまった。
「おぉ、そんなことかい。別にかまわないよ。しかしまた何でこの屋敷に住みたいんだい?」
沙耶が言い辛い事を言ったというのにあっさりとお婆ちゃんはその用件を承諾してしまった。沙耶も少し嬉しそうな顔になる。
「実はねぇ・・・・」
そう沙耶が言い出したところで沙耶よりも頭一つ分大きい人間が玄関の中に入ってきた。
「沙耶、後は俺が自分で説明するよ」
剣だった。そう、剣は沙耶が玄関の中でお婆ちゃんと話しをしている間に外で待っていたのである。
「今晩は婆ちゃん。久しぶりぃ」
と片手をひらひらと動かしながらまずは挨拶をする。
「おぉおぉ、剣ちゃん。居たのかい、随分大きく育ったのぉ」
お婆ちゃんは思いもしなかった珍客に喜びを隠せなかった。
「ああ、最期に婆ちゃんと会った日から5、6年は経ってるからな」
「さぁさぁ、こんなところじゃなんだ。中にお入りよ」
そう言ってお婆ちゃんは居間の方に歩いていく。どうやらお茶の準備でもするようだ。
「だって剣ちゃん。上がって♪」
ニッコリと沙耶は嬉しそうに笑う。
「まぁ、一応そのつもりで来たわけだし、遠慮なく上がらせてもらうぞ」
二人は靴を脱ぎお婆ちゃんの後を追って居間の方へと歩みを進めて行った。
「しっかし、懐かしいなぁ〜。玄関のタヌキの置物とかそのまんまじゃねぇか」
「あの趣味の悪い置物ねぇ♪やっぱりまだあるんだ・・・・・」
「まだあるんだ・・・って何言ってんだお前?さっき玄関に置いてあったの目に入らなかったのか?」
「えっ、あ、あぁ、うん。ちょっと見落としてたかなぁ〜」
ははははは〜♪と沙耶は笑う。
「すぐ隣りであんなに存在感を放っていたのに・・・・・ボケでも始まったか?」
剣は首を傾げながらもお婆ちゃんの待つ居間へと辿り着いた。

「さぁ、寒かったでしょうに。コタツに入ってなさい。今お茶が入るから」
そう言って今度は台所の方へと消えていくお婆ちゃん。何とも良く動き、気の利く人である。
「おぉ、このコタツまだ使ってたんだぁ」
剣は何だか暖かい気持ちになりコタツの中に足を潜らせた。そして部屋で汚れた服を着替えて来たのか、赤いセハイネックに少し短めなスカートに身を包んだ沙耶が当たり前のように剣の隣に足を潜らせる。
「・・・・・あの〜、沙耶さん?」
「何?剣ちゃん」
「だいぶ近いんでないですか?」
確かに剣と沙耶の距離は肩が触れ合うほど近かった。
「何が?」
「いや、距離。距離。俺と・・・・沙耶が・・・・」
っと剣に言われて気が付いたのか。少し頬を赤くする沙耶。
「子供の頃は良くすぐ隣りに座ってたから・・・・・・剣ちゃんは・・・・嫌?」
超至近距離からの不意打ち攻撃。いやいや、首を軽く傾げて剣の顔を覗き込んでくる。
剣はドキリとした。沙耶と数時間前に再会してからまともに顔なんて見る機会が無かったから気が付かなかったのだが・・・・・
シットリとしツヤのある黒い髪。胸元まで流れるように伸びているセミロングである。クッキリとした形の良い輪郭にパッチリとした瞳とプルリとした桜色の唇。
「ぐぅ・・・・」
思わず顔を背けてしまう。
「剣ちゃん・・・・どこか調子悪いの?」
待て待て待てーっ!!沙耶ってこんなに可愛かったっけ?!化けたぞ!と内心思う剣である。沙耶と会うのは6年ぶりくらいで、その6年の間に沙耶は変わった。いや、女は変わる時は1年もあれば化けるのである。
さっきから心臓の心拍数が普通状態より間隔が早い。かなりの高回転である。
「はい、お待たせ。熱いからお気をつけなさい」
っとそこへお婆ちゃんが帰ってきた。お茶菓子も持ってきてくれた。本当に気の効く老人である。
「ありがとう〜♪お婆ちゃん」
沙耶は嬉しそうにお礼を言う。
この問題はスルーされたようだが・・・・・依然として沙耶は隣りに座ったままであった。このテンションで今からお婆ちゃんと話しをするのはちょっと辛い気もした。
「それで聞くけど。どうしてこの家に住み込みたいんだい?」
緊張感(隣人に対してだが)が消えないまま。本題に移る。
「それなんだけどさ。俺、両親が今遠出してさ、一人で暮らしてるんだよ。男一人だと何かと大変でですね。で、今日色々あって再会した沙耶がそれなら家に来れば良いって。そんでお尋ねしたわけなんですけど・・・・」
剣の言っていることは実の話しタテマエである。本当の所、剣の家は数時間前に黄龍が発した光により白虎に居場所がばれてしまった。こうなると剣の家は再度狙われる危険や他の敵にも気付かれた可能性が充分にあるし、味方同士で固まった方が何かあった時に便利であるからだ。っと黄龍と青龍の進めもあって(本当は黄龍と青龍が一緒に居たいだけではないのか?)沙耶の家、もとい屋敷に住まわせてもらおうと言うことなのである。
「もちろんタダで厄介になろうなんて思ってないぞ。家賃の準備はある」
「何を言ってるんだい。そんなもの要らないよ。こんな広い屋敷にここ数年私一人だったんだ、賑やかな方が良いじゃないか。遠慮することはないさ」
心の広い老人である。コレで当面の目的は成就した。
と、安心した剣は何となく後ろを振り返ってみた・・・・・・・・・・
<黄龍様ったら・・・・そんな恥ずかしいですよ♪>
<まぁ、なんだ。久しぶりなのでな、良いではないか>
・・・・・・・・・・イチャついてやがった。
その内こいつらも麒麟討伐なんて使命を忘れて二人だけの世界に走るのではないかと心配になってきた・・・・・。

「剣ちゃんはこの部屋を使ってね」
と沙耶に案内された部屋の中へと入っていく。
居間での住み込みの話しを一通り終えた二人は、剣がこれから生活をすることになる部屋に移動していた。
「おぉ〜♪流石屋敷だな」
その部屋は洋風に作られていた。こげ茶色にくすんだ木材で統一された家具、四角い小さな窓。部屋としての機能は申し分なかった。
「ここはもともと客室として作られてある部屋だからね。何か必要な物があったら後で一緒に買いに行こうね♪」
何か予想以上に手厚く歓迎されている気がする。
「じゃあ俺外の車から荷物とか持って来るよ」
お婆ちゃんの承諾を得られる可能性も踏まえて剣は生活に必要なだいたいのものは車のラゲッジスペースに積み込んで来たのだ。
「わかった。私はお風呂に入ってくるね。さすがに肌が乾ききっていて嫌だよぉ」
「おう、今日はお疲れ様。ゆっくり湯船に浸かって疲れを取ってくれよ」
「・・・覗くなよ・・・・・・・・・・」
「覗かねぇよ」
そんな意味も皆無なやり取りを交し二人は各々の行動に移っていった。

「がたがたがたがたがた、ぶるぶるぶるぶるぶる・・・・・・」
外はやはり寒い。そして剣のやっていることも寒い。
・・・いかんいかんと気を取り直して車の方へと小走りに駆け寄る。
車は屋敷にあったガレージ(こんな物があるなんて本当に贅沢な屋敷だと思う)を使わせて貰っている。
ガラガラガラ
ガレージのシャッターを開き照明を付ける。そして中にある車・・・・親父から借りているワゴンの後ろに回りこみラゲッジルームのドアを開ける。ドアを下から上に持ち上げ、中に積み込んでいる荷物をいくらか整理しながら欲しい物を取り出す。
「ん?」
荷物を整理している途中で何か良く解らないものを見つけた。

〜パパのエロゲェ白書〜
「・・・・・・・・・・」
うちの親父様は何をしたいのだろうか?
と思いつつもそのノートのページをペラリとめくる。
『H1×年 10月4日 ついに待ちに待ったネコ耳ジャングルの発売日。会社帰りに買いに行った。店長のお宮(みや)さんとのツーカーな関係な僕は定価よりかなりのコストダウンで買うことが可能であった。やっぱり持つべきものはパソコンショップの店長だね♪・・・・・・・・・・』
ペラリ
『H1×年 1月24日 ママや剣の目から逃れながらネコ耳ジャングルを攻略し終えた僕は次の標的ハートTO(と)ハートをGET。ママがくれるお小遣いが少なく購入資金がいくらか足りなかったので剣の隠したヘソクリの2千円を拝借した。剣、お前は立派に親孝行してくれているぞ(泣)。それにしてもお宮さん・・・・・おまけに売れ残りのゲームを一本くれるなんてありがたいことだ。今度晩飯でも奢ることにしよう・・・・・』
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
しんとした静寂にガレージが包まれる。
「あぁのぉっ!!!クソ親父めがぁぁぁぁっっ!!!!」
次の瞬間に怒りを露わにする剣。手に持ったノートはグシャリと鈍い音を立てて潰されラゲッジスペースに叩き返された。
「何でヘソクリの隠し場所知ってんだよ!!??クソ〜っ、どうりでいくらか千円札が足りないと思ったんだっ。俺だって欲かったグラビア写真集買おうとお金貯めてたのにぃ〜!」
親も親だか子も子であった瞬間である。
<・・・・・・・・・・>
黄龍も言葉が出ない。
剣は込み上げるて来る怒りと哀しさを噛み殺して荷物の取り出しを再開し始めた・・・・・

かぽ〜ん
月並な音が響く時原家のバスルーム。
「ふぅ〜♪極楽、極楽♪」
もちろんただいま入浴中なのは沙耶である。
「でも黄龍さんの憑人が剣ちゃんだったなんて・・・・・嬉しいなぁ♪」
沙耶の顔はにこやかな笑顔を見せる。
<沙耶は剣さんのことが好きなの?>
「ななななな、何を言ってるんですかぁ!!??」
メチャクチャに慌てる沙耶。先程の質問が的を射ているということなのか?
<何そんなに慌ててるんですか?ふふふ、沙耶は解り易いですね♪>
「むぅ〜、青龍さんイヂワルです。このことは剣ちゃんには秘密ですからね」
<はいはい、解りましたよ。でも沙耶、この戦い。勝ち残らないといけませんね>
戦い。沙耶が身を置いた幻獣達の戦い。
「ええ、絶対勝ち残ります。私にも・・・・・成し遂げたいことがありますから・・・・・」
幻獣との契約を完遂させた憑人には幻獣から願いを一つ叶えてもらえると言う。
・・・・・沙耶は青龍との間にどのような契約を契ったのであろうか?

そして夜は深遠の闇へと包まれていく。今夜は31日。
月が輝きを増し。年が明けていく。明日からは新年になるわけである。
新しい年の始まりと共に剣達の戦いは本格化していくであろう。
今は・・・・・・そっとした時を・・・・・・・・・・

                   → next time is13
posted by 姫野 at 13:17| 群馬 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | へっぽこノベル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年11月14日

13月の世界 〜a four leaf clover〜 10

丘の上から見える世界を
街の中から見える世界を
夜の底から見える世界を
例えば大事にしてみたい



こんにちは、瞬間最高視聴率0.0000000000000000002秒の夜月姫野さんです。


とりあえず仕事の相手がものすごくウザイオッサンなんだけど。
交代制なので俺が出勤したら帰り、俺が帰る時にオッサンは出勤してくる。

それでさっさと帰れば良いのに俺にグチるしウザイし話し合わないし五月蝿いしもうイヤー。







I 13月への扉 後編 〜開戦・・・力の解放〜

<青の奴も居たのかよっ。邪魔してくれやがって・・・・もう少しで仕留められたのによっ>
今までその場には無かった荒々しい声が響いた。おそらく、白虎の声であろう。
剣に、否。その場全体に緊張が走り。絡みつくような空気で肺がむせ返りそうになる。
<白虎、残念ですけど私と沙耶が居る限りはそう易々とは黄龍様には近づけさせませんよ>
「青龍さん、あいつが白虎なのね?」
沙耶も始めて見るのだろう。目の前に聳え立つ竦みそうになるほど威圧的な猛獣を・・・・
<さっきからビカビカ光るのはご近所迷惑だぜ。こっちは探す手間が省けたけどな>
「たいした探りも入れてなかったくせに・・・」
白虎の憑人が口を開いた。落ちついた感じの声だった。
<へっ、細かいこと言うなよ。それより灯華(とうか)。あの金色の野郎を喰らえばあとの幻獣は雑魚も同然よ。さっきの様子じゃあっちはどうやら契約したてか、戦う気が無いみたいだしな、厄介な能力を使われる前にケリを付けちまうぞ>
「わかってるわ。あの男の子を第一に倒せば良いのでしょう?さっきは邪魔が入ったけど・・・・今度こそ殺させてもらうわ」
少女の身体がゆらりと動き攻撃の体勢とする。
月の光に照らされた銀色のショートカットがサラサラと風になびく。少女の鋭い眼光に剣は睨まれた。その眼光は「今から殺す」というニュアンスを隠すでもなく溢れていた。
「栂(つが) 灯華。今からキミを殺す私の名前よ。殺された相手の名前も知らないで死ぬなんてかわいそうだからそれくらいは教えてあげるわ」
そう言うと灯華と名乗った少女は軽くニヤリと微笑んだように見えた。
更に緊張が走る。
「剣ちゃんっ!!剣ちゃんは危ないから下がってて!」
声と共に沙耶とその幻獣、青龍は剣を守る形で剣と灯華の間に入り込んだ。
「沙耶っ!俺はっ・・・・・」
「今の剣ちゃんは力の使い方が解らないでしょ?そんなんじゃ戦えないよ」
確かにそうだった。黄龍が与えてくれた力は不思議な感覚になって身体に伝わってくるのは解る。しかしこの力の使い方をまだ何ら解らない剣にはあの白虎とはまとも戦えない・・・いや、戦いにもならないかもしれない。
「何?やっぱりアンタ私の邪魔をする気なの?」
表情に「めんどくさい」というニュアンスを含めて頭を傾ける。
「私がいる限り剣ちゃんには手を出させませんよ」
・・・・・・・・・・・・・・
静寂と緊迫が空間を占領する。

「じゃぁっ!!アンタも消えてよっ!!」
叫ぶと同時に少女、灯華が迫る。
モーションは最低限に――
右腕には先程と同じように風の渦を巻きつけ――
「ちぃっ」
ヂッィィィィィィィィンンッ!!
かち合う力。
再度・・・・・糸により風の右腕を防ぐ。激しい不快音をあげて火花を散らす。
「よくもまぁこんな安っぽい糸で私の手刀を止められるものね・・・・・気に食わないわっ!!」
そう言うと灯華の右腕はさらに大量の風を巻き込み、孕みはじめた。
ヂッィィィィィィィィィィィィィィィィィンンッ!!
「マズイっ」
このまま、単なる力比べではこちらに武が悪い。いずれ糸は切れてしまうだろう・・・・
ドガッ!
そう判断した沙耶はとっさに灯華の腹部に向かって足を伸ばし灯華の身体を蹴り飛ばした。鈍い音を鳴らして灯華の身体はベランダを抜け外の方へと飛ばされていった。
空かさず飛ばされた灯華を追う。沙耶も追撃をするべく部屋から外へと向かって走る。
パチンッ♪パチンッ♪パチンッ♪
沙耶はベランダ、窓の前で左の指を3回鳴らした。それも何かの力なのか?
1回目は窓枠の上部、2回目は窓枠の左下部、3回目は窓枠の右下部で指は鳴らされた。
「剣ちゃん。ここから外には出ないようにしてね。危ないの仕掛けちゃったから」
「おいっ、それはどういうことだよ!!??」
「防衛幕だよ〜っ」
そう言い残すと沙耶はベランダから飛び降りていった。

「くぅっ・・・・あの女ぁ」
ノーガード。見事に蹴り抜かれた腹部をさすりながら灯華は立ち上がった。
<灯華っ!上から来るぞ!!>
「わかってるっ!!!」
白虎が危険を察知する。同時、空から大量の糸の波が踊りかかってきた。
即座に己の身体を左側へと力の限り飛ばす。
シュキンッ!シュキンッ!
放たれた糸は凄まじい切れ味であった。先程まで灯華の倒れていた地面をえぐるかのように切り裂いた。

その糸は『音』で構成されていた。それが青龍の力の一つであった。空気の振動によって聴こえる周囲の音を圧縮、加工したもの。繊維状に編みこまれた音が糸となり獲物に襲い掛かる。凝縮された音の線に起こる超振動が刃物となり物体を切り裂くのである。


気に食わない。
沙耶に向かい銀の髪の少女をいきり立つ。
「調子に乗ってぇぇぇっ!!」
灯華の右腕に風が巻き付く。
地を再度蹴り放ち、灯華は着地した沙耶に向かって駆ける。
「さっきから単調なのよっ!あなたわぁっ!!」
沙耶だって黙って攻撃される訳にはいかない。
しかし、単純に攻撃力は目算ではあるがあちらの『風の右腕』のほうが上である。
何回もあの腕を防ぎきれるとは正直思えない。
沙耶は『音の銀糸』を指先から放ち。
迫る灯華を迎撃する。
「また糸っ!?鬱陶しい!!」
そう愚痴を溢しながらも迫り来る銀糸を避けていく。
四神の中で風の力を纏い、最速であった白虎の加護を受けている灯華のステップ。そうそう捕らえられるものではない。
しかしそれを逃がすまいと沙耶も指先を巧みに銀糸操り目標を追い詰めていく。
シュン!!!シュウウウウウウウン!!!
1本、2本・・・・・・3本4四5本と流れを汲んだ銀糸の軍隊が襲い掛かる。
銀糸が激しく唸り得物を逃すまいと猛る。
「捕らえたっ!!!」
構築した銀糸の起動コース。
その中に完璧に敵を捕らえた。
機動性の高い相手だとはいえ回避コースは無い・・・・・・当たる!!
が、しかし。
「残念だけど・・・そうはいかないわっ」
灯華の移動範囲を追い詰め、降したトドメの一手は灯華を捕らえることはなかった。
灯華は空中に浮いていた・・・・・否。
浮いているのではない。それは白虎の能力の一つであった。
「風の舞台(エアリアルステージ)・・・・・こんなに高いところから相手を見下すことができるなんて最っコーーッよね♪」

『風の舞台』
空気を圧縮し足場とする能力。足元にしたい部分に大気をかき集めその個所にフィールドを形成、空圧を閉じ込めてしまう。それによりその上に乗ることが可能になる白虎の力。その力で灯華は空中に立っていた。

「それだけでっ!!!」
沙耶が銀糸を自分より高みにいる灯華に向けて放たれる。
「無駄よ」
一段、 二段・・・・・・灯華は次々に風の足場を形成し空中を移動していく。
沙耶の攻撃はそれを追うが地上と違い、どこを足場に回避をするのか全くわからないため敵を捉える事が出来ない。
「コレはお返しよっ」
空を駆ける灯華が指鉄砲を作りその矛先を地上の沙耶に向ける。いや、良くよく見るとそれは指鉄砲ではなかった。形は近いが普通の指鉄砲に中指も立たせてある。
そして・・・・・力が現れた。
「空圧弾(リボルバーズエア)っ!!」
ガァァァァァッ!!!
収束された大気の渦が、沙耶に向かって弾き出される。
その能力は周囲の大気を己の手の平に集め握ったものを指鉄砲のように打ち出すもの。それは人差し指と中指の間から照射された。
「飛び道具っ!!」
予想もしなかった攻撃に驚きながらも沙耶は放たれ迫る空圧弾の回避運動に移った。
ズザァァァァッァ!!
沙耶の左側を霞める。
「いっつぅぅ」
いや、霞めたように見えただけだった。彼女の左足をわずかに捕らえていた。
地面に沙耶が転がる。
「あはは♪いい気味ね」
不覚だった。立て続けに変わる戦法に対応し切れなかった己の不覚。左足をやられては動きに隠し切れない支障が出る。
「ホラホラっ!!」
2激目、3激目が放たれ逃げるので沙耶は手一杯である。
その光景をクスクスと笑いながら眺める少女。
「アンタそこで不様に見てなさいよ。今からアイツ・・・・・殺すから」
いつの間にか灯華は風の舞台を蹴り飛び、剣の部屋の前まで来ていたのだった。

「はぁ?!」
剣は言われた通りに部屋の中で待っていた。
手を拱いているだけではなく、何度も力を使えるように、沙耶と一緒に戦えるようにと手の平に力を集めてみたりもした。
しかし全ては失敗に終わっていた。欠けているものは何なのか?
集中力である。
窓から眺めるいきなりの人知を超えた激しい戦いに否が応でも気が行ってしまうのだ。
焦る心は全ての脈を乱し、集中が出来ない状態であった。
そして今、先程沙耶に向かって撃たれていた空圧弾の矛先は自分に向けられていた。
「マズイっ!!殺られるっ!!」
そう思った瞬間には空圧弾は放たれ、こちらに迫ってきていた。
見えたのは空中にたたずむ灯華のクスリと聴こえてきそうな笑い顔だった。
死ぬ・・・・・そう確信した次の瞬間。
「振動亀裂(ビートエンド)!!!」
パチン♪
右手で指を鳴らす。
ズガァァァァァァガッァァァッッ!!!
それと共に窓の前の空間が爆ぜた。
あまりにも突然の力に銀髪の少女は目を丸くする。
おそらく沙耶の仕掛けた『防衛幕』と空圧弾が相殺し合ったのだろう。
「私がいる限り剣ちゃんには手を出させませんって言いましたよね・・・・」
左足が痛む。その痛みを堪えながら沙耶は立ち上がった。
「三度も邪魔してくれて・・・・・」
先程からの剣への攻撃を全て妨害されている灯華は苛立ちを隠せなかった。
「ついでにあなたの居る場所にも仕掛けてありますから」
ニコリと沙耶は笑うと再び右手で指を鳴らす。
「なっ!!」
パチン♪
「残念♪」
ズガァァァァァァガッァァァッッ!!!
沙耶の右手から灯華の居るポイントまでの空間が瞬時に爆ぜた。

『振動亀裂』
あらかじめ左指を鳴らして特殊な力場を置いた任意のポイントと右指を鳴らしたポイントまでの一直線の空間を瞬時にして振動の波が引き裂く能力。高い奇襲性を発揮する青龍の力である。この瞬間的に襲ってくる攻撃は指を鳴らすのに気付いてから回避行動に移るのでは遅すぎるのである。

「きゃあぁぁっ!」
瞬間、灯華の作った風の舞台もろとも振動亀裂は灯華の身体を引き裂いた。
落ちた。
灯華は沙耶の攻撃により落下し、華奢な体躯を地面に打ち付けた。
勝負が付いた。
沙耶の用意したトラップが灯華を倒したのだ。
「はぁ、はぁ、・・・・・」
しかし沙耶も力をかなり使ってしまったので疲労が激しい。
「おいっ!!大丈夫か?」
ベランダから剣が声をかけてくる。
「大丈夫・・・・だよ・・・・」
沙耶は身体を傾け。地面に仰向けに倒れた。
「へへへ、ちょっと力を使い過ぎちゃった・・・・・」
沙耶は呼吸を乱しながらも懸命に喋っていた。もうこれ以上の戦闘は不可能であろう。力を使い切った沙耶は振るえる手でVサインをして見せた。
「あの、馬鹿。心配させやがって」
白虎との戦いに決着がつき剣が安心しきっていたその時。
風の流れが変わった。荒々しく肌に叩きつけるかのような風。
まさかと思い灯華の落ちた方を見ると。
ボロボロになりながらも空圧弾を放とうとする灯華が居た。空圧弾が向けられたその先には・・・・・・倒れこんだ沙耶だった。
「やめろォォォォォォっっ!!!」
沙耶はもう動くことすらままならなかった。攻撃を避けることも防ぐこともできないだろう。
そこに灯華は空圧弾を打ち込んだのだ。
剣は駆けた。
ベランダを蹴り跳ね無我夢中で沙耶の場所へと跳ぶ。
<剣!今のお前では戦えん!!無茶だ!!>
黄龍が剣を静止しようと声をかける。
「うっさい!!無茶でも苦茶でもっ!!黙って見てる訳にはいかねーだろっ!!」
ズザザザァァァァァァッッ!!!
倒れた沙耶の前に滑り込む。もう空圧弾は間近に迫っていた。
「黄龍!!力だ!!」
叫ぶ。
<お前が欲しい得物をイメージしろ!!周りの神霊の声を聞け!!>
叩きつけられるような言葉。
理解しようとせずに・・・・・ただ感じるままに・・・・・
「俺の得物はぁぁぁぁっ!!!」
剣の手の平が光りだす。
<イメージが固まったら神霊達の力を取り込め!!>
「力を!!!力を貸しやがれよぉぉっ!!!」
更に光りが増す!!
空気から・・・・・遠い場所の水面から・・・・・生い茂る山の木々から・・・・・力の波が剣に向かって注ぎ込む。
力の濁流に身体が耐え切れずにパンクしそうになる。しかし懸命に堪え、大量のエネルギーをがむしゃらにコントロールしようとする。
<剣!!!!解き放て!!!お前の力の全てを!!>
「出やがれぇぇぇぇぇっ!!!俺のっ!!黄金の神剣っ!(ゴールデンラッシュ)」
光りが収束し手の平に集まる。
光は象られていく・・・・・・それは光の大剣であった。
自らを触媒とし自然界中にながれる神霊のエネルギーを吸収し剣を象ったもの。
「おおおおおおォォォォォォォっっ!!」
光りの大剣を、空圧弾を弾き返すように大きく振るう。黄金の神剣と空圧弾が弾き合う・・・・・と思われた。しかし。
その一刀は空圧弾を跡形も無く掻き消した。
凄まじいエネルギーの塊である黄金の神剣が風の渦の塊である空圧弾を飲み込んでしまったのだ。
<ちぃ!!黄龍の憑人の野郎。覚醒しやがったかっ!!おいっ、灯華!!ここはマズイっ、ずらかるぞ!!>
「むかつくけど、今のアタシじゃ金色の相手は無理だね・・・・っつぅ・・」
切り裂かれた身体を無理矢理起こし、白虎とその憑人、栂 灯華は夜の闇へと消えて行った。

「はぁっ・・・・はぁっ・・・・・俺、守れたのか?・・・ぐっ!」
初めてで、しかもアレだけの大量のエネルギーを使った剣に疲労感が襲い掛かる。肩で呼吸をし足を折る。
<あぁ、お前は自分の力で沙耶を、そして青龍を守ったのだ>
「そうか・・・・俺、ちゃんと守れたのか・・・・」
正直、何がどうなっていたのか良く解らない。しかし白虎と灯華はもう居ない。剣は敵を退け、二人を守りきったのだ。
しかし・・・・・それにしても疲れる力だなと剣は思った。手に持っている大剣はもう無い。あれは神霊達の力を集め具現化した物。役目を終えた剣の力はまた元の場所へと戻っていったのだ。
「とんでもない・・・・力だな」
<剣よ、その力の使い道を誤るでないぞ>
「あぁ・・・・未来を切り開く力だろ?」
月が青く輝いていた。
「使いこなしてみせるさ・・・・」
夜空を見上げる・・・・・満天の夜空に星屑達がキラリキラリと輝きを放つ。
「剣ちゃん・・・・・ありがとう」
後ろのほうで沙耶の声がした。
振り向くと仰向けになった沙耶がこちらを見てニッコリと笑ってくれた。
「剣ちゃんはやっぱり私のピンチに助けに来てくれるんだ♪」
思い出した・・・・・こいつは昔もそうだった。何か困った時に助けてやると向日葵みたいな笑顔を俺に見せてくれた。
「たまたまだろ?・・・・・」
そう言うと再度剣は夜空を見上げる。沙耶も目線を空に向けた。
月が輝いている。太陽光を浴びて・・・・・
その輝きを見て、剣は少し寂しい気持ちになった。
「・・・鞘」
「何?剣ちゃん」
「いや・・・・・何でもねぇ」
こうして普通より何時間も長く感じられた戦いの夜は終わりを迎えたのである。
いや、これは始まりに過ぎなかった。

剣はこれから始まる戦いに生き残っていこうと固く空の月に誓った。
その瞬間。なんだか月が笑ったように見えた・・・・
posted by 姫野 at 12:29| 群馬 ☀| Comment(2) | TrackBack(0) | へっぽこノベル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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